海自イベントでマヒマヒ丼を販売するカフェ「hana」の張本智子さん(左)(京都府舞鶴市で)

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ポイントは食材の「低利用魚」

 海上自衛隊が基地を置く京都府舞鶴市で、「まいづる海自カレー」に次ぐ新たなご当地メニューが誕生した。

 その名は「舞鶴艦めしーふーど」。消費市場で「低利用魚」と位置づけられる大型魚のシイラとトビウオを食材に、地産地消と観光振興の両輪を回す名物グルメにすることを狙う。(佐々木康之)

 9月22日、海自舞鶴基地で行われた「オータムフェスタ」。海自カレーの出店が並ぶ一角で、市内のカフェ「hana」の張本智子さんが来場者に声をかける。「護衛艦ひゅうが マヒマヒ丼」の売り込みだ。

 マヒマヒ丼は、魚のフライとたっぷりの野菜をご飯にのせた一品。店によってはタルタルソースを添えるが、張本さんの丼は温泉卵と甘酢がアクセントで、この日はイベント向けに用意した150食が完売した。

 フライの素材はシイラ。平らで頭でっかちな魚体が金色に輝き、大人が両腕で抱えるほどの大きな魚だ。

 「マヒマヒ」は米ハワイ州でのシイラの呼び名で、現地では高級魚の一つ。張本さんは30年前、ハワイの水族館でその個性的な見た目に驚いたが、レストランでバターソテーを食べた時、率直に「おいしい」と思ったという。

 「舞鶴艦めしーふーど」は、海自の舞鶴2部隊発祥のメニュー3種を指す。舞鶴商工会議所が新たな名物にしようと観光客らにアピールしており、現在は13店で味わうことができる。

 マヒマヒ丼と、トビウオを使った「第23航空隊 飛魚フライバーガー」を考案したのは、艦艇への食料補給も任務とする舞鶴造修補給所。シイラが材料の「第4術科学校 フィッシュコロッケ」は、海自の調理担当者を育成する第4術科学校が開発した。「コロッケはシイラ特有のパサパサ感をなくすため、タルタルソースを具に練り込んだ」(同学校教官の竹下豪紀・3等海曹)。どれも工夫が凝らされた逸品だ。

 新メニューの誕生には国際情勢が絡んでいる。中国による日本産水産物の全面禁輸をきっかけに、海自は昨年9月から「消費拡大に貢献したい」と艦艇や部隊の食事に水産物を積極的にとり入れた。禁輸は解かれることになったが、当初からこの取り組みに目をつけていたのが舞鶴商議所。直後の10月、「これらのメニューが街中で食べられるのは、舞鶴だけ」を旗印に、第4術科学校と舞鶴造修補給所の地元2部隊にレシピの開発を依頼した。

 商議所の念頭にあったのが、舞鶴沖で獲物を選べない定置網にかかるシイラ。府海洋センターによると、府北部沖での漁獲量はここ数年200〜300トンで推移し、昨年は約560トンとかつてない大漁だった。

 市場で競りに臨む仲買人が集まる「舞鶴水産流通協同組合」(長崎寿夫理事長)によると、多くは冷凍され、東南アジアへ輸出される。円安効果も相まって需要が増え、取引価格はかつての4、5倍に跳ね上がる好況という。

 一方、国内ではいまだに低利用魚の位置づけで、昔ながらの舞鶴の料理店でシイラを品書きに載せる店は少ない。「あまり魚を食べない若い人にも、食べやすく」をコンセプトに新グルメとして定着すれば、低利用魚の消費に寄与し、観光振興も図れる。

 商議所は11月30日まで、「舞鶴艦めしーふーど」のキャンペーンを展開中で、3店舗で対象メニューを食べると抽選でオリジナルキャップやマグカップが当たるスタンプラリーが目玉だ。

 「低利用魚だからこそ、安定供給が可能。その利点を生かし、地産地消と観光振興につなげる」。小西剛会頭は力強く語る。