「不倫相手だった」まで公表する必要あった?ラブホテルから「バスローブ会見」の秋田県職員が停職6カ月に
ラブホテルからバスローブ姿で、たばこを吸いながらオンライン記者会見に参加していたとして、秋田県の男性職員が停職6カ月の懲戒処分を受けた。
県はさらに、その場にいた女性について「不倫相手だった」と明らかにしたとされる。懲戒処分とはいえ、職員の私生活にかかわる情報を行政がここまで公表してよいのだろうか。
●「自宅にいた」と説明していた
報道によると、男性職員は当初、県の聞き取りに対して「自宅にいた」と説明していたが、その後、虚偽だったことが判明したという。
県は8月14日に懲戒処分をおこなった際、再調査の結果として、職員がラブホテルから会見に参加していたことを公表。さらに、その場にいた女性について「配偶者ではなく不倫相手だった」という情報まで明らかにしたとされる。
処分を受けたのは、県産業労働部で企業誘致推進監をつとめていた職員。停職6カ月に加え、課長級から主幹へ2段階降格となったという。
「自宅にいた」という虚偽の説明を訂正するために、ラブホテルにいた事実を公表する必要はあったとしても、「不倫相手」という関係性まで明らかにする必要はあったのか。
こうした私生活上の情報の公開は、職員や関係者のプライバシー侵害にあたらないのだろうか。また、停職6カ月という処分は妥当なのか。谷真介弁護士に聞いた。
●「不倫相手だった」まで公表する必要はあった?
──行政側が、懲戒処分の過程で知り得た「不倫関係」などの個人的な情報を公表することは、職員のプライバシー侵害にあたらないのでしょうか。
「自宅にいた」という職員の説明が虚偽だったことを行政が正す限度であれば、県職員の処分理由について住民に説明する責任がありますから、理解できるものです。
ラブホテルという場所を公表したことについても、虚偽の訂正に加え、公務対応の態様の問題点、つまりラブホテルからバスローブ姿で、喫煙しながら記者会見に参加したことを基礎づける情報として、一定の必要性が認められると考えられます。
しかし、「不倫相手だった」という関係性の性質まで公表した点は問題です。
同席者との関係が不貞にあたるかどうかは、職員による虚偽説明を正すためにも、勤務態度の問題性を基礎づけるためにも必要な情報ではありません。
これは本人の私生活上の事実であり、判例上、典型的なプライバシー情報にあたります。
行政が公表することは、当事者や関係者のプライバシーを公的に確定させる意味を持ちます。その必要性は乏しかったと考えます。
特に、一度公表されたプライバシー情報はネット上に半永久的に残ることからも、この点はより慎重に判断すべきでした。
●停職6カ月に「やや重い印象」
──刑事事件で有罪が確定したような事情がないため、ネット上では「停職6カ月は重すぎる」といった声もあります。今回の処分をどう評価しますか。
懲戒処分は刑事責任とは別の制度であり、刑事事件で有罪になっていないことが、懲戒処分の重さを判断する直接の基準になるわけではありません。
懲戒処分の相当性は、各自治体が定める懲戒処分の指針(基準)に照らして判断されるべきものです。
報道によると、県は休暇自体について事後申請により適正だったと説明しており、職務専念義務違反や休暇の不正取得が問題になったケースではありません。
多くの自治体が準拠する人事院の懲戒処分の指針(*注)に照らしても、虚偽報告は本来「減給又は戒告」の水準にとどまります。
(*注)本件では秋田県が定めた懲戒処分の指針(基準)によることになります。同指針がネット上で公表されていないので把握ができませんが、人事院の指針に準拠しているものと考えられます。
もっとも、AIデータセンター建設計画という県の重要施策に関する対外説明という公務の場に、ラブホテルからバスローブ姿で喫煙しながら出席したこと自体は、地方公務員法33条が定める信用失墜行為として、公務員としての品位・信用を損なう振る舞いと評価されます。
これは不貞関係の有無とは別に、それ自体が独立した考慮要素として、処分を加重し得る事情になります。
また、企業誘致推進監(課長級)として当該施策の責任者的な立場にあったことも、加重事由となり得ます。
こうした事情を踏まえ、指針上「減給又は戒告」水準の非違行為を加重して「停職」とすること自体は考えられます。
ただ、多くの自治体で条例上、停職の上限とされる6カ月とし(秋田県の条例では上限は1年)、さらに2段階の降格まで併せておこなった点については、私見では量定としてやや重いとの印象を持ちます。
報道されていない事情がある可能性もあるため、県側が、なぜそこまで処分を加重したのか、具体的に説明できるかがポイントになると思われます。
●「SNSの反応の大きさ」を処分理由にしていい?
──今回の処分には、SNSで騒ぎが大きくなったことも影響したのではないかという見方もあります。懲戒処分を判断する際、ネット上の反応を考慮することは適切なのでしょうか。
処分は非違行為の重さに見合ったものでなければならないという比例原則がある以上、SNSでの反応の大きさそのものを処分理由とすることは適切ではありません。
ただし、住民の信頼がどれだけ損なわれたかという結果の重大性の一要素として、考慮される余地はあります。
【取材協力弁護士】
谷 真介(たに・しんすけ)弁護士
2007年弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪弁護士会労働問題特別委員会委員、日本労働弁護団全国常任幹事。労働事件、アスベスト被害事件を多数担当。その他、内閣官房機密費情報公開訴訟弁護団。
事務所名:北大阪総合法律事務所
事務所URL:http://www.kitaosaka-law.gr.jp/

