専門家が教える「愛着障害」もっとも効果のある支援……「いじめ」の解決にもつながるおすすめの方法とは
「暴言、暴力をくりかえす」「構うと要求がエスカレート」「注意すると逆ギレ」「褒めたのに怒る」そんな手ごわい“不適切行動”をする子が激増している。その原因が「愛着障害」にあることをいち早く指摘したのが、米澤好史氏だった。わかりにくい「愛着」の概念から、独自の愛着障害論、そして効果的な支援の方法まで、渾身の力で書き切った新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』より見どころを抜粋して紹介する。
役割を与えて成長のきっかけに
これは文字どおり、キーパーソンがこどもに何らかの役割を与え、遂行してもらう支援です。金魚の世話係、花の水やり係、小さいこどもの世話係、プリント配布係、“常任”の給食当番、体育用具係など、継続的に付与できる役割であればなんでも構いません。
適切な役割は、こどもにとっては居心地のいい、安心できる場所(人間関係の居場所)となります。この居場所感は、ASD+愛着障害タイプの支援ではとくに重要です。また、〈安心な居場所をくれたのはあの人(キーパーソン)だ〉と意識させることで、キーパーソンが安心基地となることもできます。
役割付与は効果の高い支援ですが、以下のことは必ず守るようにしてください。
・役割はキーパーソンが指定します。こどもに選ばせてはいけません。主導権をとり、キーパーソンとの関係性を意識させるためです。
・「すること」が明確な役割を与えましょう。〈何をすればいいんだろう?〉と考えざるを得ない役割はこどもを不安にし、不適切行動につながりかねないので避けてください。
こうして与えた役割を続けさせていくと、(いつそうなるかは人により異なりますが)たいていの子は次のように考え始めるものです。
マンガの最後のところで、こどもが〈頑張らないと……〉と思い始めているところが重要です。このような変化は実際に起こり得るものです。
自分に適した役割を期待とともに託されたら、誰だってその役割に合わせて自分をよいほうへ変えていこうとするでしょう。役割付与支援を上手に行えば、そのような効果も期待できます。大切なのは、何を・どうすればいいのか、どんな結果が期待できるのか、などの「枠組み」がはっきりした役割をこどもに与えることです。
役割がこどもの振る舞いを変える
枠組みがはっきりした役割は、こどもでも結果を見通すことができ、遂行すれば期待どおりの成果が出ます(自己成就的予言効果)。すると、こどもは自然に〈この役割を果たすのはいいことだ〉と感じ、それが〈次回も取り組もう〉という意欲につながります。やがては役割にふさわしい振る舞いをするようになり、不適切行動の減少が期待できます。
なお、こどもが役割を果たすとき、そばにキーパーソンがいる必要は必ずしもありません。ですが、そのこどもにとって難しい役割のときは近くで見守ったり、あるいは開始と終了の確認だけはしたり、といった対応が必要です。
ご褒美は与えず「報酬感」を与える
役割を果たしたこどもに報酬(ご褒美)をあげてはどうか、と考えた読者がいるかもしれません。とくにこどもの親はそう思ってしまいがちですが、厳に慎んでください。
モノやお小遣いを与えられてどう感じるかは、こども次第です。つまり、ご褒美をあげた時点でこどもに主導権が移ってしまうので、支援の観点からは望ましくないのです。
モノではなく、あくまでも「ポジティブな感情」が報酬になるように心がけましょう。
報酬ではなく「報酬感」をこどもに与えていただきたいのです。報酬感を与えたうえで感じた感覚・感情をキーパーソンがラベリングしてください。すると〈役割を果たせば、喜ばれ、ほめられていい気分になれる〉というパターンをこどもが学び、行動が変わります。
役割付与支援は「いじめ」の解決にも有効
いじめが卑怯な行為であることは言うまでもありません。しかし、加害者を責めたところで、やむことはないでしょう。加害者の背後に別の首謀者がいる場合もあります。加害者、首謀者は、自己評価が低いことを認めたくない気持ちから「いじめ」に及びますが、大人が「何でも相談してね」と呼びかけても、おそらく相手にはしてもらえません。
かといって、大人が教室や学校内で取り締まりのようなことを始めると、学級が居心地の悪い場所になり、これもいいとは言えません。取り締まりを逃れた首謀者が「歪んだ効力感」を得て「優位性への渇望」を満たすだけに終わる可能性もあります。
「いじめ」に有効なのは役割付与支援です。関係するこども全員に何らかの役割を付与し、こどもの自己評価の向上と関係性の再構築を試みましょう。首謀者の目星がつく場合は、そのこどもに「あなたを見込んで、この仕事を手伝ってほしい」と、大人の手伝いをする特別な役割を頼みます。
そのようにして一種の徒弟関係に持ち込み、〈この人の役に立っている〉という自己有用感・〈自分はそれができる力があるからやってみよう〉とする自己効力感を育むことが「いじめ」の真の解決につながります。
