パンダ返還の上野動物園はライオンやシマウマもいない現状…「パンダはもういらない?」動物園の未来

写真拡大 (全2枚)

「パンダは本当に日本に必要?」

東京・上野動物園の双子のパンダ・シャオシャオ(雄)とレイレイ(雌)が、中国に返還される期限まで1ヵ月を切った。

当初に予定されていた返還期限は2月20日だったことから、約1ヵ月の“前倒し”は日中関係の影響と見る向きも多い。しかし、同動物園を管轄する都建設局は’25年12月15日に開いた記者会見で、「中国側の検疫施設の受け入れ可能時期を調整した結果」「日程調整の期間としては通常の範囲内で、前倒しされたわけではない」と説明した。

中国側は新たなパンダの貸与については明言しておらず、54年ぶりに日本からパンダがいなくなる。

そのため、一目見ようと多くのパンダファンが連日上野動物園に殺到した。しかし、割り当てられた観覧時間は1人1分。待ち時間は200分を超えたため、現在はウェブで申し込み、抽選となっている。

シャオシャオとレイレイが東京都にもたらした経済効果は年間300億円を超えるといわれているだけに、2頭がいなくなった損失は計り知れない。

そう思うと、これまでは“パンダ様様”だったが、パンダを借りるには多額のレンタル料がかかることもあり、最近は「果たしてパンダは本当に日本に必要なのか」と、賛否両論の声が上がっていることも確かだ。

パンダが日本に初めてやってきたのは1972年。日中国交正常化を記念し、友好のシンボルとして2頭のパンダ、カンカンとランランが中国から贈られた。このときは無償の“贈与”だった。ところが1984年に『ワシントン条約』が締結され、対象動物となったパンダは、商業目的の国際取引が禁止されるように。中国はこの条約に加盟したことで、これまでの贈与という形ではなく、繁殖や研究を目的としての貸与の形をとるようになった。だが、

「ワシントン条約も関係していると思いますが、1984年当時の中国の最高指導者・臂平が贈与から繁殖・研究を目的とした貸与に方針を変えたためといわれています。もちろん、ビジネス的な要素もあったでしょう。1991年以降は貸与期間が10年単位になりました。正確な数字は明らかになっていませんが、保護・研究費という名目のレンタル料はペアで年間約100万ドル。

そのほかにも、子どもが生まれると、その子どもも中国に所有権があるため、1頭当たり40万ドル。また死んでしまった場合も、35万ドルを中国側に支払うことになっています」(全国紙記者)

経済効果を考えたら、決して高い買い物ではないが、上野動物園のような公営の施設の場合、税金で賄(まかな)うことになるため、パンダに興味がない人たちから「いらない」という声が上がるのも理解できる。

一方で、パンダがいなくなった後の経済効果は150億円超の損失といわれており、日本にパンダは必要だという声も多く聞かれる。特に、

「パンダがいなくなった上野動物園は本当に大丈夫なのだろうか……」

と、心配する声は少なくない。

ライオンもシマウマもいない

上野動物園の来園者数は全国の動物園の中でもトップにある。かつてパンダがいない時もその座が揺らぐことはなかったが、今は少し状況が変わっている。

上野動物園には現在約300種2500の動物がいる(公式サイト)。かなりの数だが、ライオンは’19年から不在。シマウマは’20年から。他にもヒョウやオカピといった動物園の“定番”が不在なのだ。園内で来園者の声を直接聞くと、「正直、なんだか物足りない感じがしました」という声が複数聞かれた。

SNSでは、〈パンダに代わる“人気者”を作る必要があります。1種類の動物に頼っているのはよくない〉〈そもそも、国と国の関係性に左右される動物を展示しているのはおかしい〉という声も上がっているが、近年、動物園そのものに対して〈虐待ではないのか。かわいそうだ〉と、否定的な声も聞かれるようになっている。

上野動物園をはじめとした、同施設の未来はどうなるのか……。動物研究者のパンク町田氏(57)に話を聞いた。

「私もパンダはいらないと思います。経済効果という観点でパンダを借りるのはおかしいと思うし、動物を政治の道具に使うのは賛成できません。そんな国とは仲良くしなくてもいいし、そんな高いレンタル料を払うのなら、そのおカネで中国の竹林を買って保護してあげたほうがよっぽどパンダのためになります。

昔中国では、パンダの飼育はそれほどうまくいってなかったんです。それが、日本企業が世界で初めてパンダ用のミルクを開発し、中国に提供したことで、その後飼育がうまくいったという経緯があります。中国側はそのあたりのことをもう少し考慮してもいいのではないかと思います」

と“パンダ外交”に異議を唱える。しかし、動物園の存在意義に対しては、次のように話す。

「学びの場としての存在は大きいと思います。例えばですが、迫力あるトラを見て『すごい』となりますが、実は密猟などで数が減ってしまっているとか、内戦が起きてチンパンジーが減ったとか、戦争など人間の愚かな行動が動物にも影響を与えていますよ、という教育の場になればいいと思うんです。動物学者や動物に関わっている人たちで、動物園に影響されていない人はいないと思います。子どもたちは動物園で実際の動物を見て『わー、すごい』となりますが、それで終わりではなく、その子どもたちのうちの1人でもいいから動物を救う立場に立てる人が出てくればいいと思います。それだけでも、十分貢献していると思います。

展示された動物を見て、『かわいそう』『虐待だ』と言う人もいますが、自然界で生活しているより長生きしている動物も多いですし、明らかに寿命が短くなったり、飼育が難しい動物は避ければいいだけです。それはこれまでの経験から十分学んでいるでしょうから」

動物園は子どもの教育のためにも不可欠な施設だという。その上で、今後動物園に求められるあり方については、次のように語った。

勉強の場としての存在意義

「現場の実物と人間の知識の両方を体験できる場所という点では、動物園は博物館と同じだと思います。学芸員を置いて、檻の前に動物の説明看板を充実させ動物のデータを書物にして販売するとか、閲覧できるようにするとか、もっと博物館の要素を強くして、勉強の場として提供できるようにしたらいいと思います」

では、上野動物園は今後どうしたらよいか、聞いてみると、

「パンダに代わって、希少な動物を迎え入れることを勧めたいです。ライオンが不在なので、例えばバーバリライオンなどは、どうでしょうか」

バーバリライオンとは、かつてアフリカ北部に生息していたライオン。絶滅したとみられていたが、その後の調査で1996年に再発見され、’07年に1頭生息しているのが確認された。さらにその後、原産地のモロッコのムハンマド5世の私的動物園で、かつて献上品として捕獲されたバーバリライオンの血統を受け継ぐライオンたちが飼育され続けており、全世界で確認されている個体数の半数にあたる32頭の個体群が生き残っていたことが確認された。

「体重が300〜400kgあり、ライオンの中では最大です。グラディエーター(剣闘士)が出てくる映画のシーンでよく見られますが、古代ローマで、剣闘士が戦った、あのライオンです。ライオンやトラは飼育が難しくないので、海外の動物園からちゃんとしたルートで輸入したらいいと思います」

上野動物園はもちろんだが、存在自体が危ぶまれる動物園の未来に期待を込めて注目していきたい。

取材・文:佐々木博之

宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になる。FRIDAY時代には数々のスクープを報じ、その後も週刊誌を中心に活躍。最近は、コメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中