佐藤二朗と橋本愛の“ハラスメント騒動”が物議、言い分食い違うも…「両者の間に事実認識のズレはほとんどない」弁護士が評するワケ
7月1日配信の「週刊文春 電子版」、および翌2日発売の「週刊文春」の報道で、突如、噴出した俳優の佐藤二朗と橋本愛の“ハラスメント騒動”。その後、佐藤がSNSや別の週刊誌紙上で怒りの反論をするなど、火種は勢いを増し、炎上を続けた。
4月期に放送されていたドラマ「夫婦別姓刑事」(フジテレビ系)の撮影現場で起こったふたりの間のトラブルは、当初から双方の見解が対立。双方の所属事務所、フジテレビも含めそれぞれの主張が食い違い、大騒動に発展している。(ライター・中原慶一)
まずはトラブルの経緯を振り返っておこう。
発端となった7月1日の文春の報道によれば、<佐藤は、同作の撮影中、過去のトラウマから、腕と肩以外の接触をNGとしていた橋本と、車の中のシーンで、アドリブでアゴに触れた><佐藤はその規制を知らされていなかった><それを知った佐藤は、橋本の楽屋に乗り込み、“そういう規制があるなら、事前に伝えるべきだ”さらに“その状況が続くなら俳優を続けるべきではない”と発言し、橋本は涙が止まらなくなった>とした内容を掲載した。
しかし、第一報が出た1日夜、佐藤は自身のXで即座に以下のように反論した。
<さすがにもうこれ以上は我慢できません。僕は撮影中、何度も『もう我慢の限界だから、このドラマを降板させてほしい。そして全ての事実を公にするべき』と訴えました。もっと早く決断するべきでした。数々の『ほんとうのこと』が、明らかになる日が来ることを、切に祈ります 佐藤二朗>
さらに、佐藤の所属事務所も1日、声明を発表。「日常動作のお芝居には問題がないという点と、絡みのシーンもない為、佐藤の芝居に制限をかけない方が良いのではないかとプロデューサーと話をし、プロデューサーの了解を得た上で、佐藤には橋本氏のトラウマについては伝えないこととなりました」として、佐藤本人に、橋本の撮影に関する規制は知らせていなかったことを認めた。
佐藤が橋本に楽屋で話した状況については、「3人が在室する状況の中で、俳優同士の会話として、橋本氏の演技が素晴らしかったと感じたことを伝えました。そして過去の心の傷は最大限、尊重されるべき社会だと心から思うが、トラウマがあって夫婦役を演じるなら先に状況を相手に共有すべきである事、その状況が続くなら俳優を続けるべきではないのではないかと僕個人は思います」と伝えたと説明した。
さらに、「佐藤の言動がハラスメントにあたるものでないことは、専門家からの確認を受けています」と反論した。
一方、フジテレビは2日、佐藤の言動に対して、「厳重注意を行うとともに、再発防止を求めたことは事実」とした。文春報道を「大変遺憾」としながらも、文春報道の一部を裏付ける形となった。
これに対し、橋本の所属事務所は3日までに、フジテレビから外部弁護士によるヒアリング結果や認定事実について報告を受けているとした上で、「フジテレビ社による報道が事実との認識です」とする趣旨の見解を公表した。
しかし、これらに納得できない佐藤は3日、自身のXで、「勿論、偏った記事とは思ってましたが、ここまでとは」として文春報道を否定した上で、
「ステレオタイプの『か弱い若い女性』と『典型的な昭和のパワハラオヤジ』を完全に創作してる」
「嘘はやめて下さい」
などと再度猛反発した。
フジテレビが「説明」公表も、事態は泥沼化へ7月7日、フジテレビは、声明への批判を受け、改めて「当社ドラマ制作に関するご説明」を公表。主な内容は、佐藤と橋本双方に多大な負担と心労を与えたことへの謝罪や制作側の情報共有や調整が不十分だったことを認め、その上で、問題は顔に触れたこと自体ではなく、橋本が制約を設けるに至った事情を佐藤が認識した後の佐藤の橋本への楽屋での発言等にあるとして、弁護士を通したヒアリングの上、佐藤に厳重注意したと説明した。
一方の佐藤は、これに感情的になったのか、7日、Xで、自身が出演しているフジテレビが制作に関わった映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』(9月18日公開予定=本広克行監督)の自身の全シーンカットを要求。「もうフジとは関わりたくないです」と投稿した。
しかし、翌8日には「撮り終えたシーンを『カットして』は本広さんは勿論、多くに迷惑をかけます。その部分は心より謝罪し、取り消します。使われてもカットでも、僕に異論はございません」と前言撤回した。
