持ち家か、賃貸か。多くの日本人が「持ち家」を選ぶ「当然の理由」

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年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。

10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。

持ち家か、賃貸か

多くの人の家計において、気になるのは、持ち家か賃貸かというテーマがある。

データからは、年齢を重ねるごとに、持ち家比率が上がり、60代では9割が家を保有することがわかっている。

〈持ち家比率は年齢が上がるにつれて上昇する。

34歳以下の年齢階層で51.1%であったものが、40代後半で80%、60代前半で90%を超える。そして、最終的には大半の家庭で家を保有するという選択をしていることがわかる。

データからは、持ち家比率が住宅購入適齢期といわれる30代や40代を過ぎても年齢とともに緩やかに上昇する様子が見受けられる。

40代後半で80.8%だった持ち家比率が60代後半で92.3%まで上昇するように、住宅購入の判断が遅すぎるということはない。

子育てがひと段落したのちに、身の丈に合った小さな住宅を購入するという選択も十分に合理的なのである。〉(『ほんとうの定年後』より)

60代の住宅ローン返済は1万円台

次に気になるのは、住宅ローンだろう。

〈住宅ローンの平均返済金額は、30代後半から40代前半の5万円程度をピークに下がっていく。

住宅ローンの支払金額は定年後の減少が著しく、60代前半は月1.6万円、60代後半が同1.1万円、70代以降は住宅ローンを返済している人はほとんどいない。

現在のシニア世代は住宅バブルの真っ只中に住宅を購入した人も多く含まれる。それでもなんとか住宅ローンは払い終えている人がほとんどなのである。〉(『ほんとうの定年後』より)

漠然とした不安を安心に変えるには

住宅ローンの支払額が、60代では1万円台、70代ではほとんどゼロとのことだった。多くの人は現役世代のうちに返済完了しているようだ。

〈高齢期に住宅ローンの支払いが少ない理由は、多くの人は住宅ローンの早期返済を行っており、現役時代に債務を返し終わるからである。

住宅金融支援機構「住宅ローン貸出動向調査」によれば、2019年度の住宅ローンの約定貸出期間は27.0年であるのに対し、完済債権の貸出後経過期間は16.0年であった。

近年は資産価格の高騰や金利の低下による影響などから、住宅ローンの返済期間は長くなる傾向にあるが、現状では多くの人が20年以内には借入金を返し終えていることがわかる。〉(『ほんとうの定年後』より)

60〜80歳を豊かで自由に過ごすために、どれくらいの支出がありそうなのか、どれほど稼げばいいのかを早めに把握しておくことが重要になるだろう。

データを知ることで、少しずつ漠然とした不安がなくなり、安心して長い老後を過ごすことができるはずだ。

つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。

多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体