そうですね。すごく面白かったのが、デートを重ねるうちに彼が悩んでいる顔になって「希子はいい子だし、僕は本当にラッキーだけど、でもいい子だけではいてほしくない。もっと希子のありのままの姿を見たい。希子にだってエモーショナルな面もあるだろうし、僕に気遣ってそういう面を見せないようにしてくれるけれど、逆にそうすると僕も自分が出せなくなる。今まで悩んできたことや過去の恋愛、君の人生の物語を遠慮せず話してほしい」と言われて。

これまでの恋人には、例えば私が父親と母親の離婚で感じた葛藤だったり、過去の恋愛の話をしたら「ちょっと重すぎる」と言われてきたし、そんなことを言ったら嫌われるんだって思ってました。なので、知らない間に男の人といる時は“重くない女性”、いい子でいなきゃいけないというフォーマットができていたことに気づいて。それは衝撃的な体験でした。

その彼の発言からどんどん自分から悩みや過去の体験を話すようになると、話せば話すほどどんどん癒えていく。彼も重いと思わず、面白がってそういう話を聞いてくれるし、自分の体験を話してくれたり、寄り添ってくれて。女性としてでなく、一人の人間として見てくれている気がして救われました。

◆男性同士こそ「“女々しくて”いいから、吐き出して」

――そうした考え方は外国の方自体がそうなのか、彼氏が特別なのか。どちらでしょうか。

アメリカの方が日本より文化的にオープンマインドだとは思うんですけど、私の友達の彼氏もそう言うことに対してはオープンです。なのでどこの国出身と言うよりも本当に人だとは思います。

――水原さんみたいに人に抱えたものを言うことで楽になると言うのはありますよね。ただ日本人、特に日本の男性はそこが苦手な気もします。

日本の男の人って私は大変だと思うんです。「男たるもの」みたいな教育を、子供の時から気づかないレベルで受けてきているから、知らない間にそうなっちゃう。友達みんなとボートに乗ったことがあったんですけど、友達の子供がそこで転んだ時、そこにいた男性が男の子に対して「男だろう」って言ったんですよ。その時に「あっ、これを子供の頃からずっとされてると結構きついかも」と思って。「大丈夫?」とかじゃなく、男同士ってどこか突き放すような感じがあるじゃないですか。

そういう意味で孤独な男性ってすごく多いと思うんです。女性同士は感情で話せるけれど、男性が感情を話すことは許されてない感覚ってあるじゃないですか。女性って繊細だけどすごいタフな部分もあるし、強い。でも男性って私から見ると女性と同じですごい繊細だけど、感情的になることが許されていない。男性同士こそ、もう“女々しくて”いいから、感情を吐き出したり、自分の苦しみとか、悲しみを出してほしいなって思います。

水原希子

1990年、アメリカ生まれ。’03年に「ミスセブンティーン」に選ばれモデルデビュー。’10年には映画『ノルウェイの森』で俳優デビューも果たす。さらに現在は自然派コスメブランド「kiiks」のディレクターも務める。日仏合作映画『徒花-ADABANA-』は、延命のため特権階級だけがクローンを持てる世界が描かれ、水原は主人公の新次(井浦新)を担当する臨床心理士まほろ役を演じる

<撮影/鈴木大喜 取材・文/徳重龍徳 ヘアメイク/池田 奈穂 ©2024「徒花-ADABANA-」製作委員会/ DISSIDENZ>

【徳重龍徳】
大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年に外資ウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを多数担当。その後、某テレビ局のウェブメディアの編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆するほか、グラビア評論家としても活動している。Xアカウント:@tatsunoritoku YouTube:www.youtube.com/@gravurebanashi