「公立高校に受かったら”100万円と車”をあげる」…衝撃のセリフにすがちゃん最高No.1が思ったこと

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10月13日に放送された日本テレビ系列「人生で一番長かった日」に出演し、その壮絶な半生が話題となったお笑いトリオ「ぱーてぃーちゃん」のツッコミ担当・すがちゃん最高No.1。

Netflixによるコメディシリーズの最新作「トークサバイバー!ラスト・オブ・ラフ」でも確かな爪痕を残し、12歳で一人暮らしをすることになったという過去のほかにも、番組内では語られなかった個性的な家族とのエピソードが尽きず、度々メディアで注目を集めています。

【前回】に引き続き、すがちゃんの初エッセイ『中1、一人暮らし、意外とバレない』(ワニブックス刊)よりその壮絶な人生をご紹介します。

「一人暮らし」とバレないための試行錯誤

一人暮らしの生活が何年か続き、ずいぶん一人暮らしも板に付いてきたし、「一人暮らしじゃない感」を演出するのも様になってきた。

例えば、弁当だ。

その日はバドミントン部の日曜練習の日。俺はバドミントンに打ち込んだ。バレないように適度にサボったりもしつつ、適度に頑張った。

そして迎えた昼休み。普段は給食だが、今日は日曜のため皆、弁当持参。当然俺も弁当。朝早めに起きて自分で作った弁当だ。そんな弁当を開けて俺は友達の前で言う。

「うわ〜、インゲン入れんなって言ったじゃ〜ん」

自分で作った弁当に、自分でケチをつける俺。当然これも“一人暮らし”ということがバレないようにするための演出だ。

俺の作る弁当のテーマは「お母さんの手作りっぽいお弁当」。中にはなんと“インゲンの胡麻和え”が入っている。

中学生男子が自分で作る弁当に、自分で“インゲンの胡麻和え”を入れるとはよもや思うまい。

もちろんそれだけではない。ご飯にかかっているふりかけは、市販ののりたま的な色鮮やかなものではなく、渋く“ごま塩”。

そしてフライドポテトではなく“ふかし芋”。ずっと大好きなあの“味噌なす炒め”も入っている。どれもこれも中学生が好きな食べ物リストには入ってないラインナップ。

う〜ん完璧だ。完璧なる“お母さんの手作り弁当”だ。俺が作ったなんてバレるわけがない。

こうして完璧な「一人暮らしじゃない感」を演出しつつ、俺は中学生生活をそこそこ楽しんだ。

公立高校に入れたら、「100万円と車」

中学3年になったある時、かっちゃんがまあまあのお金持ちの人と結婚することになった。お相手は公務員の方。俺も数回会ったのだが、感じのいい、とても穏やかな人だった。

マサルおじさんというのだが、かっちゃんのことだけでなく、俺のこともずいぶんと気にかけてくれている。

そして、中学3年も半ばに差しかかった頃、本格的に進路を決めなければいけないタイミングがやってきた。

しかし……俺は一つ大きな問題にぶち当たっていた。

俺は、全くと言っていいほど、お勉強ができなかったのだ。

中学生の一人暮らしだ。勉強をしなくても、宿題をしなくても、朝まで漫画を読んでても、朝までゲームに明け暮れてても、誰にも注意されない。そんな環境で、中学生が勉強などするわけがない。

俺の今の学力でいけるところとなると、私立の高校になる。私立の高校に行くとなると、それなりの授業料がかかってしまう。

俺は一人で生きていく。そう決めて、今までかっちゃんにはなるべく頼らずに生きてきたつもりだ。仕送りはもらってたけど。

そんな山形の狼である俺が、勉強ができないという理由でかっちゃんを頼り、高い授業料を払ってもらうというのは、なんだかとてもダサい気がした。

しかし、勉強は全くする気にならん。でも勉強しないと学費の安い公立高校には行けない。ん〜。

と俺が悩ましく思っているところに、

ジリリリリン!

