『夫に間違いありません』で注目 新星・二井景彪が目指す、細田佳央太の人としての在り方
また期待の若手俳優が登場した。現在放送中のドラマ『夫に間違いありません』(カンテレ・フジテレビ系)で初のレギュラー出演を果たした二井景彪だ。主人公・朝比聖子(松下奈緒)の息子・栄大(山粼真斗)の同級生・藤木快斗として、高校生の“負”の感情を見事に体現している。
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撮影中の裏話や役作りへの葛藤、芸能界入りのきっかけや、憧れの先輩俳優、今後の目標までじっくりと語ってもらった。
●役作りのヒントは「テニスの試合」
――連続ドラマにレギュラー出演されるのは、『夫に間違いありません』が初めてだそうですね。
二井景彪(以下、二井):こんなにセリフのある役をもらったのは初めてです。役が決まったときには「本当に僕でいいのかな」と思いましたし、正直、今でも不安はあります。
――冷静な役を堂々と演じられているように見えますが、内心は……。
二井:めちゃめちゃドキドキしていました。最初にお話を聞いたときには驚きというか、「決まったの!?」という感じで。台本を読んで面白そうなドラマだと思いましたし、藤木は注目される役なので、「大丈夫かな」って。自分がこの役をちゃんと全うできるのか不安でしたけど、「僕を選んでよかったな」と思ってもらえるように頑張ろうと思いました。
――不安を抱える中でも、撮影に入って「イケそうだな」と思えたタイミングはありましたか?
二井:「イケそうだな」とはなかなか思えていないのですが、すこし楽になったエピソードがあって。光聖役の中村海人さんと初めてお会いしたときに、「藤木快斗役の二井景彪です」とご挨拶したら、「お前、姉ちゃんの息子をいじめんなよ」と言われちゃって(笑)。その言葉を聞いて、急に緊張がほぐれて安心しました。近くでお芝居も見させてもらえて、本当にありがたかったです。そのあとはお話する時間がなかったんですけど、あの一言に救われました。
――ふっと緊張がほぐれたと。藤木は栄大に高校の推薦枠を取られそうになったことで、嫌がらせをするようなダークな役どころです。
二井:藤木は、栄大に対して「コイツがいなければ」という妬みや嫉妬が強いと思うんです。僕にはいじめをした経験はないけれど、テニスで「あと一回勝てば大事な大会に出られる」というタイミングで負けたときに、「対戦相手さえいなければ」と妬みの気持ちを持ってしまうことは過去にあったので、その感情を思い出しながら演じました。
――自分に置き換えて、黒い感情を呼び起こしていたんですね。監督やプロデューサーからのリクエストはありましたか?
二井:常に「栄大の上に立て」と。圧をかけて、「どんどんやっていけ」と言われていたんですけど、いやぁ~難しかったですね(苦笑)。その言葉で意識するポイントが明確になったとはいえ、普段人と接していて圧をかけることがないので、やっぱり難しかったです。でも、それもテニスに似ているかもしれないと思って、試合中に相手に圧をかける感覚で演じていました。
――「もしも自分が藤木の立場だったら、こうするのに!」という思いもありますよね?
二井:「いじめをする暇があるなら、勉強しろよ」と思っちゃいます。栄大がいなければ推薦を取れるということは、それまで頑張ってきたってことじゃないですか。それなのに、「ここでいじめるんだ」とは思いました(笑)。
――たしかに、そうですよね(笑)。特に印象に残っているシーンはありますか?
二井:カエルの水槽のシーンです。あそこは藤木がカエルを自分に置き換えての発言だったんですけど、セリフが長く、表現するのが難しくて。もちろんただセリフを言うだけじゃなくて、藤木の思いをちゃんと伝えなければいけなかったので、特に考えることが多かったです。OKが出てからもずっと頭に残っていました。今でも「あれでよかったのかな」と考えると、心がザワザワします。
――栄大役の山粼真斗さんとは、現場でどんなお話を?
