【Mr.tsubaking】「らあめん花月嵐」はなぜ、有名店とコラボできるのか?「ライバルと組む」異例の戦略が始まったワケ
全国に、ラーメン店は3万軒以上存在する。飽和とも言えるような状態の中で、他店との差別化を図るのは容易ではない。まして独自のブランディングがそのまま売上に繋がるとは限らない。
そんな中で、他店のラーメンとのコラボメニューをいくつも手がけ、唯一無二のポジションを獲得してきたのが、全国に250店舗以上を展開する「らあめん花月嵐」だ。
ライバルであるはずの同業他社とのコラボという、新たな戦略を推し進めて来た歴史の紆余曲折に迫る。
「ライバルと組む」異例の戦略は、なぜ始まったのか
「らあめん花月嵐」が、他店とのコラボラーメンを初めて発売したのが2009年。東京・武蔵境の熟成された濃厚なとんこつスープが人気の「ラーメン きら星」(閉店)とタッグを組んだのが最初だ。
「らあめん花月嵐」は、2000年頃から毎月登場する期間限定商品を継続的に発表しており、その一環としてのコラボ企画となった。そこにはどんな信念があったのか、運営するグロービートジャパン株式会社の企画広報部・鈴木力氏は次のように話す。
「期間限定商品には、ラーメンの多様性や包容力をお伝えしたい想いがあり、地方でしか食べられない、ご当地ラーメンと言われるようなメニューを自社で開発して販売してきました。その中で、個人店の店主さんが生み出した素晴らしいラーメンも全国のお客様に伝えたいという想いから、コラボ企画を始動しました」(グロービートジャパン鈴木氏、以下同じ)
とはいえ、他店はライバル的存在。同じ商品を取り扱わないことが、業界的にも不文律であるように想像できるが。
「最初は本当に私どもの主旨が伝わらず、話を持っていっても門前払いばかりでした。話ができても、門外不出の味をなぜチェーン店でやらなきゃいけないのかと断られることもありました。また、うちの現場スタッフからも、常に新しいことを覚えないといけないという点を負担に感じる、といった声もありました」
「美味しいけど食べに行けない」を解決する
断られ続けても、各地にあるラーメンの美味しさを全国に届けたいという信念で、コラボ提案を続けた。
「どんなに美味しいラーメンでも、距離的に行けなかったり、子どもがいると行列店に長時間並ぶのが難しかったりと、食べられない人がいると思います。私たちは、たまたまたくさんの店舗を構えられているので、コラボすることでより広く美味しさを伝えられると、丁寧にお伝えしてきました」
各店の店主に訴求したメリットは、取りも直さず「様々な理由で行きたくても行けないな」と感じていたラーメン好きにとっての利点でもあった。さらに、コラボによって「らあめん花月嵐」の認知や売上が向上すれば、古くから言われてきた近江商人の経営哲学「三方よし」にも適う。
そして、2009年に「ラーメン きら星」とのコラボを端緒に、「せたが屋」「海老そば けいすけ」などの人気店とのコラボが、続々と始まったのだった。
こうして業界の不文律を乗り越えて実現した名店とのコラボラーメンだが、実際に売上はどうなのか。
「最初の『きら星』さんとのコラボはお客様にとってもインパクトが強かったようで非常に人気がありました。期間限定ラーメンはコラボだけでなく自社開発のメニューも出していますが、有名店とのコラボラーメンは年間のなかでも突出した売上になっていますね」
こうした実績を積み上げて来たことで、現在では門前払いはほとんどなくなったというコラボ企画。それでも、やむを得ない事情で実現しないケースもある。
「店主さんは『是非に』と言ってくださっても、複数のお店を展開されている場合に現場の店長さんからNGが出ることはありますね。本店の地域には花月嵐の店がなくても、別の店舗の近くに花月嵐の店があると、やはり難しいと伺ったことがあります」
他にも、コラボ提案をした店が、コンビニなどと提携してカップ麺を発売する時期と重なってしまい、断られるなどもあるのだという。認知が高まった今でも、容易ではない条件をクリアしながらコラボラーメンを生み出し続けているのだ。
ラーメン店の“横のつながり”が生んだ変化
たゆまぬ努力の結果、ここ数年は業界からの反応にも変化があると鈴木氏は言う。
「ラーメン店主の方は横のつながりが強いんです。だから、断られるかもしれないと思ってご提案をした店主さんからも『こないだ、○○とコラボしてたんですよね』などと、すでに知ってくださっている場合も多いです。さらに『あのコラボラーメン、美味しかったですよ』と食べていただいていることも増えてきました」
また、コラボを生み出し続けたことで、社内にも変化が見られているという。
「まず、期間限定商品を毎月出していることは、私たちの商品開発力を高める礎です。そこにコラボ商品が多く含まれることで、他店の方が工夫されてきたラーメン作りの知見や新しい発見を知る機会になり、私たちの味の追求にとって様々な影響を与えてもらっています」
群雄割拠するラーメン業界の中で、誰も手を出さなかったラーメン店同士のコラボという領域。その開拓は平坦ではなかったが、不断の努力と工夫を続け、「らあめん花月嵐」の強みとなった。
後編記事『有名店とコラボしまくる「らあめん花月嵐」…特に反響が大きかった「ラーメン店」の名前』では、コラボラーメンはどのようにして商品化されるのか、そして他店の味を再現することで「らあめん花月嵐」自身のラーメン作りはどう変わったのか。メニュー開発の舞台裏に迫る。