と、けたたましく家電の音が鳴り響く。また親父の借金の取り立てか、あるいは──

「もしもし直人! あんた高校受験どうするつもり⁉」

今回ばかりは借金取りでもよかったのだが、タイムリーにかっちゃんから電話がかかってきて、タイムリーに悩ましい話題を振ってくる。

かっちゃんは俺に公立の高校に入るよう迫ってきた。

理由は学費というわけではなく、単純に俺の将来を心配してのことだった。が、

俺はそんなかっちゃんに対していつも通り、

「大丈夫す」

「いや、何が大丈夫なのよ!」

ごもっとも。大丈夫ではない。

だって今のままじゃどう転んでも公立高校になんて行けないんだから。

「一人だからってこれ以上勉強サボるんだったらもう許さないからね! 仕送り

減らすから!」

ぐっ……! それだけは勘弁願いたい。

が、ここでへこへこ下手に出るわけにはいかない。山形の狼はそんなことでへこへこしない。だってダサいから!

とはいえ、打開策はない。俺が黙り込んでいると、かっちゃんに代わり電話に出たのは、マサルおじさんだった。

マサルおじさんは、

「じゃあ、もしかっちゃんが望む公立高校入れたら、100万円あげるよ」

は⁉

ひゃ、ひゃくまんえ⁉ ……え? マジで?

「で、高校卒業できたら、車買ってあげる」

……正気か? この金持ち。

「どうする……? 勉強、する?」

待て待て待て。

よく考えろ山形の狼。

俺は一人で生きていくと誓った男。大人に頼らず一人で生きてきた男。なのに授業料を頼るどころか、100万だの車だの、頼りに頼りまくってる提案を受け入れるなんて断じて──

「公立高校行きま〜す。勉強しま〜す」

思いとは裏腹に、自分でも驚くほどご機嫌な声が出た。

100万円と車のために猛勉強

こうして、100万円と車のために猛勉強する日々が始まった。受験まではもう日がない。必死で頑張らねば。

と思うが、ここで完全に一人暮らしの弊害が出た。やる気になるのは最初の10分かそこらで、あとはどうしてもサボってしまうのだ。

いやいや無理ですって。中学生一人で勉強とか。できる奴すごいって。漫画読んじゃうって。

勉強するためにテンション上げるって名目で『SLAM DUNK』読み返し始めたら気が付いたら海南大附属のあたりまで読んでるって。

いやいやいや! 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ! 100万円あったら何ができるよ⁉ ゲームソフト何本買えるよ⁉

今苦しめば、高校に入った時楽園が待っているんだ。頑張れ! やるんだ! 山形の狼!

俺はベタにおでこに鉢巻きを巻き、勉強に打ち込んだ。

バレないように適度にサボったりもしつつ、適度に頑張った。

そして冬になり、いよいよ高校受験が差し迫ってきた頃。ある衝撃的な出来事が、俺を襲う。

次の期末テストでかっちゃんが求める点数に達することができなかったら100万円の話はなし、とお達しが来たのだ。

かっちゃんの求める点数を取れるかどうかは微妙なラインだ。

このまま頑張れば届かない点数ではない。でも、決して簡単ではない。いい線引きをしてきやがる。

やるしかない。ここが頑張り時だ。俺は気合を入れるためにも家の近くのレンタル店・GEO(ゲオ)に向かった。

ゲームや漫画が大好きだった俺はゲオのヘビーユーザーだった。そんな俺の気合入れソングはORANGE RANGEだ。バドミントンの試合前もずっとORANGE RANGEを聴いていた。今回も俺に力を貸してくれORANGE RANGE。俺に勉強を頑張らせてくれORANGE RANGE。

と、俺はORANGE RANGEのアルバムを持ってレジへと向かった。

そこで俺は……運命的な出会いをしたのだ。

レジ横に置いてあったテレビ画面。そこに、とんでもないものが映し出されていた。

極道たちの戦い、女刑事との禁断の愛。

もはやCGとは思えないほどのクオリティー。

カッコよすぎる……!

俺はそこから一歩も動けなくなる。

『龍が如く2』のプロモーションビデオだった。

2006年12月7日発売……。

ダメだ。今これを買ったら確実に終わる。期末テストでかっちゃんの設けたボーダーを超えられる可能性は0になる。いやそれどころか公立高校に入学することも間違いなく──

発売日当日の朝、俺はゲオに並んでいた。

俺がその後私立高校に行ったことは言うまでもない。

『龍が如く2』が面白すぎた。

【第一回】「実の父親と一緒に女性をナンパ」して…12歳で1人暮らしの「壮絶人生」をすがちゃん最高No.1が語る では、1人暮らしに至るまでの経緯をお読みいただけます。

「実の父親と一緒に女性をナンパ」して…12歳で1人暮らしの「壮絶人生」をすがちゃん最高No.1が語る