元経産官僚の原英史氏が日本のトンデモ規制を大解説

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 店で食べるうどんの麺で、1.7 mm以下のものはないはず。なぜなら、それはれっきとした法律違反だから――。

 日本の活力を削ぐさまざまな規制が、どれだけバカバカしく、いかに巧妙に出来上がっているのかを解説したのが、元改革派官僚・原英史氏の新書『「規制」を変えれば電気も足りる』だ。

――しょうもない規制がたくさん出てきますね。例えば、「うどん」の麺の直径は1.7mm以上で、1.7mm未満1.3mm以上なら「ひやむぎ」か「細うどん」。1.3mm未満なら「そうめん」と呼ばなければ違反。100万円以下の罰金までありうるとか。

 このそうめんの規制は、商品の表示を定めた「JAS」法による規制なのですが、JAS規制を行なう団体の多くは官僚の天下りを受け入れています。要は、規制を作ることは官僚の利益になるわけです。

――国民生活のために必要な規制ならともかく、不要なところをガチガチに固めて、本当に求められてるものが野放しになっていたりします。

 そうめんの太さがこんなに細かく決まっているのに、生食用食肉をめぐる基準には罰則がありませんね。だから、生肉ユッケ食中毒のような事件も起きたりする。

 なぜ、こんなちぐはぐなことになるのかといえば、全体のバランスを見て、どこを規制すべきなのかということを考える人がいないから。規制をかける現場の役人は自分の担当にしか目がいってない。

――でも、そんな縦割り行政のなかで、どんな規制になるかが決まるんですね。

 問題点は、政策を作る仕組みがボトムアップになっていることです。本来なら、ある程度大事な政策の基本的な方向性みたいなものをトップの側で打ち出して、それに従って決めていくような枠組みが望ましい。

 しかしそういう仕組みではないので、結局、現場の人が作ってきたものに上が乗っかっているだけ、ということになりがち。これはリーダーシップの問題です。

――今の話は役所のリーダーの話ですが、この問題には、そんな役所をコントロールすべき政治家の問題もあると思います。

 政治家で、自ら規制を変えようという意識のある人はあまりいません。最近の規制仕分けでも、規制緩和を役所に勧告する、なんてことをやる。なぜかというと、何をしてはならないと規制をかけているのは法律ではないからなんです。

 省のなかの議論だけで決められる「省令」や、当該省庁の局長や課長の名前で出される「通達」で、法律の運用は決められます。何かを規制する法律を作ったとしても、その具体的なところは役所が決めるのです。

――だから、みな役人にお願いしに行くんですね。

 しかしこれは変でしょう。政治家は法律を作れるんだから、おかしな規制があるのなら大本の法律を変えて、そんな規制は禁じればいいわけです。単純に、政治家が規制を自分たちの手で変えられるということをわかってないか、あるいは官僚とやり合う技術がない。だからこれは国民の責任でもある。

 政治家が仕事をさぼってるんだったら、その政治家を当選させた国民が悪い。政治主導を国民が望むのなら、当然ながら政治家を国民はウオッチしなければならないと思います。

●原英史(はら・えいじ)
1966年生まれ。元経産官僚。2007年から安倍・福田内閣で渡辺喜美行政改革担当大臣の補佐官を務める。現在は「政策工房」で政策コンサルティングを行なう

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