インタビュー:パトリス・プーヤール監督「ピラミッドは地球のID」
人間は、本当に進化したのか――。エジプト・ギザの大ピラミッドの謎に迫るドキュメンタリー映画『ピラミッド 5000年の嘘』が2月18日(土)から全国で公開される。37年間の調査研究と6年間に渡る徹底検証で、これまでのピラミッドの常識を覆す“答え”を導き出している意欲作だ。

このほど、フランスからパトリス・プーヤール監督が来日し、MOVIE ENTERのインタビューに応えてくれた。雄弁に語る監督の口からは、ピラミッドは「地球のIDだ」という驚きの発言が飛び出した。

――今回の映画を撮られたきっかけを教えてください。

パトリス・プーヤール監督:1999年に原作者のジャック・グリモーに出会い、彼の研究について教えてもらいました。その内容に驚き、6年間かけて調査したところ、エジプト学の専門書には全く記載されていないことに気付きました。この事実を、みんなに知らせるべきではないかと思い、映画を作りました。

――専門書に記載されていない事実というのは、例えばどういうことですか?

監督:たくさんあります。例えば、ピラミッドは建設される前に大きな丘を切り開いて作ったこと。そこに、6万平方メートルの敷石の上に作ったこと。王の間は花崗岩で出来ていて、10分の1ミリ以下の精度をもって作られたとか、そういうことですね。

――その中で特に驚いたことは何ですか?

監督:非常に難しい質問だと思いますが、あえて1つ挙げるなら、グリモーが見せてくれた数学的な側面ですね。外からは見えないのですが、ピラミッドのコンセプトを作っている数学的要素は、彼らがいかに素晴らしい技術を持っていたかを示しています。

――今回の撮影でエジプトはもちろん、世界各地を回られているようですが、特に撮影が大変だった場所は?

監督:ペルーやイースター島、メキシコなどいろいろな場所へ行きました。でも、一番難しかったのは、やはりエジプトですね。

――エジプトのどんなところが大変でしたか?

監督:撮影許可を取るのが難しかったです。もし許可が取れたとしても非常に高額な料金がかかりましたし、払ったとしても全て自分たちが撮りたいものを撮れたわけではなかったので、上手く立ち回らなければなりませんでした。例えば、大ピラミッドの中で撮影する際には三脚を置くことが禁止されているので、視点を定めることが非常に難しかったし、内部を撮影するために、旅行者を装って入らざるを得なかったこともありました。実際に映画の中にもありますが、黒い岩のところにズームしていこうとすると、すぐに警察が寄ってくることもありましたし、ある日は「ここは撮影していいよ」と言っても、次の日には「撮影は駄目だ」と言われることもありました。

――撮影には多額の資金が必要だったようですが、やはり、スポンサーを探すのは大変でしたか?

監督:非常に難しかったです。フランスのテレビ局を使ってお金を集めようとしましたが、真剣に取り上げてくれませんでした。講演会のようなものを開いて、一方にグリモーを招き、もう一方にエジプト学の専門家らグリモーの意見に反対する人を集めて討論し、この映画を作る価値があるかどうか決めればいいと提案しましたが、フランスのテレビ局はそれを断りました。

結局は個人の資金に頼ることになりました。少なくとも彼らは議論に参加してくれました。でも、お金を集めるのには1年ほどかかり、何度も会議を行いました。すごく長くて、専門的な説明も行いましたが、最後にはお金を出してくれました。そうでなければ、今でもお金を探している途中でしょう。

――率直にお伺いしたいのですが、ピラミッドは何だと思いますか?

監督:いろいろなことを同時に示しているものだと思います。まず、一つは、過去に高度に発展した文明があったことの証拠。知識の集積です。言ってみれば、3次元のヒエログリフ(聖刻文字)みたいなもので、この寸法を読み取ることで、地球について多くのことが学べます。ある意味、地球の「IDカード」だと思います。

――「IDカード」ということは、それを認証するモノが存在するということでしょうか?

監督:それは今後の研究によるとは思いますが、いずれにせよ、このピラミッドの中には地球を表す多くの要素が含まれています。少なくとも、ピラミッドは北半球の4万3200分の1の模型であると思いますし、それだけではなく、自転のスピード、光の速さを示す数字も入っています。

ピラミッドの中に光の速さが示されていると知った瞬間、二つの反応をするでしょう。一つは、偶然だと聞き流すこと。もう一つは、それは意図的なものであると考えること。今は光の速さを測ることができますが、つい最近の50年前くらいのことです。しかし、ピラミッドを作った人は、光の速さを測る術を知っていたという証拠でもあります。

――これまでの通説とかなり対立するところがあると思いますが、周囲の反応はいかがでしたか?

監督:フランスでは、エジプトの専門家たちがこの映画をバカにして映画を公開させまいとしています。彼らは事実に反論することができないので、「この映画はバカな映画だ」「素人が作った映画だ」「本当はこういうことはない」と映画をバカにすることしかできないのです。

――最後にこれから映画をご覧になる日本の方にメッセージをお願いします。

監督:日本には感謝の意を表したいと思います。なぜなら、日本が初めてこの作品を映画館で公開してくれるからです。鑑賞する場所は映画館が最適だと思います。多くの情報を自分を解き放って受け入れることができるのが映画館だと思うからです。そして、この映画にある情報を一度確かめてみてください。インターネットで確かめるのもいいですし、いろいろな文献にあたるのもいいでしょう。そして、考古学者たちに、自分たちの考えを見直して欲しいともう一度問いかけて欲しいと思います。

プーヤール監督は、人懐っこい笑顔を浮かべながら、難しい話題にも丁寧に応えてくれた。考古学者たちとの論争の話題では、よほど悔しい思いをしたのか怒りを露にしていたのが印象的だった。彼の言うとおり、ピラミッドが「地球のID」だとしたら、古代人から学ぶべきことは想像以上にたくさんありそうだ。

『ピラミッド 5000年の嘘』 - 作品情報