「クマを多角的に知る…ということ・シーズン2」 かつてない規模の人身被害が発生した2023年 トップが下した決断とは 前知事の佐竹敬久さんに聞く
今年度、秋田県内でもクマによる人身被害が複数発生しています。
県がツキノワグマ出没警報を発令してクマへの注意が呼びかけるなか、県民は再び日常生活での警戒を強いられています。
ABSラジオのキャンペーン特集「クマを多角的に知る…ということ・シーズン2」。
シーズン2の1回目は、かつてない規模の人身被害が発生した2023年、県のトップはどのような判断をしていたのか、前知事の佐竹敬久さんに話をうかがいました。
一日のはじまりに新鮮な情報をお届けするラジオ番組『あさ採りワイド秋田便』(ABSラジオ・毎週月~金 午前7:30~10:50)。5月からクマ被害に関するキャンペーン企画をシリーズでお届けしています。今回から9月末までをシーズン2として、各方面の専門家を招いてクマへの理解を深めていきます。
放送日:2026年7月31日(金)
ゲスト:前秋田県知事 佐竹敬久さん
出演者:田村修アナウンサー(ABS秋田放送)
川口大介記者(ABS秋田放送 報道ユニット)
田村:クマの大量出没、そして被害が止まりません。身を守るためにクマを多角的に知ろうと、あさ採りワイド秋田便ではシリーズで様々な分野の皆さんから話を聞いています。きょうのゲストは前の秋田県知事、佐竹敬久さんです。おはようございます。
佐竹:おはようございます。
田村:秋田県知事を4期16年務められた佐竹さん。秋田市内に住んでらっしゃいますけれども、ご近所でも毎年、熊の出没目撃が報告されていると思います。普段の生活ではどのようなことに気を付けていらっしゃいますか?
佐竹:朝夕の散歩(を控えて)。それに朝、家の外に出る時にドアを(少しだけ)開けて「いないかな」と確認。あと孫がね、庭で遊ぶことができないんだな。
田村:自宅の庭であっても…退任されるときに「これからは孫と遊ぶ」みたいな話をされていましたが…。
佐竹:玄関前に(クマよけのために)唐辛子の鉢植えをいっぱい置いて。
■在任中のクマの大量出没 県のトップとしての受け止めは
田村:なるほど。知事在任中はクマをめぐる様々な対応をされていました。特に2023年はかつてない規模で人身被害、市街地でのクマの出没が発生しました。当初、事態をどういうふうに知事として受け止めていらっしゃいましたか?
佐竹:クマに関する持論だけど、里山と奥山の境がないんですよ。かつては炭焼き、薪ストーブの薪、茅葺の茅。これをとるために人家からすぐの山、50メートルくらいの幅には年中人が入っていたんだよ。ところがいま、必要がないから。里山がないんだよ。かつて人間が必要だから(里山に)入って、見通しが良かった。いまは必要がないから、人家のすぐそばまでクマの生息域になってしまった。そして人家の周辺はおいしい匂いがするから。クマの嗅覚はすごいんだよな。それに気候変動。あと、山の再造林で針葉樹を植えすぎて、秋田は針葉樹が多い。
■クマ被害は”人生が変わる”…県行政は県民の命・財産を守ることが最重点
田村:そもそもクマは基本的に見られるのを嫌う野生動物で、見通しがいい場所があれば出てこないと。だけども手入れしないから、やぶになっていているし、すぐ近くまで来てしまうという、事実としてそういう状況があると思います。
県外からの駆除に対する厳しい抗議の声も、知事の時代に寄せられたと思うんですよ。県民の命を守るためのトップとしての決断をされる際、どういう思いがあったんですかね?
佐竹:クマの被害は負傷でも人生が変わるんだよ。医者に聞くと報道機関は「命に別条がない」、これを止めてくれと。近所の方が数年前に自宅の敷地で玄関で襲われて、両目を失明。もうね人生変わるんですよ。県行政は、県民の人命・財産を守ることが最重点。苦情は単純に言えば取り合わない!
田村:ここからは県政担当でクマの取材を続けている川口大介記者とも話を進めていきます。
川口:おはようございます。
私からもクレームの件でお聞きしたいんですけども、佐竹前知事といえば「歯に衣着せぬ」発言が話題になって、クマのクレームに関しては、(相手に)『クマを送る』、それに(電話を切る)『ガチャン』っていう発言がありました。この真意は?