二井:ご飯を食べるときには少し話しますが、シーン中はほとんど喋っていないんです。役同士がバチバチなので、仲良くなっちゃうとお芝居もしにくいかなと思って、あまり話さないようにしています。
――後半にかけて藤木の事情がわかり、二人の仲もほぐれていきます。一緒にゲームをしたり、肉まんを食べるようなシーンもあるそうですね。
二井:実はまだその撮影はしていなくて、今からすごく楽しみです。そのシーンになったら、山粼くんとも思いっきり話したいと思っています(笑)。
――ようやく解放されるわけですもんね(笑)。今回の撮影で、お芝居に対してあらためて感じたことはありますか?
二井:正しいことをやらなくていいんだな、と思うようになりました。最初は「こうしないと、こうしないと」という気持ちで頑張っていたんですけど、監督さんから「自分が思うように自由にやっていいから。自分がやりたいように全力でやって」と言われて。その一言で、「固くなりすぎるのもよくないんだな」「やりたいことをやっちゃえ!」と思うようになりました。
――それは、クランクイン直後の出来事ですか?
二井:中盤あたりでした。「好きにやってみて」と言われて、そこで吹っ切れました。そのあたりから少しずつ栄大との距離も縮まって、素直になれるシーンも増えてきたので、そこからはすごく楽しくなりました。
●珍しい本名「景彪」の由来とは?
――ここからはご自身のことも伺っていきますが、“二井景彪”という素敵なお名前は本名なんですよね?
二井:そうなんです。母が息子のことを「トラ」と呼びたくて、“何トラ”にしようかとずっと悩んでいたみたいで。僕のおじいちゃんがボソッと「カゲトラ」と言ったときに、家族全員が「いいじゃんいいじゃん」となったらしく、それがきっかけでこの名前になりました。なので、深い意味はないです(笑)。でも、名前が珍しいと覚えてもらいやすいんですよね。この仕事をするまでは「なんだ? 景彪って」と思うこともありましたけど、今はこの名前でよかったなと。家族にも感謝しています。
――今回はドラマにも、週刊誌カメラマンの薩川景虎(カゲトラ)というキャラクターがいますよね。
二井:今までカゲトラという名前の人に出会ったことがなかったので、僕もビックリしました。初めて「景虎」と書かれている台本を見たときに、「あ、同じ名前だ!」って。
――それも不思議なご縁ですよね。あらためて、芸能界に入ったきっかけを教えてください。
二井:もともとドラマは好きでしたが、この世界にはまったく興味がなかったんです。でも、母と姉がかなりのミーハーで、「僕を芸能界に入れたい」とずっと言っていて。一昨年の12月頃に「アミューズのボーイズオーディションに応募させてくれ」とすごく言われたので、「一回だけならいいよ」と言って受けることにしました。そのオーディションでご縁があって、今、所属できています。
――ドラマをご覧になったご家族の反応はいかがですか?
二井:ずっと「キャーッ!」と叫んでいます。周りの人にも言っているみたいで……。一番喜んでいるのはきっと母なので、いい親孝行ができたんじゃないかなと思っています。
――事務所に入る前と今では役者に対する思いもまったく違うと思いますが、ご自身の意思で「続けていきたい」と思ったきっかけは?
二井:ボーイズオーディションに合宿があって、お芝居だったり歌だったり、あとはダンスもやったんですけど、一番楽しいと思えたのがお芝居でした。「もし受かったら続けたいな」と感じていたので、事務所に所属できて嬉しかったですし、今こうして続けられているのも、やっぱり楽しいからです。合宿でお芝居をしなかったら、お芝居に興味すらなかったと思うので、ご縁があってよかったなと思います。
――お芝居のどんなところが楽しいと感じたのでしょう?
二井:最初はお芝居というものが本当によくわからなくて、ただテーマに沿ってやっていたんです。でも、一緒にオーディションを受けていた人たちは年齢も近かったので、普通の日常会話をしているような感覚になって。それが合宿中に唯一、素の自分になれる瞬間でした。合宿中はずっと緊張していたので、お芝居で素になれたときに楽しいと感じたんだと思います。
――天性の役者気質を感じますが、テニスにかなり注力されていたので、将来的にその道に進むことも考えていたのでは?
