隻眼の画家・津田季穂の魂 絵画グループ「ベニウズ」の80年【徳島】
鳴門市で生まれた絵画グループ「ベニウズ」が2026年、創立80周年を迎えました。
その「ベニウズ」の中心人物が、隻眼の画家、故・津田季穂さんです。
彼が作品とともに「ベニウズ」に託した、この世界を描くメソッドとは。
徳島市銀座のギャラリーグレイス。
ここで今、絵画グループ「ベニウズ」の創立80周年を記念した展覧会が開かれています。
「松」雑賀公秀 1980年頃 水彩・パステル
「サーカス小屋の裏側」高砂幸哲 1978年 油彩・キャンバス
「自画像」東伊三雄 1950年頃 オイルパステル
「ベニウズ」は戦後間もない1946年、鳴門市で生まれました。
グループ名の由来は「紅色の渦潮」。
戦時中には抑圧されていた芸術へのたぎるような想いを、メンバーたちはその名に込めたのです。
かもめと眉山 八木和彦春。
銀河ステーション 眉山夜桜幻想第四次 八木和彦。
ベニウズのメンバー八木和彦さんです。
八木さんをひきつけてやまない、一枚の絵画。
激しいのに、どこか優しさに包まれるような色使い。
描いたのは隻眼の画家、津田季穂。
放浪の末、鳴門市にたどり着き1947年、「ベニウズ」へ参加しました。
やがて、メンバーたちの精神的支柱となっていきます。
(ベニウズのメンバー・八木和彦さん)
「生きる道を示してくれる人、その生きる道と言うのが一、般的な生き方とは全然違う」
「すごく不思議な、でも魅力のあるものだった」
八木さんも津田に導かれ、画家を志した一人です。
約60年前、小学生のころ訪れた「ベニウズ」の展覧会で津田にかけられた一言、「八木くん絵は好きかい?」。
この一瞬が、八木さんの人生を決めました。
高校2年生の時、津田に師事。
同時に「ベニウズ」への参加を決めました。
以来、八木さんは津田季穂の最後の弟子として、今も誰もが持つ「心のふるさと」を描き続けています。
(ベニウズのメンバー・八木和彦さん)
「(津田季穂の言葉)わたしは思う、偉大な壮麗な大規模な人を驚倒させるような、所謂一大惑星となるよりは」
「むしろ、野に咲く名も知れぬ小さな花となることこそ望ましい」
「ダリヤやバラには驚かないが、あの小さな小さな黄色や紫の花をつけた、心なき人に踏みつけられて暫く咲くあれらの花にこそ、最も驚くべき神の創造の神秘を見つけませんか」
「私はあれらの名もない花の美しさを見ると胸が熱くなります」
「摘むことはできない、踏みつけるか愛でるか2つに1つ、そんな画家になりたい」
(ベニウズのメンバー・八木和彦さん)
「別に画家になろうというのではなく、一生そういう風に絵を描き続けていけたら、生き方を導いてくれた人」
津田季穂は1899年、父が徳川慶喜の主治医という栃木の名家に生まれます。
15歳のとき猟銃の事故で右目を失うも、画家を志しました。
43歳でカトリックの洗礼をうけたあと、東京、福岡、高知など各地を放浪のすえ、鳴門へと移り住みます。
そこで結成1年の「ベニウズ」に参加しました。
酒を飲みながら、大声で芸術論を交わす。
津田の周りには、芸術に飢えた若者たちが集うようになりました。
(ベニウズのメンバー・八木和彦さん)
「(津田季穂の言葉)絵は人を驚かすのではない、自分がまず驚かないと」
「一番の原動力は感動、それは向こうからやってくる。自分の力で起こすものではない」
「全力で表現しようとすることが一番大事、そこにうまいとか下手とか全然すっ飛んでしまう、計算じゃない生き方」
(記者)
「津田さんが描いたカキと青ミカンの絵があります。タイトルは『無関心』」
「裏返してみると、その無関心の意味が書かれています、端折って読むと」
「無関心というのは、かたよらず公平で私心なく『どうでもよい』とか、『どちらでも同じ事だ』というような怠惰な気分とは全く違ったものである」
津田を中心とする集まりからできた鳴門教会。
ここに、津田が描いた15枚に及ぶ宗教画「十字架の道行」が残されています。
作品名
❝イエス十字架にくぎづけにせられ給う ❞
作品名
❝イエス十字架よりおろされ給う ❞
作品名
❝復活のキリスト」❞
鳴門の地に確かな足跡を残した津田季穂は1981年、81歳でこの世を在りました。
その魂は今、ここで静かに眠っています。
会員15人の作品72点が展示されている今回の展覧会。
死後45年経った今も「ベニウズ」には、たった一つの目でこの世界を見つめ続けた画家、津田季穂の熱い思いが受け継がれています。
最後に八木さんが、とっておきのエピソードを話してくれました。
(ベニウズのメンバー・八木和彦さん)
「津田先生に、ベニウズの創立メンバーが出会った頃一緒に写生した」
「津田先生だけ対象物と反対方向にイーゼルを立てて描いていた物を見て、それとそっくりに描くのではなく」
「いったん心に、心の中の像をキャンバスに描いた」
対象の本質をとらえ続けた、津田季穂の心の目。
津田の作品を購入することもできるベニウズ展は、6月28日までギャラリーグレイスで開かれています。
「八木くん絵は好きかい?」
この時間は、創立80年を迎えた画家グループ「ベニウズ」についてお伝えしました。