佐竹:単純に言えば、理不尽な言動には反抗する性格だな。はっきり言わないとあーだこーだ言っても…。いまの政治家はあいまいにいうのが一番ダメなんだよ。
川口:実際取材していると、県・市町村職員は苦情・クレームに対する恐怖心みたいなものをとても感じるんですけども。
佐竹:まぁ仕事にならないんだよ。30分も1時間も話して。1回切ってもまた来るんだよ。クマの怖さを知らないんだよ。
川口:実際、(相手先は)県外の方が多いと聞きますよね。
■県内の現実と国の危機感との温度差も
田村:在任中は指定管理鳥獣の追加や、緊急銃猟に向けた法改正などにも奔走されていました。クマに限ったことではないと思うんですけど、縦割り行政の弊害。それに現実が法改正に追いつかないという、課題。国を動かす大変さとか、危機感の温度差というものはやっぱり感じられました?
佐竹:銃の規制が厳しいから。相当要望してもなかなか…。緊急銃猟もね。市街地に出たクマは完全に捕獲して、駆除すべきなんだよ。ところがね、銃だけではできないんだよ。銃以外の方法も考えないといけない。そういう新しいことは、日本の技術でできるはずなんだよな。(でも)新しいことは政府は、考えないんだな…。
川口:いま銃以外でとおっしゃっていましたが、現状では箱わなを設置するにも住宅から(一定程度)離さなければいけないという、いろいろな規制があって。
佐竹:若干極端だけれども、ウクライナでの紛争でも、銃がついたドローン、AIで対象を認証して。こういうのを導入すれば、市街地でもクマに対応する。こういうことに関してはまったく考えもしないんだよ…。
■専門職員の採用 生態を知らないと対応方法がわからない
田村:川口さんからも質問が。
川口:私は2018年から取材していて、当時は県庁に再任用の職員が1人。そして県内にはクマを専門に研究している人がいない状況だった。そういう中で、2020年に県庁に知見のある職員を採用して配置した流れで、いまは増員もしているが…。
佐竹:クマの生態に知見がないと、(対策が)できないから採用をしたけども。でも意外と県民の受けが悪い。いまSNSを見ると専門職がいるから「クマが増えた」と言うんだよ。「正しく恐れる」とか、県民からすると駆除一択。専門的な知見をいかして、駆除の方法を考えてもらいたい。
川口:ただ実際は人身事故の現場にかけつけて、対策をしていたり…。隣県では小屋に入ったクマが対策されずに次々に侵入していても、秋田は同様事案では駆除含めて(危険なクマは)対応できていると。
佐竹:クマの生態を知らないと対応方法がわからないから、だから(知見のある職員は)必要なんだな。
田村:佐竹さんの次の知事、鈴木健太知事は「クマの問題を県政の最重要課題として対応する」と話しています。トップを経験したみなさんじゃないとわからない大変さがあると思うんですが、経験者としてはどうお感じになりますか?
佐竹:観光面では、東京から来る方は「秋田はクマの地」と。(イメージが)良くないんだな。健康面では、高齢者が散歩できない。子どもが外で遊べない。全部が人命・負傷・人身事故以外にも、相当経済もマイナスの影響があるんだな。この問題、どういうふうにやるか。市街地に出ているクマは完全に駆除、これ以外にないと思うんだな。あとシカ、イノシシ、これが相当増えているんだ。シカ、イノシシ、クマ、山の中での競合関係。シカ、イノシシの対応も同時に必要なんだよ。
田村:シカ、イノシシも含めて、クマをめぐる問題は秋田だけではなく、全国的な問題になってきています。最後に前知事の知見をいかした提言があればお願いします。
佐竹:現場の状況をよく知ったうえで、国が対応をしっかりしてほしいなと思います。
田村:当然かもしれませんが、それがベースにあるということですね。今回は、前知事の佐竹敬久さんと秋田放送でクマ取材を担当している川口大介記者と共にお送りしました。佐竹さん、川口さん、ありがとうございました。
佐竹:ありがとうございました。
川口: ありがとうございました。
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あさ採り秋田便キャンペーン特集「熊を多角的に知るということ・シーズン2」。
次回は8月12日にお送りする予定です。
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あさ採りワイド秋田便 part2 | ABSラジオ | 2026/07/31/金 09:00-10:50 https://radiko.jp/share/?sid=ABS&t=20260731091044
