そりゃ人が離れていくわ…話す内容は同じなのに、なぜか威圧感がある人が多用している"魔の2文字"
※本稿は、和田博信『いつも機嫌のいい人が考えていること』(総合法令出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。
■トラブルが起きたときにするべき“2つの質問”
質問とは単純に疑問形で「聞くこと」ではありません。
コンサルはコーチングの技術を用いて、相手を動かします。コーチングとは、対話を通じて、相手の可能性を引き出し、目標達成をサポートする関わり方のことです。
コーチングでは、相手が自分の頭のなかを整理できる質問をします。ポイントは、思考のプロセスを聞くことです。
たとえば仕事でトラブルが起きたとき、「なんでそんなことになったの!」と聞いてしまう人がいます。
このような質問では、追い詰めているだけで、相手は謝罪しかできません。そうではなく、「この状況になるまで、どんな流れがありましたか?」と、問題がどこで起こったのかを相手に考えてもらいます。

もう一つのポイントは、思考の角度を変えるように聞くことです。
問題に直面すると、どうしても視野が狭くなります。そこで、「もし、もう一度やるとしたら、どこを変えますか?」と、視点を広げる質問を投げかけます。
視点が変わると、見える構造も変わってきます。
また、答えを決めない質問を投げかけることも意識しなければいけません。
質問のなかに答えを含めてしまうと、相手の思考はその方向に引っ張られます。「忙しかったから、ミスしてしまったんですか?」と聞けば、相手は忙しさを理由に説明するでしょう。しかし「どんな要因がありましたか?」と聞けば、相手は自分の考えで状況を整理し始めます。
質問とは、相手に答えを言わせる技術ではなく、相手が自分の思考を言葉にできる場をつくる技術です。
■「なにを言ったか」よりも「どう伝えたか」
人間関係の問題の多くは、「なにを言ったか」よりも「どう伝えたか」で起きています。同じ内容でも、言い方が変わるだけで受けとられ方は大きく変わります。
正しいことを言っているのに、なぜか関係がぎくしゃくする。
説明しているのに、相手が納得していない。
そうした場面の多くは、伝え方に原因があります。
まず意識したいのは、「相手をベースに言葉を選ぶ」視点です。
私たちは自分の頭のなかで理解している言葉を、そのまま相手も同じように理解していると勝手に解釈してしまいます。実際には、同じ言葉でも人によってとらえ方は違います。
たとえば「簡単にまとめてください」の言葉でも、人によって思い浮かべる内容は違います。ある人は「要点を三つくらいに整理して箇条書きにする」と考えるかもしれませんし、別の人は「資料を一枚にまとめる」と理解するかもしれません。
同じ言葉を使っていても、頭のなかで描いているイメージが違えば、結果として出来上がるものも変わってしまいます。ですので、伝えるときには「どの状態を指しているのか」を具体的に言葉にする必要があるのです。
■「伝えたつもり」から抜け出す方法
こうしたズレは、どちらか一方が悪いわけではありません。
ただ、言葉の定義が共有されていないだけです。そのため、抽象的な表現を減らして具体的な言葉で伝える技術が欠かせません。
「ちゃんとやってください」「早めにお願いします」といった表現は、曖昧です。相手はなにを基準に行動すればいいのかわからなくなります。これを防ぐためには、「なにを」「いつまでに」「どの状態にするのか」を言葉にして伝える必要があります。
ですが、どんなに具体的に伝えても、「伝えたつもり」からは抜け出せません。
そこで必要になるのが、相手の頭のなかにあるイメージを確認する作業です。説明した内容が相手の頭のなかで、どのような形になっているのかを確かめます。
「いまの説明を聞いて、どういう進め方を想像しました?」
確認のひとことを入れるだけで、認識のズレを早い段階で見つけることができます。
さらに、伝え方を安定させる技術として有効なのが「要約」です。
話の途中や終わりで短く整理するだけで、相手の理解度は上がります。
簡単にいうと……/つまり……/要は……
人は会話のなかで細かな情報をとりこぼすことがありますが、要約が入ることで重要なポイントを再確認できます。
■会話の主語は相手にある
もう一つ忘れてはいけないのが、相手の立場から言葉を組み立てる視点です。自分の事情だけを中心に話すと、相手は協力する理由を見つけにくくなります。しかし、相手の状況を踏まえて言葉を選ぶと、同じ依頼でも受けとられ方が変わります。
時間が限られているので、この部分を優先して……
「なにを言ったか」では、主語が自分になります。「どう伝えたか」は、相手が主語になります。「相手がどう解釈したか」の意識だけで会話力は上がります。
言葉の選び方は、人間関係を安定させる技術です。
正しいことでも、伝え方が荒ければ相手は不信感をもちます。反対に、少し言葉を整えるだけで、同じ内容でも受け入れられやすくなります。
伝える力とは主張の強さではなく、相手が理解しやすくなるように言葉を組み立てることです。
【人間関係の作法】会話の主語は相手にある
■相手の警戒心を下げる“前置きフレーズ”
「少し確認したいのですが……」「一度整理させてください……」と前置きするだけで、会話の空気は柔らかくなります。
本題をそのまま切り出すと、相手は身構えてしまうことがあります。
特に指摘や依頼、確認など、相手の行動に関わる話題ほど、いきなり核心に入ると防御的な反応になりやすくなります。そこで有効なのが、本題の前にひとことを添える技術です。
相手の警戒心を下げ、会話の受けとり方を柔らかくするための実用フレーズを紹介します。
「少しだけ相談があるのですが」
相手の意見を聞きたいという想いがあります。そのため、頼られていると相手が考え、耳を傾けやすくなります。
「一つ気になっている点がありまして」
このあとには、重要事項や再確認したい内容が来ることが予想されるので、なにか問題があるのかもしれないと、相手が耳を澄ませます。
このように状況によって、つけ加える言葉を自分で戦略的に使ってみましょう。相手の状況に合わせて、「伝え方」も変わります。
そのうえで、注意しなければならないことがあります。
それは、「なぜ」を多用しないことです。

