法廷激震!警察が押収した「山健組組長」メモにあった「司」「高山」の文字の意味がヤバすぎる…ヒットマンが逮捕後に「六代目」の元に走った理由

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大幹部みずからなぜヒットマンに

「犯人ではありません」

法廷に響く声の主は、六代目山口組山健組組長の中田浩司被告だ。

事件は2019年8月21日、午後6時15分ころに兵庫県神戸市で起こった。六代目山口組・司忍組長の出身母体である弘道会の神戸連絡事務所前で、当時神戸山口組山健組に所属していた中田被告が弘道会のA組員にけん銃を発砲し、重傷を負わせた。

中田被告は神戸山口組山健組の組長で、若頭代行という最高幹部だった。事件から5年が経った。神戸地裁で開かれている殺人未遂、銃刀法違反容疑の裁判で、10月15日、検察は中田被告に対し、懲役20年を求刑した。中田被告はこの日も無罪主張で通した。

「対立する相手を襲撃するヒットマンや鉄砲玉になるのは、末端の組員だと相場が決まっている。ところが今回は、神戸山口組の大幹部が自らヒットマンとして走ったから、本当に驚いた」(捜査関係者)

対立する六代目山口組を、みずからヒットマンとして狙い、逮捕された前代未聞の襲撃事件だ。裁判の冒頭陳述によれば、中田被告はトカレフを6発発射し、そのうち5発を命中させ、A組員に重傷を追わせたというのだから、まさにプロのヒットマンの犯行だ。

論告求刑でも検察側は「至近距離からけん銃6発を発射し、うち5発を命中させたもので、強固な殺意に基づく執拗かつ残虐な犯行」と厳しく指摘した。

ところが中田被告は、冒頭のように全面的に容疑を否認している。

2015年8月、六代目山口組が分裂して、神戸山口組は結成された。いずれも暴力団対策法に基づき「特定抗争指定暴力団」と指定されている。「六代目」と「神戸」の抗争は、すでに9年にも及ぶが、この中田氏には不可解な動きがある。

山口組では三代目、田岡組長時代から山健組が最大の勢力だった。「山健にあらんずれば山口組にあらず」と言われるほど強大な力を持ってきた。山口組が2つに割れたのも、山健組だった井上邦雄組長が決断し神戸山口組を結成したためだ。中田被告も当初は井上組長についていった。

中田被告は井上組長から山健組を継承したが、逮捕後に神戸山口組を割って出て、六代目山口組に舞い戻ったのだ。これが大きな謎だった。

ところが、その一端が裁判で見えてきた。

組をあげて狙っていた?

10月11日の公判で検察側が明かしたのは、中田被告が大阪市内のパチンコ店で逮捕された時に所持していたリュックサックの中身だった。

iPhoneを含む複数の携帯電話とプリペイドカード。それだけではない。A4サイズの白い紙に書かれたメモを検察側は証拠として出した。

そのメモには、「司」「高山」という名前とともにその住所が記されていたという。

いうまでもない。六代目山口組のナンバーワン・司忍組長とナンバーツー・高山清司若頭の関係先を示すメモだ。裁判で証言に立った兵庫県警の警官は、法廷でこう語った。

「警察の組織犯罪対策にかかわる担当者に問い合わせ、司、高山の住所が六代目山口組のトップ、ナンバー2の関係先とわかった。メモは、中田被告が逮捕時は白い紙だったが、徹底的に調べた結果、指紋など(薬剤を使い)捜査したので今はピンク色に変色している」

このメモで何がわかったのか。

「中田被告は神戸山口組の最高幹部だったわけだから、井上組長の命令で、組をあげて2人を狙っていたんや。その裏付けになるメモであることがはっきりした。この事実が、事情聴取や裁判の公判前整理手続きで発覚してしまった。

中田被告は、抗争で劣勢の神戸山口組にいたままでは身の危険がある。そこで神戸山口組から六代目山口組に移籍を考えに至ったたと見ている」(前出・捜査関係者)

六代目山口組のトップ二人を狙っていたがそれもバレた以上、観念してその傘下に入ったということなのか。

いま裁判の争点は中田被告が犯人かどうか、その一点に絞られている。検察側の証拠は、犯行現場と中田被告の自宅を結ぶ、防犯カメラとその鑑定のみであり、直接的な証拠は存在しない。

この裁判員裁判が事件から5年も経過して始まったのはなぜか。中田被告の弁護人はその理由をこう明かす。

「検察側が膨大な防犯カメラの映像などを出してきたため、証拠の吟味に時間がかかった。ところがその証拠は鮮明とは決して言えない防犯カメラ映像のみで、決定的なものはない」

警察官20人が法廷にやってきて

検察側の主張では、中田被告は自宅から車で出発し、神戸市内の病院駐車場で白いスクーターに乗り換えた。その後、弘道会の神戸連絡事務所近くの駐車場で黒いバイクに乗りこみ、襲撃した。同じ経路で戻ったという。いずれも防犯カメラ映像だけが証拠だ。

法廷で映し出された映像を見ると、中田被告の容姿、服装は確かに本人には似ているが、顔が鮮明に映っているものはなく、本人とまで言い切れない印象だ。スクーターやバイクから中田被告の指紋、けん銃を発射した反応や痕跡の可能性があると報道されたが、法廷では証拠として提出されていない。

だが、先の捜査関係者はこう解説する。

「論告求刑にある通り、6発撃って5発命中というのはまさに、腕利きのプロ、暴力団の犯行だ。中田被告は弘道会に対してヒットマンとして結果を出したといえる。だが、メモが発覚すればその後は六代目山口組から追われる立場になることは明らかだった。

神戸山口組は組員が減り続け、今や30人ほどしかいない。そこに司組長、高山若頭の襲撃を計画していたことは、いずれメモからばれてしまうと考えてのだろう。

抗争は、当初から六代目山口組が神戸山口組に対して優勢だったのは誰もが認めるところだった。司組長、高山若頭へのメモが判明する前に移籍しないと命が危ないと考えたのではないか」

神戸地裁の法廷は、暴力団の襲撃を警戒してか、防弾の衝立が立てられる物々しい雰囲気だった。最前列の傍聴席は「着席禁止」と札が掲げられ、そして後方の傍聴席には「傍聴優先席」として兵庫県警の警官が20席ほどを占める。裁判所内は、制服の警官が警備にあたる厳戒態勢だった。

裁判長がわざわざ「皆さんには、警備のことで不自由をかけて申し訳ない」と傍聴者に断りを入れるほどだった。

通常、暴力団の事件では検察側の求刑通りの判決となるケースが少なくない。だが静岡地裁で袴田事件の「無罪」が言い渡され、確定したことも影響しているのか。裁判長は「裁判所もきちんと判決をしなければならない」と検察側の立証に異例の苦言を呈することもあった。それほど、裁判員裁判で裁かれるこの事件に証拠が「薄い」ことを如実に示している。

注目の被告人質問では、検察側は中田被告に「あなたがメモを書いたのか」と訊ねたが、中田被告は「黙秘権を行使します」と語るだけだった。

判決は10月31日に言い渡される。

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