なぜ「吉田カバン社長」をあえて「一般人」と呼んだのか…Perfumeあ〜ちゃんの結婚発表に感じるモヤモヤの正体

■Perfumeメンバー結婚発表にある違和感
11月11日、Perfumeの「あ〜ちゃん」こと西脇綾香が自身のインスタグラムで結婚を発表。まさに電撃結婚と言える衝撃的な発表だったが、すぐに話題は結婚相手の「一般男性」に移った。
あ〜ちゃんは結婚相手を「昔からずっと友達で、互いにいろんなことを知っているBest Friendであり、私のこと、Perfumeのことを心から応援してくれているファンの人」と紹介。さらに「ファンの人と結婚することは私の夢でした。10代の私、おめでとう! やったね!」と続けたが、“ファンとの結婚”というフレーズはインパクトがあった。
もちろん「Perfumeはアイドルではなくアーティストだから」という人がいてそれは一理あるのだが、一方でアイドルとして見る人が多いことも事実。実際、男性なら友人と「Perfumeの3人なら誰が好き? つき合うなら誰?」などと話したことがある人は少なくないだろう。
そんなアイドル自身が「ファンと結婚することは夢だった」と明かしたのだから、男女を問わず他のアイドルたちに与える影響は大きかった。
SNSでは「夢がある」「俺でも可能性あるってこと?」などの声が次々にあがり、ネットメディアもファンとの結婚にフィーチャーした下記の記事を報じた。
「《ファンと結婚》した芸能人、じつは意外に多い…? 奇跡を引きよせた “元ファンたち”、その驚きのアプローチとは」(LASISA 11月11日配信)
「Perfume・あ〜ちゃん、“ファン”との結婚発表に児嶋一哉『俺もあるぞ!』とか希望持っちゃうよね」(スポーツ報知 11月12日配信)
「Perfumeで注目の“ファン婚”芸能人の“その後”…スピード離婚から“離婚→再婚”まで紆余曲折あり」(週刊女性PRIME 11月13日配信)
「Perfumeあ〜ちゃんも!『ファンと結婚した』女性タレントたちの気になる“その後”」(ENTAME next 11月14日配信)
■本当のファンの感想
しかし、前述した「夢がある」「俺でも可能性あるってこと?」のコメントはファンではない“通りすがり”の人々である可能性が高く、ネットメディアもPV狙いの記事であおっているだけだろう。
長年、芸能界やイベントなどを取材しているが、一部の地下アイドルやご当地アイドル、あるいはメディア露出の少ないグラビアアイドルを除けば、本気で交際・結婚を狙っているファンはほとんど見かけない。
Perfumeのようなメジャーアイドルであればなおのこと。「“推す”ことでアイドルを輝かせたい」「笑顔やパフォーマンスで元気をもらう」などが目的であり、「むしろ交際・結婚なんて望まない」「アイドルを続けてほしい」というファンが少なくない。
事実、イベント会場などでファンたちに話を聞くと、「自分のことを認識してほしい」という気持ちや「他のファンより少しでも多く話したい」などの独占欲は確かに感じられる。ただその一方で、交際・結婚を夢見るような発言はなく、もしそんなファンがいたら浮いてしまう上に周囲から敵視されるという。
そもそも、あ〜ちゃんの結婚相手は“一般のファン”なのかはわからなかった。結婚発表当初からそんな現実に“一般のファン”たちは気づいている。

■結婚相手に「一般人」が増えたワケ
あ〜ちゃんのコメントをあらためて見直してみると、ファンたちが現実を察するようなニュアンスが感じられる。
あ〜ちゃんがあげた「昔からずっと友達」「互いにいろんなことを知っているBest Friend」は普通のファンには届かない領域であり、この段階で「やっぱり自分たちとは違う人」と感じるだろう。
また、「私のこと、Perfumeのことを心から応援してくれている」というフレーズから“ファンの解釈”が広いことが推察される。“応援してくれる人”という意味なら、年中Perfumeを追いかけているコアなファンだけでなく、関係者や元同業者、幼なじみや同級生などもファンに含まれ、ますます「ファンとの結婚」という報じられ方とは乖離していく。
近年、アイドルに限らずアーティスト、俳優、芸人など、芸能人の結婚相手で最も多いのは“一般人”になっている。以前は「芸能人としての“格”が上がる相手でなければダメ。最低でも同格レベル」などと言われ、アイドルの結婚は芸能人同士や実力のあるアスリート、文化人などとの結婚が大半を占めていた。
しかし、時代は流れ、現在アイドルの結婚で重視されているのは“格”ではなく、祝福されやすく嫌われない相手であること。実際、ある芸能事務所のマネージャーと話したとき、「芸能活動を陰ながら応援し、におわせなどをしないなど、ファンのことも尊重できる相手を選んでほしい」と語っていた。
■「吉田カバンの社長」への本音
その上で安定した高収入を得ている一般人が現在のアイドルにとって理想的な結婚相手であり、企業経営者や大企業の役員クラスと出会うきっかけが作られていくという。
ただ、ファンにとってみれば「経営者や役員クラスとの結婚」の第一報は印象が悪いため、そこはフィーチャーせずに「長年つき合ってきた」「活動を支えてきた」「こんなところに惹かれた」などのフレーズが強調される。
……と、このように書いていた19日朝、「あ〜ちゃんの結婚相手は吉田カバンの吉田幸裕社長(41)」という記事が報じられた。するとさっそく「我々が考える一般人ではないと思っていた」「普通のおっさんと結婚なんてするわけない」「もう少し慎重に伝え方や言葉選びに配慮してほしかった」などの声があがっている。

