“最強の幹事長”は誰か(左から田中角栄氏、二階俊博氏)

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"影の総理"--党内で絶大な権力を握る自民党幹事長は、時にそう呼ばれる。高市政権は9月に内閣改造・党役員人事に踏み切るとされるが、幹事長ポストの人選は最も注目されるポイントのひとつとなっている。では、幹事長にはどのような能力が求められ、結党70年を超える自民党の歴史のなかでそれを最も体現した政治家は誰だったのか。29人の識者にアンケートした「歴代最強の幹事長ランキング」から見えてきたものとは--。【前後編の前編】

【表】政治記者が選ぶ「歴代最強の幹事長ランキング」TOP10

田中角栄氏が語っていた「幹事長は何回やっても面白い」

 自民党ナンバー2にあたる幹事長は党務を仕切り、政策調整や党内人事、資金配分から国会運営、選挙の指揮まで大きな権限を握る。それだけに、幹事長の人選は政権の先行きをも左右する。

 一方、自民党の政治家にとって幹事長は重要な出世の登竜門でもある。

 田中角栄氏や竹下登氏をはじめ、幹事長時代に力をつけて総理に駆け上がった政治家は数多い。

 あるいは、総理にはならなかったが、幹事長時代に総理・総裁以上の力を持ち、"影の総理"と呼ばれた金丸信氏のような政治家もいた。総理・総裁にとって幹事長の人選次第では寝首をかかれかねないのだ。

 角栄氏はこんな言葉を残している。

「総理・総裁などは1回やれば十分。しかし、幹事長は面白い。何回やってもいい。仕事に手応えがある。政治家はまず政権政党の幹事長を目指すべきだ」

 角栄氏をしてそう言わしめた自民党幹事長とは日本の政治にとってどんな存在なのか。他党にもナンバー2の幹事長はいるが、結党70年超の歴史で一部の時期を除いて与党の座にあった自民党では、トップの総裁は基本的に総理として政権運営にあたり、党運営は幹事長が担う特殊性がある。本誌・週刊ポストは政治記者や政界OB、学者、官僚OBら29人に幹事長に求められる能力と「歴代最強の自民党幹事長」は誰かをアンケート調査した。

「剛腕と繊細」を兼ね備える

 自民党では長く、幹事長に必要な能力として、「党内をまとめる統率力・調整力」「選挙の強さ」「党の資金を集める集金力」などが挙げられた。当然、求められる能力はその時々で変わる。アンケートに回答してくれた識者たちが考える「最強の幹事長」の要件も様々だ。

 菅義偉・元首相や岸田文雄・元首相の番記者を務めた元朝日新聞政治部記者の今野忍氏は「豪腕と繊細」を兼ね備えることだと指摘する。

「調整力も選挙の強さも資金力も、突き詰めればこの2つに収斂する。力で押すだけでは党内に恨みが残り、気配りだけでは肝心の場面で決められない」

 全国紙初の女性政治部長を経験した佐藤千矢子・毎日新聞論説委員は「幹事長の仕事はひと言で言えば、自民党として選挙に勝つこと。政権交代を許さないこととも言えます。私が幹事長番をした宮沢政権の梶山静六・幹事長や石破政権の森山裕・幹事長はいずれも立派な幹事長でしたが、選挙に負けてしまった。もう少し解像すると、【1】自民党が選挙に勝つこと、【2】そのためのカネを集めること、【3】人事をうまく行なって党内を掌握することが、幹事長の重要な仕事です」とした。

「総理を支える力が大切」という官僚OBの視点

 官僚OBの視点は少し違う。元大蔵官僚で第1次安倍内閣で官房副長官を務めた的場順三氏はこう語る。

「幹事長は総理にとって要となる存在。総理と一体になって動く役割が大きい。よって、総理を支える力に長けていることが条件となる」

 一方、元自民党代議士の宮崎謙介氏は、「総理に意見できる力」を挙げる。

「党内に睨みを利かせ、自民党議員たちをハンドリングし統率する能力。そのためには資金集めはもちろん、資金の使い方、党内の揉め事やトラブルを裁くなど総合的な能力が求められる。総裁を支える党内の"女房役"でありつつも、時には総裁にも意見をする存在」

 さらに若手政治学者の岩田温氏は、「総理を超える力」が最強の幹事長の条件だとみる。「最強の幹事長である以上、総理大臣を指名できる力を持つこと。次いで、党内のグリップをしっかり握っている"影の総理"的な存在」とした。

 続く後編では29人の識者が選んだ最強の幹事長トップ10のランキングを見ていく。

(後編に続く)

※週刊ポスト2026年9月11日号