「女子生徒の裸を要求」「無断で録画した」だけじゃない…盗撮動画をほかの部員にまで拡散《「甲子園常連校」で起きた異変》〉から続く

 甲子園常連校で起きた衝撃的な盗撮事件や、小学校でのタブレットによる画像共有――。いま、全国の小中高で「子ども同士の盗撮行為」が急増し、社会問題となっている。かつて「悪ふざけ」で済まされていた行為は、なぜこれほど容易に深刻な「性犯罪」へと変質してしまったのか?

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 その背景にあるのが、SNSでもゲーム機でもない、いまや「子どもたちの多くが所持しているアイテム」の存在だ。依存症治療に向き合ってきた斉藤章佳氏の新刊『校内盗撮』(集英社インターナショナル)より社会に潜む危うさを浮き彫りにする。(全2回の2回目/最初から読む)


写真はイメージ ©getty

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子供の盗撮が「多発」する理由

 その背景にあるのは、スマートフォンの普及です。

 子ども家庭庁が2026年2月に公表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、小学生(10歳以上)の約48%がネット使用時にスマホを利用。

 中学生で約85%、高校生になると約97%と、ほぼすべての子どもたちが利用していることが明らかになっています。

 2024年10月に開院した西川口榎本クリニック(埼玉県川口市)では、性加害をした少年たちを対象とする専門外来を設け、心理教育プログラムを行っています。

 そこに寄せられる相談で、もっとも多いのが盗撮の問題です。

 また、2006年5月から2025年9月までの間に榎本クリニックを訪れた性加害少年(286名)のうち、盗撮の問題は全体の約4割を占めています(図1-3)。

 ちなみに盗撮の次に多いのが、不同意わいせつ(約3割)、そしてきょうだい間の性暴力(1割)と続きます。

10代で「盗撮」にのめり込む学生も

 盗撮加害者の大きな特徴は、他の性犯罪に比べて若年層が多いことです。

 クリニック受診者の約8割が10〜30代の受診者で、初診時の平均年齢は28.3歳。これは痴漢の受診者よりも10歳ほど若い数字です。

 つまり、学生や社会人になりたての非常に若い層がクリニックにつながっているのです。

 さらに注目すべきは、盗撮の「開始年齢の早さ」です。

 盗撮を10代から開始した人は約3割、20代を含めると7割近くに達します(図1-4)。

 参考までに痴漢など他の性加害では、10代から問題行動が始まった人は約1割程度です。

 一方で、「初診までの期間」を見ると、盗撮開始からクリニックにつながるまでには、約7.2年という長い歳月を要しています(図1-5)。

 彼らに盗撮する頻度を尋ねたところ、もっとも多かったのが「週2回」「週3回」でした。

 つまり、治療につながるまでに1000回近い盗撮を重ねている計算になります。

 なお、クリニックには刑事事件になってから初めてつながった受診者が、約7割を占めています。

 10代から盗撮を始め、周囲に気づかれることなく盗撮を繰り返し、事件化してようやく治療につながる――そんな盗撮加害者像が浮かび上がってきます。

性暴力を直視しない教育現場

 ここまで、盗撮の加害者には若年層が多い現状を伝えてきました。

 では、教育現場では盗撮をはじめとする子ども同士の性加害を、どのように把握しているのでしょうか。

 文部科学省が毎年発表している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」というものがあります。

 これは学校現場で起きている、子どもたちの問題を把握し、対策に活かすための調査です。

 2023年の結果を見ると、暴力行為やいじめ、不登校については詳細な数字が並んでいますが、「性暴力」という項目は設けられていません。

 2025年10月26日、『NHKスペシャル』で「加害の“扉〞が開くとき 子どもを守るには」という番組が放送されました。

 番組取材班が全国の県庁所在地や政令指定都市、東京23区の教育委員会計74か所を対象に行った調査によると、67か所の教育委員会が性暴力事案の件数を把握していなかったとのことです。

 その理由として挙げられたのは、「調査自体をしていないから、わからない」「定義が曖昧なので、数字を出すことができない」といった消極的なものばかりです。

 なかには、「(性的)同意があったか、なかったかの判断が非常に難しい」といった、被害者の心情を度外視したような回答すらみられました。

 その背景にあると疑われるのが、学校や教育委員会に根強く残る、性暴力を隠そうとする風潮です。

 時に「事なかれ主義」ともとれる対応が、保護者たちが教育現場への不信感をさらに募らせる要因となっていることが、番組では明らかにされていました。

千葉県教育委員会が「性暴力」の集計を始めたが…

 一方、こうした閉鎖的な状況のなかで、ようやく独自の動きをみせ始めた自治体もあります。

 千葉県教育委員会は、2025年度中に県立高校から報告を受けた生徒間の性暴力に関する事案が、2026年2月時点で計27件あったことを明らかにしました。

 県教育委員会が生徒間の性暴力について集計を行ったのは、全国で今回が初めてです。

 しかし、この数字もあくまで学校側から相談や報告が上がってきた数にすぎません。

 教育委員会側も、実態調査を網羅的に行っているわけではないため、学校現場で実際に起きている件数とイコールであるとは「断言できない」と強調しています。

 この27件という数字も、あくまで「氷山の一角」である可能性がきわめて高いでしょう。

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(斉藤 章佳/Webオリジナル(外部転載))