いずれにしてもこれらの事情を普通のファンたちが把握しはじめ、詮索しないようにしているのは確かだ。結婚引退するかどうかにかかわらず「本人が幸せなら最小限の発表でいい」「アイドルなのだから想像させるような写真はいらない」というのが本音。
結婚相手が芸能人だとメディアが話題にしてしまうし、したくない想像もしてしまうから、「一般人」という発表だけなのが最も歓迎されているのは確かだ。あ〜ちゃんのケースでも、「幸せなら『応援してくれている人』以外の情報はいらない」という声が散見されただけに、相手の詳細が報じられたことで落胆しているファンもいるのだろう。
■元アイドルが感じたリスク
だからこそアイドル側は、もし相手が経営者や大企業の役員などであればまずは隠し、過去の芸能活動などがある相手の場合も伏せておく。さらに、売れていない芸能人ならひっそり引退してもらい、名前や活動歴を報じられないようにしておくことが常套手段となっている。
アイドルが現実的な結婚相手を選ぶところは「芸能人であることがハイリスクになった」からであり、ファンへの配慮は「SNSやリアルイベントで距離感が近づいた」からこその変化ではないか。
3年前まであるグループでアイドルをしていた女性に取材したとき、オフレコで「推すために使ってくれた金額を考えると、ファンを気づかうのは当たり前」「それくらいのことをしておかなければ誹謗中傷されそうで怖い」などと語ってくれた。
気持ちだけでなく、多くの金と時間を使ってきた分、「かわいさ余って憎さ百倍」が自分だけでなく結婚相手にも向けられるリスクがあり、慎重にならざるを得ないのだろう。
■アイドルと結婚=幸せではない
あ〜ちゃんに話を戻すと、インスタグラムで結婚を報告したあと、理解を求めるセルフフォローのような下記の文章をつづっていた。
「プライベートも仕事も何もかもが“私”を合成する一部で裏も表もなく全てが私です。もしも、私自身を#で表現するとしたら、#Perfume #歌手 #singer #ダンス #3人組 #広島 #あ〰︎ちゃん #おしゃべり #明るい #旅 #スイーツ #美容 #healthy #女性 #家族……いろいろあると思いますが、この中には行く末、#お母さん #ママ #子供 #babyが私をかたどる一部として自然に入ってくるワードだと思って生きてきました。私を表現するいろんな良きワードがこれからもどんどんと増えて奥深い愛深い人間になって、みなさんにもっと笑顔とパワーを分けられるスーパーウーマンになりたいです」
長い文章の真ん中に潜ませ、オブラートに包むような形で「お母さん」「ママ」「子ども」「baby」というフレーズを重ねていた。来年2月15日で37歳になる彼女はすでに高齢出産の年齢層に入っているだけに、結婚への理解を求める要素としてこれらをあげるのは理に叶っている。さらに「今後、妊娠・出産の報告をするときに、突然ではなくワンクッション入れておくことでファンのショックをやわらげよう」という意図も感じさせられた。
それでも多くの日本人は、あ〜ちゃんと結婚相手の男性にこれからも注目していくのだろう。ファンはステージに集中していればいいが、ファン以外の一般層は「アイドルと結婚したのはどんな人なのか」「どんな結婚生活を送っているのか」という関心を持ち、メディアが報じていくことが推察される。
スキャンダラスに報じられることこそないものの、外出のたびに注目を集め、時には盗撮などの行為を受けるかもしれない。「夫婦とも常に幸せそうな姿を求められる」「世間の人々が知らない苦労がある」などの点で、「アイドルと結婚したから幸せとは限らない」のが実情だろう。
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木村 隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、エンタメ、時事、人間関係を専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、2万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。
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(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者 木村 隆志)