それと同時に、7月8日公開の「デイリー新潮」のインタビュー記事に登場。佐藤は、「フジ弁護士の言葉は脅しのように聞こえた」として、「橋本さんはもう限界です。いつ倒れてもおかしくない状態です。本当に彼女がつぶれてしまったら、佐藤さんのタレント生命にも傷がつきますよ」と脅しとも受け取れる発言を受けたとヒアリング時の状況を明らかにした。さらに、「俳優人生が終わるかもしれない」という恐怖を感じ、自身の睡眠障害が悪化したことも吐露した。
これに対し、当該弁護士とフジテレビ側が佐藤に謝罪を申し出たものの、佐藤が受け入れなかったと報じられ、さらに一部メディアが、その件について、当該弁護士に質したが、守秘義務を理由に回答を拒否されている。
一連の経緯について、スポーツ紙芸能担当記者はこう話す。
「文春の第一報から約2週間、状況が目まぐるしく動きました。しかし、双方の意見は真っ向対立。落としどころが見つからない状態です。橋本愛に対するネット上の誹謗中傷は激しさを増し、所属事務所が法的措置を講じる方針を表明する事態にまで発展しています。
一方の佐藤は、『踊る~』のスピンオフドラマの制作がストップし、正式な再開については、フジや映画公式から正式発表は出ていない。双方にとって、よくない状態に陥っている。
文春のスタンスを非難する声が上がると同時に、橋本の撮影時の制約について聞いておきながら、佐藤本人にきちんと伝えなかったフジテレビの不手際を非難する声も上がっています」
双方の意見は食い違ったままだ。
言い分が食い違う場合に「真実」を判断するには今回の件に限らず、一般に、「ハラスメント」の事案では、被害者と加害者の当事者どうしの意見が食い違うことが多いようだ。被害者は、「多大な精神的苦痛を受けた」、加害者は「そんなつもりじゃなかった」と主張しているのはよく聞く話である。
当事者間の言い分が食い違った状況で、ハラスメント被害を受けたと訴える側はどのようにしてその事実を立証することになるのか。逆に、ハラスメントはしていない、濡れ衣だと主張する側は、どのようにしてそれを立証することになるのか。
ハラスメント事案への対応も多い杉山大介弁護士は「事実」とそれに対する「評価」とを区別したうえで、こう説明する。
「同じ『事実』を基にしていても、その『評価』がずれることが多いと感じます。本件がその典型です。
法律的な紛争では、弁護士や裁判官は、いつも当事者の主張する事実が食い違う中で判断を行っています。前提となる『事実』が何であるかを認定し、そこにどのような問題があるか、双方の言い分を比較するなかで、『評価』していくことが大切になります。
その時に用いられるのが、『動かし難い事実』に基づく『評価』です。
たとえば、加害者とされた側が主張する事実の中に、被害の存在を根拠づける事実があれば、自分が不利になる話をわざわざすることは通常考えらえないので、『動かし難い事実』なのだろうと認定してよいことになります。
音声や録画のような客観的な証拠がなくても、このように、双方の言い分を比較することで、『ここまでは間違いないだろう』と認定できるのです」
両者の間に「事実認識のズレ」はほとんどないが…今回の件に関してはどうか。杉山弁護士はこう続けた。
「報道や発表で双方の言い分を聞いた限りでは、本件では前提となっている『事実』については両者の間にほとんどズレはないと考えられます。
まず、佐藤が橋本の楽屋に直接赴いて発した発言内容については、佐藤側もそれが真実であることを前提として発信をしているので『動かし難い事実』といえます。
また、ドラマ期間中の佐藤がXに投稿していた『共演者に恵まれていたんだなあ』の文言から、撮影期間中に佐藤が不満を持っていたことも『動かし難い事実』と言えます。さらに、それを前提とすれば、佐藤が撮影期間中に橋本に対して『我慢我慢』と言っていたという報道内容も、そのような事実がほぼ間違いなくあっただろうと推認できます
そうすると、フジテレビが佐藤についてハラスメントにあたると評価した前提事実は、動かし難い事実として認定可能です」
あとは、その事実を基に、どのように評価を加えるかということになるが。
「もともと、橋本側が求めたのは、本来事前に伝えていた配慮の改めての徹底でしかなく、佐藤に対して制裁を与えるといったものでもありません。
穏当な要望でしかなく、それを、配慮すべきものと評価したフジテレビの判断は適切です。そして、これに対し不満を抱き、事後にも橋本への不満を表明し続ける佐藤の言動に問題があると評価することにも、それほどの困難はないと思います」(杉山弁護士)
いずれにせよ、この騒動、法廷闘争にこそなってはいないのだが、今後の展開は見えないままで、収束まではもうしばらく時間がかかりそうだ。そして、佐藤と橋本の今後の仕事に対する影響は避けられそうにない。(敬称略)
■中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。

