『チェンソーマン』なぜ世界的ヒット作に? 衝撃を与えた“アンチ少年マンガ”の面白さ
公開から11日間で観客動員数200万人、興行収入30億円を突破している劇場版『チェンソーマン レゼ篇』。すでにアジア圏の国々でも公開が始まっており、世界的なヒット作になりつつある。
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なぜ同作は日本のみならず、海外のファンたちも魅了しているのか。その理由について、さまざまな角度から検討してみたい。
まず同作の公開状況について振り返っておくと、アジア圏での公開は9月24日に香港からスタート。9月25日にマレーシアとシンガポール、タイ、そして9月26日にはインド、インドネシア、フィリピン、韓国、台湾、ベトナムと公開地域が拡大した。
そのうち、ファンの盛り上がりがとくに目立っているのは韓国だ。韓国メディア「スポーツ東亜」が9月22日に掲載した記事によると、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は公開前から外国映画前売り率1位、アニメーション前売り率1位を記録したとのこと(※1)。
また、韓国映画振興委員会が運営するデータベース「KOBIS」では、公開初週の興行収入ランキングで第2位に入っていることも確認できた(※2)。
さらに台湾でも盛り上がりを見せているようで、台湾メディア「三立新聞網」では映画館限定ポスターが販売開始から即日完売したというニュースが報じられていた(※3)。
そのほか米津玄師が手掛けた主題歌「IRIS OUT」がグローバルチャートで大ヒットしていることも、国際的な勢いの指標になるだろう。同楽曲はBillboardが提供する世界200以上の地域を対象としたグローバルチャート「Global 200」(10月4日付け)にて、第5位にランクイン。これは日本語楽曲で“史上最高位”となる快挙だという(※4)。
■『チェンソーマン』が覆した少年マンガの“お約束” そもそも『チェンソーマン』は『レゼ篇』以前から、海外人気が高い作品として知られていた。
アメリカの権威あるマンガ賞「ハーヴェイ賞」では、「ベストマンガ」部門を2021年から2023年まで3年連続で受賞。そして「NPD Bookscan」のデータをもとにしたランキングでは、『チェンソーマン』1巻が2022年にアメリカの書店でもっとも売れたマンガの第1位に輝いていた(※5)。
そうした流れの背景としては、コロナ禍のロックダウンを境にアニメ・マンガの海外展開が一気に進んだことが挙げられる。とはいえ数ある作品のなかで『チェンソーマン』がとくに高い人気を獲得している以上、そこにはもっと別の理由が関わっているはずだ。
それではどんな要素が、海外ファンの琴線をくすぐっているのだろうか。たとえばアメリカの掲示板型SNS「Reddit」では、誉め言葉として「少年マンガらしくない」「少年マンガのお約束を崩している」といった意見が飛び交っていることが印象的だ。
同作では人の命が軽く、メインキャラクターですら簡単に退場していくことが大きな特徴。どれだけ危機的な状況になっても、主人公とその仲間たちだけはなぜか生き残る……といったご都合主義を指す「プロットアーマー」という言葉があるが、『チェンソーマン』ではそのお約束があっさりと覆されてしまう。
また少年マンガの王道と言われる「友情」や「努力」の価値も、高く見積もられておらず、そうした価値観を蹂躙するような展開が次々と描かれる。恋愛描写すらも歪としか言いようのない扱いだ。そのため読者はつねに予想を裏切られ、“何が起こるか分からない”物語にのめり込んでいく……。ここまで自由で予想不可能な展開のマンガは珍しいため、国内外で多くのファンを獲得することになったのではないだろうか。
なお、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は今後、10月22日のフランス公開を皮切りとして、アメリカやヨーロッパでの公開が行われる予定だ。これをきっかけとして、世界規模のムーブメントが巻き起こる可能性もあるかもしれない
参照※1. https://sports.donga.com/ent/article/all/20250922/132434011/1※2. https://www.kobis.or.kr/kobis/business/stat/boxs/findWeeklyBoxOfficeList.do※3. https://www.setn.com/News.aspx?NewsID=1724959※4. https://x.com/reissuerecords/status/1973240969895333932※5. https://www.animenewsnetwork.com/news/2023-03-05/chainsaw-man-ranks-no.1-on-npd-bookscan-top-selling-manga-of-2022-list/.195600(文=キットゥン希美)