二井:小さい頃から、ずっと「将来はプロテニス選手になりたい」と思っていました。でも、中国地方の大会(中国大会)に出たときに、本当に強い人たちに出会ってしまって。それでテニスで生きていくことを諦めかけていたちょうどその時期に、ボーイズオーディションがあって。今はプロ選手になるというよりは、趣味の一つとして上手くなっていきたいと思うようになりました。なので、いつかテニスプレイヤーの役ができたらいいな……というか、ぜひやりたいです!
――先ほど感情面でテニスの経験が役立っているとありましたが、ほかにテニスで培った経験が活きていると感じることはありますか?
二井:やっぱりプレッシャーの中で平常心を保つことかなと思います。緊張していても、焦っていても、顔に出したら相手の思うつぼなので。あまり表に出さないようにはするんですけど、さすがに今回の撮影は緊張しました。
――テニスの大きな大会よりも、今回のお芝居のほうが緊張したと。
二井:ぜんっぜん緊張しました(笑)。マネージャーさんにも、ずっと「緊張する、緊張する」と言っていました。あまり顔に出ないタイプなので、周りには伝わってないかもしれないですけど。
――そうやって顔に出ないのは、テニスの経験が活きているというわけですね。この世界に入って、印象的だった言葉はありますか?
二井:今回、監督からいただいた「自由にやってみて」という言葉は大きかったですし、事務所の先輩の細田佳央太さんからもらったアドバイスもすごく印象に残っています。オーディションを受けるとき、僕は毎回「受かるかな」と不安になっていたけれど、細田さんは「自分が絶対に受かる」と覚悟と自信を持って受けるらしいんです。不安でいるより、自信満々で受けた方が固くならずにお芝居もできますし、絶対にそのほうがいいなと思って。今はそのアドバイスを参考に、いろいろなオーディションを受けています。
――精力的にオーディションも受けていこうと。
二井:はい、「絶対受かるぞ!」と思って受けています。周りを見ると、スタイルのいいイケメンばかりで「本当に自分がここにいていいんだろうか」と思うこともあるんですけど、それでも今は自信を持つように心がけています。
●憧れの先輩・細田佳央太の背中を追って
――ご自身は、自分をどんな性格だと捉えていますか?
二井:学校では、わりと明るくてうるさいタイプです。でも、お芝居をする上では暗くて静かな役を演じる方がやりやすいというか。明るい役をやろうとすると、どうも嘘っぽくなっちゃって、ラクにできないんです。なので、実際は根が暗いのかな……(しばし思いを巡らせて)いや、やっぱり明るい性格だと思います(笑)。
――ドラマのいち視聴者としては、藤木のイメージが強いのですごく意外です。
二井:もう藤木とはまったく違いますね。学校行事をワイワイ楽しむようなタイプです。
――そんな二井さんの姿が見てみたいです(笑)。ちなみに今、生活する中で何をしている時間が楽しいですか?
二井:友達と通話しながら、ゲームをするのが一番楽しいです。やっぱり友達の存在は大きいと思いますね。今回の『夫に間違いありません』もみんなが観てくれているので、「お前、すげえじゃん」とか言われたりして(笑)、すごく嬉しいです。
――これから、どんな役を演じてみたいですか?
二井:学園ものに出たいです。『ドラゴン桜』(TBS系)や『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)がすごく好きで、同年代の子たちと一緒にお芝居するのも楽しそうだなと思います。普段の自分を出せるような、明るい役やムードメーカーの役に挑戦してみたいです。
――それもひとつの挑戦になりそうですね。最後に、今後目指したい俳優像を教えてください。
二井:細田佳央太さんをずっと尊敬しています。お芝居はもちろんですけど、人としてもすごく尊敬できる方で。お会いするたびに、ちゃんと僕の話を聞いて、的確なアドバイスをくれる。「当たり前のことを当たり前にできる人になりたい」というのが今の目標なんですけど、細田さんはそれを体現している人だと思うんです。当たり前のことができる人は、人から信用されるし、お芝居でも自分の空気を作ることができる。俳優としても、人としても憧れていて、いつかあんなふうになれたらいいなと思っています。
(文=nakamura omame)
