「人生に遅すぎるという言葉はない」 68歳の新人弁護士【徳島】
68歳にして、高校時代からの夢を叶えた男性がいます。
40年ぶりにふるさと・徳島にUターンし、仲間と共に新たなキャリアをスタートさせたこの男性を取材しました。
■68歳の新人弁護士
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「年齢は68歳で、実は新人の弁護士です」
徳島市出身の粟田晋二さん。
10月から新人弁護士として日々、奮闘しています。
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「(相談は)ちょくちょく来ますね。手際が悪いもので仕事の量は多くないけど、バタバタしている」
■総務省を55歳で退職
粟田さんは城南高校を卒業後、立命館大学法学部に入学。
その後、県庁で4年間働いたのち、総務省で27年余り勤務していました。
しかし55歳で退職、高校時代からの夢だった弁護士を目指すことにしました。
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「弁護士自体は若い時からなりたいという思いがあって、困っている人たちを助けたいという気持ち」
「ずっとどこかのタイミングで司法試験を始めたいなっていうのは、自治省・総務省に勤めながらも思っていた」
「若くして辞めて受からなかったら困るし、年を取り過ぎても頭が固くなっているかもわからないし」
「万が一、受からなくても何とか食べてはいけるという見込みが立ったのが、55歳だったのもある」
弁護士という夢を追い、定年を前に退職を決意した粟田さん。
その時の家族の反応は…。
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「家内は基本的に反対だった。弁護士という職業柄、危ないのではないかと」
「(仕事を)辞める時には渋々ですけど、やってみたらって言ってくれた」
■66歳で司法試験に合格
ロースクールに通いながら勉強に励み、最後のチャンスとなった5回目でようやく合格したのが66歳の時。
退職から合格まで、約11年かかりました。
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「時間が長かったのもあるが1年1年、人生の景色が変わらない」
「合格発表があって不合格で、次の受験の勉強を始めて試験受けてまた不合格で、また受験の勉強始めてっていうのが続いて」
「それがちょっとしんどかった」
やっとの思いで合格した司法試験ですが、気持ちは複雑でした。
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「(4回連続で)ずっと落ちていたので、そろそろ終活を始めようかという話を家内としていて」
「だんだん弁護士になる覚悟みたいなのが、受験が長引くにつれて薄れていったので」
「これは大変やなっていう意味で、困ったなって思った」
「自分の気力がある限り、やりたいことを最後にやりたいなって思って気持ちを切り替えた」
司法試験に合格するまで使っていた問題集を見せてもらいました。
(記者)
「これマーカーの意味は?」
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「理由付けのところにできるだけ線を引くようにしました。結論に線を引くと結論を覚えてしまう」
「結論は覚えない。理由付けの方を覚えておくと、その理由付けを使うと結論が出てくる」
■親子ほど年の離れた同期と活動
現在は、司法修習生時代の同期で愛媛県出身の新人弁護士・烏谷知樹さんと、共同で北島町に事務所を構えています。
事務所名の「リヒト」はドイツ語で「光」を意味し、困っている人々を照らす存在でありたいという思いが込められています。
(弁護士・烏谷知樹さん(33))
「北島町は弁護士がいない、法律事務所がなかったところ。法律事務所がないところでやれたらって思って」
親子ほど年が離れている2人ですが、いくつか共通点が。
烏谷さんは立命館大学法学部出身。
粟田さんとは大学の先輩・後輩にあたります。
(弁護士・烏谷知樹さん(33))
「粟田先生のいいところは、頼もしさを感じるところ」
「一緒にお客さんと法律相談しているときは、足りないところも補ってくれている。頼もしい弁護士像を示してくれている」
また、粟田さん同様、烏谷さんも弁護士になる前は、愛媛県の市役所で務めており、2人には元公務員という共通点もあります。
(弁護士・烏谷知樹さん(33))
「どんなことでもコツコツとこなしていく。(事務所としては)身近な存在になっていけたらと思っている」
「お電話ありがとうございます。法律事務所リヒトでございます」
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「弁護士の粟田です」
取材したこの日も、相談や問い合わせの電話が鳴っていました。
夜には、北島町商工会が主催の「起業を考える人が集まるセミナー」に出席。
粟田さんはそこで、自身の目標やリヒトの展望について語りました。
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「何でもやるけど、とび抜けていることはないという状態」
「いろいろな仕事をする中で、自分の得意分野を見つけていきたいというのが現状」
「小さな正義の実現、中小企業の方々のために様々な面での法的サポート、そういうものに尽力していきたい」
68歳で弁護士という夢を叶えた粟田さん。
そんな粟田さんの今の夢は…。
■「命尽きるまで弁護士」
(弁護士・粟田晋二さん(68))
「最後の命が尽きるところまで弁護士でありたい」
人生に遅すぎるという言葉はない。
人々を明るく照らす「光」になれるよう、粟田さんは残りの人生をかけて、法の力で地域の人々を支えていきます。
