尿路結石

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監修医師:
大坂 貴史(医師)

京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

尿路結石の概要

尿路結石は泌尿器科疾患のなかでも最も頻度が高い疾患の一つです。
さらに、食生活や生活様式の欧米化により動物性たんぱく質や脂肪を多くとる食生活に変化したことや高齢化などを背景に尿路結石の罹患率はここ10年で上昇しています。
夜間から明け方にかけて発症しやすく、血尿を伴う腰背部の激痛を呈します。
治療は主に鎮痛薬と水分補給で、再発率が5年間で50%と高いため再発予防が重要となります (参考文献 1) 。

尿路結石の原因

尿路結石と一口に言っても、結石を構成する成分にはいくつか種類があります。シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などが主な成分である結石や、シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムの混合結石などがあります。
腎臓で尿中にあるこれらのカルシウムや尿酸などの塩類が析出し、そこにタンパク質などの有機物が影響を及ぼすことにより尿路結石は形成されると考えられています。
しかし結石の発生機序は不明の点もあり、複合的な要因によるものとされています (参考文献 1) 。

尿路結石の前兆や初期症状について

結石は無症状で通過することもありますが、血尿を伴う腰背部痛を急激に発症するというのが典型的な尿路結石の症状です。この症状を疝痛発作と言い、尿が濃縮される夜間から明け方に多く発症する傾向にあります。
尿路結石では血尿を認めることが大半ですが、尿管に結石が完全にはまりこんだ場合は尿の流れが停滞して血尿が見られないこともあります(参考文献 1) 。
また、他の症状としては、吐き気、嘔吐、排尿困難、尿意切迫感などがあります(参考文献 2) 。

尿路結石の検査・診断

尿路結石が疑われる場合、尿検査、血液検査、および画像検査が行われます。

尿検査

まず尿検査では、細菌感染がないかを確認します。また、尿路結石は結晶成分によって色や結晶の形が異なるため、尿路結石の診断にも有用です。

血液検査

次に血液検査では、血球数や炎症反応、腎機能、電解質などの項目を確認します。血液検査だけで尿路結石と診断することはできませんが、結石が尿管を閉塞することによる白血球数の増加や炎症反応の上昇、腎機能低下などが見られないかを確認することなどに有用です。

画像検査

そして、尿路結石の診断には画像検査が不可欠です。
一般的には超音波検査、腎尿管膀胱部単純撮影 (レントゲン検査。KUBとも言います) 、CT検査が用いられます。中でも超音波検査は放射線被曝の心配がないため、急な腹痛で尿路結石が疑われた場合などにはまず初めに行われます。
また、腎尿管膀胱部撮影もCT検査に比べると被曝量が少ないのですが、尿路結石やシスチン結石、キサンチン結石といった種類の結石を投影できないという欠点があります。診断能力としてはCT検査が最も優れているため、現在はCT検査が尿路結石の画像検査としては標準的に行われています (参考文献 4) 。

尿路結石の治療

疝痛発作を生じた場合、尿路結石が通過するまでの疼痛緩和と補水が治療となります。特別な治療などは必要ないため、経口で水分補給ができない場合や痛みと発熱が抑えられない場合を除いて自宅療養が可能です。
ただ、もし尿が全く出なかったり、耐え難い痛み・吐き気や嘔吐があったりする際には早急に泌尿器科を受診しましょう (参考文献 2) 。

疝痛発作に対する鎮痛薬としてはまず非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) が推奨されます。ただ、非ステロイド性抗炎症薬と同時に服用してはいけない薬を服用している場合や重度の腎機能障害がある場合、非ステロイド性抗炎症薬だけでは十分な疼痛の緩和ができない場合はオピオイドなどの鎮痛薬が勧められることもあります (参考文献 2) 。

尿路結石が通過するかどうかは結石の大きさと位置によります。小さく且つ尿道口に近いほど介入なく排出される可能性は高いです。
一方で、尿路結石が自然に排出されない場合には結石の通過を促進するような薬を飲んだり、結石を粉砕するような手術を行うこともあります (参考文献 1,2) 。

また、疝痛発作が収まったからといって尿路結石が通過したとは限りません。そのため、結石が通過したかどうかを確認するためにはCTもしくは超音波検査を用いた画像検査が必要となります (参考文献 2) 。

尿路結石になりやすい人・予防の方法

尿路結石の罹患率は尿路結石がどこにできるかによって異なります。
尿路結石が上部尿路 (腎盂・尿管) にできる上部尿路結石症の年間罹患率 (1年間 で罹患した人の割合) は1960年頃に比べると2000年代には約3倍に増加しています。これは食生活の欧米化などが原因と言われています。
しかし、その後、2005年以降の年間罹患率は2015年の調査結果までほぼ変化がなく、近年は増加傾向が止まっています。

一方、尿路結石が下部尿路 (膀胱、尿道) にできる下部尿路結石症の年間罹患率は高齢化の影響により現在までずっと増加しています。特に高齢の女性において顕著に増えており、過去50年間で80歳代の女性では7.5倍増加しました。
対して20代~30代の若年層では男女ともに罹患率は減少傾向にあります (参考文献 4) 。

それでは、尿路結石を予防することはできるのでしょうか。
実は、尿路結石、中でもカルシウム含有結石の再発率は30~50%にもなり、再発を予防することが非常に重要となります(参考文献 1) 。そこでここでは、尿路結石の再発を予防するための一般的な方法を3つ紹介します(参考文献 4) 。

水分摂取

1日約2Lの尿が出るくらい、食事以外に1日2L以上の水を飲む

食事

バランスのとれた食事をとる

カルシウム摂取量を 1日 当たり 600~800mg にする

動物性たんぱく質の摂りすぎを避ける (体重 1㎏ あたり 1日1g になるように)

塩分の摂りすぎを避ける (男性 1日7.5g 未満、女性 1日6.5g 未満)

生活

肥満を予防する

適度な運動をする


参考文献

矢崎義雄 et al.「内科學第11版」(朝倉書店、2017年)1507-1508ページ

UpToDate. “Kidney stones in adults: Diagnosis and acute management of suspected nephrolithiasis” (Last updated: May 03, 2024)

UpToDate. “Kidney stones in adults: Prevention of recurrent kidney stones” (Last updated: Jul 23, 2024)

日本泌尿器科学会等「尿路結石症診療ガイドライン第3版」 (医学図書出版、2023年8月)