中小企業の新卒採用がさらに減少しそうなことが、東京商工会議所が会員企業を対象に実施した新卒者の採用に関する実態調査で明らかになった。調査は、2月5日〜3月5日にかけて同会議所会員(資本金1000万円〜1億円)から4247社を無作為に抽出、さらに同会議所の人材関連サービス利用企業753社の合計5000社に調査票を郵送し、ファックスで回収した。有効回答は、881社(回答率17.6%)だった。

 調査によると、中小企業の新卒採用割合は「原則として定期採用を行なっている」企業は全体の29.7%(262社)で、不定期で新卒採用を行なう企業を含めると全体で56.4%となった。従業員数別では、「50人以上の企業」「情報通信」「サービス」といった業種で新卒採用を行なう企業の割合が高い。

 2010年の新卒採用動向だが、定期採用を行なっている企業(262社)のうち、2010年4月に新卒の「採用(予定)あり」と回答した企業は全体の78.2%(205社)に留まり、21.8%(57社)の企業が今年の新卒採用を見送っている。

 これを企業規模別で見ると、従業員数が大きいほど採用割合は高く、従業員数100人以上の企業では8割を超えるが、100人未満の企業では採用割合が約7割に留まっている。業種別で、「サービス」「卸・商社」「情報通信」で採用予定の割合が高い(回答母数の過少な業種を除く)。

 採用を今年見送った企業の主な理由は、「経営の先行きが不透明なため採用を手控えた」とする企業が最も多く47.4%(27社)、次いで「経営の悪化により採用を見送った」が24.6%(14社)と、経済情勢の厳しさを理由とする企業が7割以上となった。

 定期採用を行なう企業のうち、今年4月に「採用予定あり」と回答した企業(205社)の対前年比採用数の増減について見ると、「採用数が減った」とする企業割合は41.0%(84社)と最も高い。特に、従業員300人以上の企業の57.9%(22社)が「減った」としており、業種別には「製造業」「情報通信」「サービス業」で採用数を減らす割合が高い。そして、「前年度と変わらない」が32.2%(66社)と続く。

 「採用数が減った」理由は、「経営の先行きが不透明なため」とする企業割合が47.6%(40社)で最も高く、次いで「良い人材が少なかったため」(23.8%(20社))、直接的な「経営の悪化により採用数を減らした」とする企業は全体の9.5%(8社)。総じて今年採用を行なう企業においては直接的な経営への影響よりも、経済情勢の不透明感や経営の悪化による慎重な採用姿勢が手控えの主な原因となっている。

 一方、「採用数が増えた」とする企業は26.8%で、企業規模別では100〜299人の企業で「増加」する割合が高かった。 その理由は、「不況下で買手市場であったため、例年以上に良い人材を確保するチャンスであった」とする企業が40.0%(22社)と最も高く、「業務の拡大や事業拡張」(21.8%)、「昨年採用を絞った分、今年は増やす必要があった」(12.7%)を大きく上回っている。

 また、学生の内定辞退が、対前年比で11ポイント低下したことも中小企業が積極的に採用に動いた理由の一つと思われる。

 定期採用等を行なう企業(273社)に、人物選考に際して重視するポイントを聞いた(複数 回答)ところ、「コミュニケーション能力」が63.4%(173社)と最も高く、次いで「業務適性」54.9%(150社)、積極性43.6%(119社)の順となり、昨年とほぼ同率で選考基準に大きな変化は見られなかった。

 さて、2011年4月の採用実施企業数だが、定期もしくは不定期等で新卒採用を行なっている企業(508社)に対し、採用予定を聞いたところ、「採用予定あり」とする企業は45.5%(231社)に留まっており、「採用予定なし」が29.3%(149社)、「未定」が24.2%(123社)に上った。

 業種別では、「サービス業」「情報通信」で「採用予定あり」とする企業割合が高く、それぞれ58.1%(36社)、56.9%(29社)(回答母数の過少な業種を除く)。「採用予定なし」とした業種は「建設」38.3%(18社)、「製造」33.8%(46社)で高い。

 「採用予定あり」と回答した企業に、今年との比較で採用予定人数の増減見込みを聞いた。「前年とほぼ同数」と回答した企業は48.9%(113社)、「未定」が15.6%(36社)。「前年より減らす」は14.7%(34社)で、「前年より増やす」7.8%(18社)を上回っている。

 「前年より減らす」とした企業は100人超の企業が多く、業種では「建設」「卸/商社」「製造業」でその割合が高い。

 採用実施企業及び採用数の減少は、今年になってもさらに続いており、就職氷河期は2011年就職活動でも続きそうだ。

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