「注文がめんどくさい…」閉店ラッシュで店舗数が半減していたサブウェイが驚異の復活! その裏にあった、“あの居酒屋チェーン”の逆転術

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カスタムサンドイッチでおなじみ、アメリカ発ファストフードチェーン「サブウェイ」の売上が伸びている。69ヵ月連続で既存店売上高が前年比を上回り、店舗数を急速に拡大。2024年に外食大手であるワタミが買収したことがさらなる追い風となっているようだ。

【画像】かつては店員に口頭で伝える必要があったサブウェイでのオーダーに変革

 

かつては注文方法の複雑さなどがネックだと言われていたが、店舗数の大幅な減少も経験したサブウェイの好調の裏にはどのような変革があったのか――。フードアナリストの重盛高雄氏に話を聞いた。

「口頭で具材をカスタム」サブウェイのブレない独自性とは

1965年にアメリカで1号店をオープンしたサブウェイは、1984年に海外展開を開始。日本に上陸したのは1992年のことだった。それから34年、日本ではどのような歴史をたどってきたのだろうか。

「日本ではサントリー(当時)などによるフランチャイズでサービス展開が始まりました。野菜をはじめ、さまざまな具材から好きなものを選んで店員に伝え、オリジナルのサンドイッチを作れるというのがウリで、“自分の意見をきちんと言える”健康志向の女性から人気に。

店舗数は10年ほど前にピークを迎え、500店近くまで増えました。しかし、その後は閉店ラッシュが起こり、2024年にはピーク時の半分以下となる約180店舗まで落ち込んでいたのです」

“自分好みのサンドイッチを注文できる”というオリジナリティは当初から変わっていない。にもかかわらず、衰退の一途をたどってしまったのはなぜなのだろうか。

「考えられる要因として、ブランドの独自性に頼るあまり、店舗の数字を分析しながら改善を重ねる仕組みが十分に機能していなかったことが挙げられます。

サブウェイはピーク時に500店近くあったとはいえ、大手の同業他社に比べると店舗数が少なかった。

そのため、同じ商圏内の店舗同士で売り上げや客層を比較したり、好調な店舗の取り組みを分析してほかの店舗へ広げたり、数字の悪い店舗の課題を早期に見つけたりする機会も限られていたと考えられます。

その結果、独自の販売スタイルによる優位性は変わらなかったとしても、そこからさらに商品やサービスを発展させる動きが弱く、積極的に開発を進めていく同業他社に置いていかれてしまったのではないでしょうか」

長年の停滞を経て…始まったサブウェイの逆襲劇

飲食業界が目まぐるしく変わる中で、サブウェイはブレずにいたことが裏目に出たと言えるのかもしれない。しかし、そんなサブウェイが近年、驚異的な追い上げを見せている。その背景にはふたつの理由があるという。

「ひとつめの理由はオーダーシステムが改善されたこと。周知のとおり、サブウェイはカスタムオーダー式ですが、店員に口頭で細かなリクエストをするのは人によってはかなりハードルが高いことでした。注文時のやりとりを面倒に感じ、来店をためらう人もいました。

しかし、ワタミが経営に参画し、試験的に導入されていたセルフオーダーシステムの活用が本格化したことで、注文時のストレスがかなり軽減されました。また、モバイルオーダーのアプリも活用されており、実際に店舗に伺った際も、注文の約半分がモバイルオーダーに切り替わっている印象でした」

サブウェイの魅力である“自分だけのサンドイッチ”を注文できるという本質は維持したまま、システム構築により利便性がアップ。これによって、口頭でのオーダーを難点に感じていた新たな客層を取り込むことにも成功しているというわけだ。

「ふたつめの理由は、時代の変化によってサブウェイの相対的な価値が高まってきたこと。長年続く不況と物価高は、人々の外食事情に大きく影響を与えています。昔は“ワンコインの壁”なんていう時代もありましたが、庶民の味方だった牛丼チェーンやハンバーガーチェーンさえも値上がり続きです。ファストフードでもサイドメニューやトッピングを付けたり、ファミレスでちょっとしたランチを食べたりするだけでも、すぐに1000円を超えてしまうでしょう。

昔ならサブウェイはほかのチェーンと比べて高単価というイメージがありましたが、周りの価格が上がって同じような価格帯に並んだことで、サブウェイの価値が再認識されてきているのです。

例えば、同じ800円を使うなら、ハンバーガーとポテト、コーヒーのセットにするのか、それとも野菜たっぷりのサンドイッチとコーヒーにするのか。そう考えたときに、サブウェイが選ばれるようになってきた。私はこれを『価格妥当性』と呼んでいますが、もともとサブウェイがブレずに持っていた商品へのこだわりが、価格に見合う魅力として評価される時代になったのです」

ワタミのノウハウが活きる“新・サブウェイ”

さらに、ワタミならではの強みもサブウェイの顧客満足度を底上げしていると重盛氏は言う。

「サブウェイはかつて、約200店舗しかないにもかかわらず、1週間で平均80件の意見が寄せられていた時期があったそうです。本来、クレームはひとつひとつ精査して、妥当なクレームに関しては繰り返さないように改善しなければなりませんが、サブウェイにはそれができていなかった可能性があります。

その点、ワタミは居酒屋経営のプロですから、普段から酒気を帯びた客からのクレーム対応をこなしていますし、そうしたノウハウの蓄積がある。

今は3回同じクレームが出たら本部に上げて精査するなど徹底していて、週に平均13件ほどにまで減らすことに成功していると聞きます」

さらに、ワタミとサブウェイが結びついたことで生まれた大きな付加価値として、ワタミが運営する農園「ワタミファーム」で採れる野菜がある。

「サブウェイの魅力のひとつである野菜について、ワタミファームで採れたものを使えるように供給体制を構築している最中のようです。昨今は食材の安心・安全がとりわけ重視されていますが、生産者販売者双方の”顔が見える関係”になれれば、まさに時代にも合っている。裏側の話でいえば外注した場合の余計なコストも抑えられますしね。

これまでワタミの主戦力になってきた居酒屋という業態は、団体需要が多いので、集客のためにはどうしても価格競争になりやすい。しかし、サブウェイの場合は自社が手がけた素材を使うという付加価値をつけて“商品力”で戦える。この点も、ワタミにとっても魅力だったのでしょう」

では、もともと持っていた独自性がアップデートされたサブウェイの逆襲は“本物”と言えるのだろうか。

「今の勢いは本物でしょう。埋もれていた魅力の再発見ができ、それを消費者にアピールできた成功例と言っていいと思います。自分たちがこれまで大切に守ってきた個性が年月をかけて磨かれて、値下げやその場しのぎの対策ではなく、“その店の商品を食べる”ことをゴールにするフェーズまで来ているのです。

ワタミは、飲食業界全体がコロナ禍で壊滅的な打撃を受ける中、その苦境を乗り越えてきました。どん底から事業を立て直したあのときの経験が、今回のサブウェイの再建にも活かされているのだと思います」

――日本に上陸した当初から粘り強く貫かれてきた“サブウェイらしさ”は、そのブレなさゆえ、ときに時代の荒波も受けた。しかし、風向きは変わっていく。そのポテンシャルを理解し、現代のニーズに合わせた”変革”を得意とするワタミというパートナーと結びついたことで、大きく飛躍したのだ。

今後もこのタッグが魅せる“逆襲劇”から目が離せない。

(取材・文=蜜ツ冶/A4studio)