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 ◇ワールドシリーズ第4戦 ドジャース4ー11ヤンキース(2024年10月29日 ニューヨーク)

 ドジャースは29日(日本時間30日)、ヤンキースとのワールドシリーズ(WS、7回戦制)第4戦に4―11で敗れて4連勝ならず、4年ぶり8度目の世界一は持ち越しとなった。第2戦の走塁で亜脱臼した左肩に不安を抱える大谷翔平投手(30)は「1番・DH」で出場して5回に3試合ぶり、負傷後では初安打となる中前打。直後の走塁ではスライディングも披露した。頂点まであと1勝。不屈の闘志でもぎ取る。

 東西名門球団による頂上決戦。相手だって黙ってはいない。歓喜に沸くヤンキースタジアム。世界一は持ち越しとなったが、大谷は鋭い眼光のままベンチ裏へと引き揚げた。試合後のクラブハウスではまだ亜脱臼の症状が残る左肩を軽く回し、サポーターは着けることなく帰路に就いた。

 同僚らも、ファンも待望していた快音を響かせたのは、3―5で迎えた5回無死一塁。代わったばかりの左下手投げのT・ヒルが投じた初球のシンカーに反応した。打球速度103・8マイル(約167キロ)の力強い打球が中前で弾む。これが負傷後では初安打。直後の走塁では前日と同様に左手でユニホームの胸元をつかんだままだったが、右脚でのスライディングも披露。デーブ・ロバーツ監督は「彼(大谷)に何度も尋ねたが、(左肩の負傷は)打撃の妨げにはなっていない」と安堵(あんど)の表情で、走塁に関しても「盗塁はしないと思うが、今のところ問題ない」と説明した。

 27日の第2戦で二盗に失敗した際のスライディングで左肩を亜脱臼。強行出場した前日と同様に打席に立つ時以外は左肩を温めるサポーターを着けて準備した。初回の打席では初球がファウルとなったが、バットが背中に届かんばかりのフルスイングを披露。前日はフォロースルーで左手を早く離して顔をしかめる場面もあって心配されたが、この日は各打席で両手で最後まで振り切るなどコンディションが上向いていることをうかがわせた。

 2点を追う7回1死二塁ではフルカウントから外角低めのスプリットで空振り三振。ロバーツ監督は「左肩に問題はないが、四球を取れそうな打席でボール球を追いかけている」と珍しく苦言を呈した。たとえ手負いでも、出るからには結果を求められる立場。前夜の試合後に「出られるなら出る準備をするのが当然」と語っていた大谷が、その責任を誰よりも分かっている。

 投手陣が計11失点で大敗を喫して4連勝での世界一こそならなかったが、まだ3勝1敗で優位な立場に変わりはない。トライネンら勝ちパターンの投手を温存することもできた。チーム4年ぶり8度目、大谷にとっては初の世界一まで、あと1勝。30日(日本時間31日午前9時8分開始)の第5戦で、決める。(柳原 直之)

 ≪脱臼は「世界王者にとって良い兆候」≫スポーツ専門局ESPNが第2戦で左肩を亜脱臼した大谷が負傷直後にナインへ送ったメッセージ内容を公開した。28日の試合前にマンシーが「僕は大丈夫だ。試合には出るつもりでいる」と内容を明かしていたが、実際は続きがあり「前回はベリンジャーの肩が脱臼した。今回は僕の肩が脱臼した。これは世界王者にとって良い兆候」という内容。20年にベリンジャー(現カブス)が右肩の脱臼を抱えながらド軍の世界一に貢献したことを引き合いに出してナインの士気も高める粋なメッセージだった。

 ≪田中賢介氏「走る時が一番痛い」≫大谷が左手を固定するためにユニホームの胸元をつかんで走っていることについて、古巣・日本ハムの先輩でテレビの解説者として現地を訪れている田中賢介氏(43)が「走る時が一番痛い。特に(左腕を)引いた時。引かないように(首元に)手を置いていると思います」と説明した。同氏は現役時代の15年に右肩を亜脱臼しながらプレーした際に同様の走り方を採用。当時同僚の大谷が参考にした可能性については「どうなんでしょう。9年前ですからね。自分で思いついたのかもしれませんね」と話した。