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「遠回しに幸せ自慢をされた」「ちょっとした言動が『マウント』と受け取られた」…そんな経験はありませんか。脳科学者である中野信子さんは「品格のあるマウントは理不尽に貴方を否定してくる人への護身術である」と語ります。そこで今回は、中野さんの著書『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』より一部を抜粋し、ロンドン紳士の「品格あるマウント」の身につけ方をお届けします。

【書影】脳内ホルモンによる快楽と本能に身を任せ、理不尽に貴方を否定してくる人への護身術。中野信子『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』

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マウントされにくい自分になる

もし、貴方が「マウントされやすい」と感じているなら、中身を変える膨大な労力をかける前に「インターフェース」を変えるのが最も手っ取り早く、効率的です。

まずは「一点豪華」の結界を張ってみましょう。

全身をブランドで固める必要はありません。時計、靴、財布、バッグなど、一つだけでいいので「こだわりのある、語れるモノ」を身につける。それが、相手の安易な侵入を防ぐ結界になります。

動作と話し方を少しだけゆっくりにしてみてください。目安は、今の0.7倍速です。ゆっくり動くというのは、自分は素早く逃げなくても済むほど強い存在だ、というメッセージでもあるのです。その空間を自分が支配しているということを端的に示す効果的な方法です。

まず覚えるべきことは…

言い返す自信のない貴方。言葉を尽くして言い返そうと努めることは、準備が整わないうちはかえって緊張を強いてしまい、弱さを露呈するセキュリティホールをつくってしまう原因にもなりかねません。

まずはこれを覚えてください。相手が何かを仕掛けてきたら、即座に反応せず、3秒だけ無言で相手を見つめる。それから「尊敬しかないです」と微笑む。

マウンティングは、相手が「貴方の反応」という報酬を期待して行うゲームです。その期待を、身体表現と言葉の調律によって「肩透かし」に終わらせる。それこそが、賢明な「サピエンス」の振る舞いなのです。

肝要なことは、非の打ちどころのなさをちゃんと外見にも表すということです。

マウントを防ぐ最高の防御策

一番いいのは自分をブランド化することです。自分をブランド化することができれば、周囲の人が変わります。自然と敬意を払ってくれるようにもなります。

もちろん計算する人もいるでしょう。この人たちは、ブランド化した人の周りに好意的な存在として居続ければ、恩恵にあずかって潤うことを知っているので、そのメリットをとるという選択をするでしょう。


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誰それの友達なんですよ、この人とつながっているんですよ、と言うことで、お仕事が少し楽になったりすることも、こういう人たちはよく知っているはずです。

学歴や職歴、家柄にもそんな効果があります。

人間だけでなく、本当は大学などもそうなのです。どんなにいい大学でも、最初からブランドではないのです。特に私学ではそういう側面が強いでしょう。卒業生がつくっていくのがブランドです。ブランドに乗っかるのは簡単なことかもしれませんが、つくることは難しい。誰それさんが出たのだから**大学はすごいね、というのが本当は筋ではないでしょうか。

書店で本を手にとる際も、どうでしょうか。私たちは内容よりも、無意識に「著者の肩書」を評価軸にして選んではいないでしょうか。

評価ポイントとマウンティングポイントは表裏一体。貴方が何かを評価するとき、そこには必ず、他者を序列化する「マウントの種」が潜んでいるということを、覚えておく必要があるでしょう。

それはすなわち、貴方が常に評価され続けているということと同値だからです。もちろん、どんなに気を抜いている瞬間でも、です。

自分を頭が良いと思っている人は

特に注意すべきは、自分のことを「頭が良い」と自負している層、たとえばアカデミシャン(学者)たちかもしれません。研究によれば、米国のとある大学では、教授職にある者のうち94%が「自分は平均より優れている」と答えたそうです。面白い数字ではないでしょうか。

自分を頭が良いと思っている人は、自分がつくり上げた古い公式から逃れることが難しく、かえって知的に不自由であることも多いものです。

自らが依拠してきた旧式の価値観に足をとられ、身動きがとれなくなっていることに気づかないでいる。彼らに向かって「思考停止していますね」と指摘するのは、時間の無駄というものです。

そんなときは、心の中でこうつぶやいて、そっと微笑んでさしあげなさい。

「ああ、この方は『ご自身のプライド』という不要な負荷に耐えながら、不自由な頭のまま、毎日、脳トレをされているのだわ。なんと奇特な」

自分のかけている眼鏡の色を自覚する知性を持ちましょう。

「自分だけは大丈夫」と断言する人こそが、最も深く偏見の沼に沈んでいます。

大切なのは、色眼鏡を外すことではなく、「自分が何色の眼鏡をかけているか」を自覚すること。そして、相手が何色の眼鏡をかけているかを知り、自分を最も安全な場に置くにはどう見せるのがよいかを、冷徹に計算して行動することです。

こうして自他共に客観視できるメタ認知こそが、貴方を容赦ないマウント地獄から救い出し、どんな偏見ノルムの中でも自由に振る舞える、真の知性へと導いてくれるのです。

※本稿は、『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』(日経BP)の一部を再編集したものです。