2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。加えて、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものも分散・再編されはじめた。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。キヤノンマーケティングジャパンで、ブランドコミュニケーション本部 部長を務める西田健氏の回答は以下のとおりだ。

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――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。

自社のブランドコミュニケーションに関して、戦略立案から各コンタクトポイントとなるマス広告やオウンドメディア、Webなどのデジタル施策の実行まで、一貫してPDCAを回す仕組みが完成し、機能することができました。また、昨今のデジタル広告の諸問題に関して、6月に総務省から発表された、デジタル広告に関する広告主等向けガイダンスにより、我々広告主が取り組むべき方向性や目標感が明確になり、弊社でも動き始めることができました。現場の担当者だけの問題ではなく、経営層が関与しリスクとして認識すべきというガイダンスの視点は非常に明快で、弊社においても経営幹部に対して私からこの問題を説明・提起し、共有することができました。

――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。

私は昨年、マスもデジタルも、もう一度生活者の信頼を取り戻す努力をしようという目標を掲げました。その目標は、半分は芯を捉えていたものの、半分は外れたように思います。原因はAIです。世の中はAIによって、ますます不確実で予想できなくなっています。さらに、グローバルでの地政学的リスクや日本にとっての円安問題など、あらゆることが複雑に絡み合い、1年後でさえ全く予想がつかないほど、変数が多すぎて変化が激しくなっています。このような背景の中で、偽・誤情報や詐欺・なりすまし広告が大手メディア上でさえ相変わらず大量に表示され、生活者にとってますます広告はイヤなもの、見たくないものとなりました。企業による宣伝や発信は偽善的で作られたものだと考えられてしまい、コミュニケーションがいっそう難しくなっています。見た目や枝葉末節のすり替えではなく、いま一度、真のお客さま理解と信頼の獲得が重要だと思います。

――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。

デジタル広告の課題に一石を投じたいと思います。この問題は非常に大きく、また一広告主だけの問題ではありません。広告主、プラットフォーム、広告代理店、媒体社、そして業界団体が一体となって取り組む必要がある、グローバルにわたる壮大な問題です。今年も大きく状況は変わらず、むしろトレンドとしては悪化したようにさえ思います。広告はさらに嫌われ者になり、「×」ボタンが見えにくい広告などのダークパターンの問題と相まって、課金すれば広告から解放される仕組みのように「広告の罰ゲーム化」が一層進みました。広告が人々の関心を集め、話題に上り、生活者の日々の生活に役立つ、おもしろい、カッコいいものだと思ってもらえるように模索していきたいと思います。