大谷翔平 強行出場で悲願世界一王手 痛み止めの注射、テーピングで固定し打席へ 「次の試合も出ます」
「ワールドシリーズ、ヤンキース2−4ドジャース」(28日、ニューヨーク)
ドジャースが敵地ニューヨークで行われたヤンキースとのワールドシリーズ(7回戦制)第3戦に勝って3連勝。4年ぶり8度目の世界一に王手をかけた。第2戦で左肩を亜脱臼した大谷翔平選手(30)は負傷を押して「1番・指名打者」で出場。3打数無安打だったが、初回に四球で出塁し、フリーマンの2ランで先制ホームを踏むなど勝利に貢献。「あと1勝、明日の試合に集中したい」と闘志を高ぶらせた。
不屈の闘志。スイングの衝撃に何度も顔をしかめ、大きく息を吐いた。塁に出ると、左肩の動きを抑えるため、左手でずっとユニホームの胸の部分を握り続けた。「左肩亜脱臼」のけがからわずか2日後の強行出場。大谷が痛み止めの注射を打ち、テーピングで固定して打席に立ち続けた。
勝利のために今の自分にできること。出した答えは“チャンスメーク役”だった。プレーボール直後の初回の打席で四球を選んで出塁。フリーマンの2ランを呼び込み、先制のホームを踏んだ。2点リードの三回無死一塁の場面では追い込まれながら二ゴロ。走者を得点圏に進め、ベッツの適時打につなげた。
100%でないことは自分が一番よく分かっている。だから四回1死一、二塁からの空振り三振を悔やんだ。「最後はボール球だったのでフォアボールを取れていたんじゃないかなと思います」。後続につなぐことに心血を注いだ。
26日の第2戦で二盗を試みた際にスライディングで左肩を痛めた。精密検査のため1日遅れてニューヨークへ移動し、チームに合流した。試合前、室内打撃練習で状態を確認し、出場の意思を固めた。地元ロサンゼルスより気温が10度以上低い敵地。医師から「冷やさないことが大事」と助言され、試合前と打席の合間には温熱サポーターを装着。悪化させないように工夫をした。
チームへの気遣いも忘れなかった。負傷した直後、チームメート全員が入っているグループチャットでニューヨークへ移動する選手たちに英文でメッセージを送った。
「大丈夫です。次の試合も出ます」
試合後、大谷はその時の心境を「自分のベストを尽くしますよ、と。チームの士気だけは下げたくない。フレディ(右足首捻挫のフリーマン)もそうですけど、全員が万全の状態で出ているわけではない。どこかしら痛みを抱えている」と明かした。
打席の中で痛みはあったはず。しかし、「痛い、痛くないは考えてない。もう痛くない気持ちでやっています」と言葉を濁し、「今は痛み引いてきて、自分のスイングも戻ってきている」と前を向いた。ロバーツ監督は「本当によく戦っていた。彼には感謝している」と賛辞を贈り、第4戦の出場を明言した。
悲願のワールドシリーズ制覇へ王手をかけた。「明日に決められるに越したことはない。あと1勝、明日の試合に集中したい」。大谷が左肩に痛み止めの注射を打ち、テーピングで固定して打席に向かう。