『ロンバケ』から30年、木村拓哉はずっと心の師匠 『教場 Requiem』風間公親に幸あれ
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。「トリミングしてきた!」石井が『教場 Requiem』をプッシュします。
参考:木村拓哉は木村拓哉をやめるわけにはいかないーー役者として無限の可能性を示した『無限の住人』
●『教場 Requiem』
ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)がNetflixやTVerで現在配信されています。アラフォーの自分にとっては、初めて「ラブストーリー」を認識した作品でもあり、「木村拓哉」という人間に取り憑かれることになった一作でもあります。現在30代後半以上の方は、窓からスーパーボールを落としたこともあるのではないでしょうか(意味がわからない方は『ロンバケ』を観てください!)。
私の学生時代、いや人生において、木村拓哉&SMAPはずっと側にいました。というのも、私の母が熱狂的な木村拓哉ファンであり、子守唄のように家ではSMAPの曲が流れ続け、テレビには録画した木村拓哉出演ドラマや、『SMAP×SMAP』(カンテレ・フジテレビ系)が延々とリピートされていたのです。我が家では「キムタク」と言ってはいけない、「拓哉」か「木村さん」で呼ぶというルールもありました。なぜか母と姉と一緒に国立競技場でのSMAPライブに行ったことも、今思えばとても貴重な経験だったなとしみじみです。木村さんが好きだからという理由で、『ONE PIECE』全巻買ってきてもいいという指示が出たこともありました。
当時は母の熱狂ぶりに引いてしまい、「自分はそこまで好きではない」と斜に構えていたものの、結果的に彼の全作品に触れて育った私は、「カッコいいとはどういうことか」という美学を無意識のうちにすり込まれていました。結果として、そんなカッコいい人間にはなれずでしたが、「誰に対しても誠実であれ」と言った木村イズムは自分の人生の指針にもなっています。雲の上の人なのに、なぜかすぐそばにいてくれる心の師匠。それが自分にとっての木村拓哉でした。
彼はまぎれもない国民的スターですが、時には心ないバッシングに晒されることもありました。そんなとき、理不尽な声に対して勝手に憤っている自分に気づき、「ああ、私はやっぱりこの人が大好きなんだな」と自覚したものです。
だからこそ、歳を重ね、ラブストーリーからも解き放たれ、“再ブレイク”(という表現も違う気がしますが)している近年の活躍を心から喜んでいる自分がいます。Instagramの投稿などから垣間見える“チョイださ”な親父感、自身の散髪を「トリミング」と言ってしまうほどの異常とも言える犬愛など、絶妙な隙を見せつつも、今の年齢だからこそ滲み出る凄みで役を生きる姿は、かつてとは違うベクトルでカッコいい。その「最新型のカッコよさ」が凝縮されているのが、『教場』シリーズの主人公・風間公親です。
長い前置きになりましたが、『教場』シリーズ最後(?)の作品『教場 Requiem』がついに公開されました。前編にあたる『教場 Reunion』Netflixでの配信から約1カ月、シリーズ第1作から観てきた方にとっては、待望過ぎる最新作です。
『教場 Reunion』を観ていないと基本的に分からない、シリーズをすべて観ていない人にとっては明らかに感情移入しづらい、いわゆる一見さんお断り作品ではあります。でも、観てきた人にとってはたまらない仕掛けの数々があり、次の作品(?)にとっても絶対に欠かせない一作です。木村さん演じる風間公親と生徒たちのやり取り、風間と因縁のある十崎(森山未來)とのエピソードなど、“フォーマット”を本作もしっかり踏襲している分、シリーズファンは安心して最初から最後まで楽しめます。
冷徹なまでに生徒を追い詰める風間ですが、その厳しさの根底にあるのは、彼らが警察官として、そして一人の人間として正しく歩んでいけるようにという深い愛情です。生徒たちもその真意を全身で受け止めるため、卒業のシーンでは風間教官に対する深い敬意と愛が溢れ出します。木村拓哉ファンであるがゆえの贔屓目ともいえそうですが、その姿は風間公親=木村拓哉自身へ向けられた感謝の念そのものにも見えました。
予想外(?)の真犯人や、生徒たちによるさまざまな問題は、冷静に思い返すとツッコミどころもあるにはありますが、それらすべてを覆す役者たちの熱演が凄まじいです。驚愕のラストシーンもあり、シリーズファンにはたまらない、これからシリーズに挑む方にも十分価値のある一作になっています。ただ、このままではあまりにも風間教官が報われなさ過ぎる感もあり、どうにかこうにか笑顔を観ることができる続編も期待します!(文=石井達也)