■こうして担当者に嫌われた
とある財団法人での出来事です。
バックオフィス業務の効率化プロジェクトで、数カ月かけて提案をまとめ、最終報告会まで終えていました。
「あとは実行を待つだけ」という状態でした。
理事長を含めた関係者からも一定の評価をいただき、絶対にうまくいくと感じていた私は……ところが、最終決定の連絡がきません。
直接訪問をして、先方の様子を伺うことにしました。
そこで告げられたのは、予想外のひとことでした。
「法人内で検討した結果、不採用とさせてください」
あれだけ評価されていたのに……。私はすぐに原因を探ろうと質問をしました。
「なぜ不採用なのでしょうか? なぜこのメリットが伝わらなかったのでしょう?」
相手はイヤな顔をしながらも言葉を選び、「いえ、本当に良い提案だと思っています。ただ現場が、いまのままで特に困っていない、という意見が多くて……」と返答されたのです。
すると、私は“なぜ”“なぜ”と、気づけば、反論を畳みかけていました。
私の「なぜ」という質問は、相手のことを考えていませんでした。
担当者が私を嫌った瞬間でした。
「この人は、こちらの事情を理解しようとしない」という印象を強く残してしまって、嫌われました。
ひたすらに、自分が納得できる答えを引き出すために質問をしていました。相手の背景や調整の過程を見ようとせず、自分だけの答えを求めた尋問をしてしまっていたのです。
■「責められている」と感じてしまう
あなたは、どのようなときに「責められているな」と感じますか?
それは、問いただされている瞬間ではないでしょうか。
「なぜ、トラブルが生まれたんですか?」
「なぜ、間違ったんですか?」
「なぜ、そんな判断をしたんですか?」
仮に責める意図はないと言われても、「なぜ」と言われてしまうと申し訳なさを感じてしまいませんか?
相手に伝わるように言葉の印象を操作しなければいけません。事実を引き出す言い方に変えると、会話が穏やかになります。
■では、どうすればいいのか
「……この資料の数字を見ていて気づいたのですが」

「この部分、どう考えていますか?」と伝えると、相手は経緯を振り返りながら話してくれます。
相手の行動や感情を責めていると誤解を与えないよう、事実だけに焦点を当てるのです。すると、相手も客観的に物事を考えやすくなります。
人は、「評価」を気にします。相手にどのように思われているか、自分の行動により相手はなにを感じているかという他者の評価に意識が向いてしまうものです。
ですから、このように相手のことを配慮することが必要不可欠なのです。
【人間関係の作法】相手を評価しない
----------
和田 博信(わだ・ひろのぶ)
sooupコンサルティング社長
1977年愛知県生まれ。高知県育ち。日本サムスン、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、EY税理士法人を経て、2006年にフルライン株式会社に参画、2016年sooupコンサルティング創業。現在は管理部門支援を行い、東レやロイヤルホテルなどの大企業からベンチャー企業まで、累計660社以上のコンサルティングに携わる。先天性心疾患を抱え、36歳のときに多臓器不全で臨死体験を味わったことをきっかけに、人生をいかに効率的に生きるかを常に考えている。著書に『いつも機嫌のいい人が考えていること』(総合法令出版社)がある。
----------
(sooupコンサルティング社長 和田 博信)
