【全文公開】サブロー・千葉ロッテ新監督 モットーは″昭和の猛練習″「質は量から生まれる」

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″ミスターマリーンズ″が激白

「量をやるから、初めて質も生まれる。今どきは量より質だと言われますが、一回でいいから死ぬほどバットを振るという経験を、選手たちにしてほしいと思ったのです」

昨季最下位に終わったロッテ。再建の切り札として投入されたのは、サブロー新監督(49)だ。サブロー監督は現役時代半年ほど巨人にいたものの(’11年)、それ以外のプロ22年間はロッテで過ごした″ミスターマリーンズ″。モットーに掲げるのは「昭和の猛練習」である。

「理由はいくつかあります。僕は昨季途中までの2年半、二軍監督を務めていました。近頃はメジャーにならい、練習内容を自主性に任せるのが主流なのですが、結局何をやっていいのかわからない選手が多いというのが現状です。

また、そうやって軽めの練習でいざシーズンに入ると、ケガ人が続出しました。そこで昨春、二軍キャンプの練習強度を一気に上げて、とにかく量をやらせた。すると昨季のファームでは、ケガ人がほぼ出ませんでした」

ただ肝心(かんじん)の一軍は昨季、春先から低迷した。チームのテコ入れで6月に一軍ヘッドコーチへ昇格。そしてシーズン終了後に一軍監督への就任が発表された。

チームには秋季キャンプから早速「地獄のキャンプ」を課(か)した。夕暮れまで7時間超、汗が乾く間などない。打撃練習はフリー、マシン、ティー、ロングティーを行いながら走塁練習も同時進行。居残りの特守、特打もある。そして一日の締めは連続ティー打撃だ。昨季4打席連続ホームランの離れ業をやってのけた右の大砲・山口航輝(こうき)(25)が振り返る。

「山盛りで5カゴ打った日もあります。少なく見積もっても700球。今までの野球人生で一番しんどかった……」

サブロー監督は言う。

「悪い表現で″昭和″が使われることもありますが、『昭和の時代が良かった』と言われることもあるじゃないですか。わかりやすいし、″昭和″というワードが独り歩きしてくれたおかげで選手たちの意識と取り組みが随分変わりましたよ。

みんなが、この春のキャンプが厳しくなることを自覚していたから自主トレもしっかり行ってきた。2月1日のキャンプインから仕上がっていて、西岡剛(つよし)(一軍チーフ打撃兼走塁)コーチ(41)が『今すぐ試合が出来ます!』なんて言っていましたから。ある意味、″昭和″という言葉に助けられましたね」

″昭和″は事前に考えていたわけでなく「自分でもわからないけど就任会見の時にパッとひらめいて、気づいたら口に出していました」と明かす。一方で指揮官本人も認めるように、ネガティブにとらえられる可能性もあり、SNSなどで炎上もしかねない。しかし、サブロー監督は「躊躇(ちゅうちょ)なんて全然。(野球には)関係ないですから」と筆者の心配をよそに笑い飛ばした。

実際に昭和流キャンプを取材してわかったのは、単なるシゴキではないということ。″昭和″と″令和″が、絶妙な塩梅で融合されているのだ。

「休む時はちゃんと休む。睡眠も大事。効率化を否定しているわけではありません。たとえばウエイトトレーニングは朝にさせます。以前の野球界はひと通り練習をやって最後にウエイトでしたが、猛練習の後だと体力は残ってないし、そもそも気力もない。僕が現役の時もそうでした。朝一番のフレッシュな時に行うのが、体力も技術も向上させるのに効率が良いと科学的にも言われていますから」

バレンタイン″心得ノート″

組織のトップは、嫌われることを恐れてはいけないと言われる。だが、令和の世では厳しさだけで若者たちを率いることはできないことも十分に把握している。

「理想の監督像も、やはり融合ですね。ロッテではボビー・バレンタインや山本功児さん、巨人でお世話になった原辰徳さん、日本代表では星野仙一さんという多くの名監督と言われる方々のもとでやらせてもらいました。それぞれの良い部分を受け継ぎたいと思っています」

バレンタイン監督といえばチームに明るい雰囲気をもたらし、’05年にロッテをリーグ優勝と日本一に導いた名将だ。サブロー監督は当時、外野のレギュラーの一角を担い日本シリーズでは全試合で4番を打った。

「バレンタイン監督時代は強かった。明るさはもちろん、データをものすごく駆使していて、戦略や勝負勘に長けていました。昨年末、当時の日本一メンバーで集まる機会があり、バレンタインに『どんな魔法を使ったの?』と聞いたんです。『自分ではわからないよ』と笑っていましたが、彼は監督としての心得をノートに箇条書きに残していて、それを見せてくれたのです。『うわ! こういうのが欲しかった』とうなりました」

また、かつて近鉄やオリックスを率いた仰木彬(おおぎあきら)監督のもとでコーチを務めた松山秀明(58)を一軍チーフ内野守備走塁コーチに招聘(しょうへい)。球界を席捲した″仰木マジック″も積極的に吸収する構えだ。

「仰木さんも名監督。松山さんはPL学園の先輩で、現役時代から仰木さんの話はよく聞いていました。データの活用、そして選手との距離感が抜群に上手な方だなという印象です」

強いロッテを取り戻す。その起点となる今シーズンだ。昨季はルーキーだった西川史礁(みしょう)(22)の新人王獲得をはじめ、山本大斗(23)がチーム日本人選手トップの11本塁打を放つ活躍。寺地隆成(20)が高卒2年目で正捕手をつかむなど若手の台頭があった。だが、こうクギを刺す。

「去年は、あの順位にいたから試合に出られた部分もある。『来年確約されるものじゃない』と伝えています。若手は昨シーズンの経験をどう活(い)かせるか。一方でベテランや中堅は、最下位という悔しさをどうバネにするか。そこに僕はちょっと期待しています」

そんななか、ベテラン投手の奮起にファンの注目は集まる。名球会入りの通算250セーブまであと2に迫る益田直也(36)だ。昨季は5セーブと低迷。サブロー監督は「守護神の座は自分の手でつかめ」とクローザー白紙を強調する。

「彼には、とくに厳しく接しています。現役時代は一緒にやっているので可愛い後輩なのは確かです。でも、この世界は結果がすべて。それが本当のプロ野球です。それは全員に当てはまります」

今年のロッテは泥臭い。ただ、昭和の香りを漂(ただよ)わせるノスタルジーが心地よくもある。さらにサブロー監督は不敵(ふてき)な笑みを浮かべ、こんな予告をしてみせた。

「昨年は最下位。これより下はないから、僕らは思い切ってやるだけ。ちょっと相手がびっくりするようなこともやりたいですね。僕はわりとオーソドックスな方ですけど、今年に関してはかき回してやろうと思いますよ」

サブロー野球がパ・リーグに旋風を巻き起こす。

『FRIDAY』2026年3月6日号より

取材・文:田尻耕太郎