後頭神経痛

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監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

後頭神経痛の概要

後頭神経痛は、頭の後ろ側に位置する後頭神経が圧迫されることで生じる鋭い痛みを特徴とする病気です。
この痛みは後頭部から首にかけての範囲で感じられ、時には電気が走るような感覚や焼けるような痛みを伴います。後頭神経痛は突発的に現れることが多く、痛みの強さや持続時間は個人によって異なります。脳腫瘍やくも膜下出血、感染症など、他の病気が潜んでいる可能性もあるため、早期の診断と適切な治療が必要です。

後頭神経痛の原因

後頭神経痛の主な原因は、神経の圧迫や刺激によるものです。後頭神経は、首の上部から頭皮に向かって走行しており、これが周囲の筋肉や靭帯によって圧迫されると痛みが生じます。

後頭神経が圧迫される主な要因には、以下のようなものがあります。

・長時間の不良姿勢による血管の圧迫
・首の過度の緊張
・外傷や事故による首の損傷
・頭や首の手術
・感染症(帯状疱疹、単純ヘルペス)
・首の骨の異常(関節リウマチ、変形性頚椎症)
・肩こり
・緊張型頭痛

他にも、糖尿病やその他の全身性疾患が神経痛を引き起こすこともあります。

後頭神経痛の前兆や初期症状について

後頭神経痛の初期症状は、頭の後ろ側に突然現れる鋭い痛みです。この痛みは、一瞬の電気ショックのような感覚や焼けるような痛みとして感じられることが多く、頭皮や首の後ろ側に集中します。時には耳の後ろや目の周りにも放散することがあり、髪をとかす、頭皮を触る、枕に頭を置くといった日常的な動作で痛みが誘発され、患者さんは強い不快感を抱くことが多いです。

また、後頭神経痛は片側性であることが多いですが、両側に現れることもあります。痛みの持続時間は数秒から数分程度であることが多く、反復的に痛みが現れることが特徴です。

後頭神経痛は日常的な動作によって痛みが引き起こされるため、生活の質に関わります。脳腫瘍やくも膜下出血、感染症などの合併症が隠れている可能性もあるため、脳神経内科や脳神経外科の診断を受けることが推奨されます。

後頭神経痛の検査・診断

ここでは、後頭神経痛に関する検査・診断について解説します。

診察

後頭神経痛の診断には、詳細な病歴聴取と体の状態を把握するための診察が重要です。医師は、首や頭皮を触診し、痛みの有無や部位、持続時間、誘発因子などを確認します。また、神経学的検査を行い、運動機能や感覚機能、歩行能力などの神経の機能を評価します。

画像診断

画像診断では、後頭神経痛の原因となる病変を特定することが可能です。X線検査やMRI、CTスキャンを用いて、脊椎の異常や椎間板ヘルニア、腫瘍などの有無を確認します。特に、腫瘍や炎症が疑われる場合には、詳細な画像診断が必要です。

神経ブロック注射

神経ブロック注射を診断的に使用することもあります。局所麻酔薬を後頭神経に注射し、痛みが緩和されるかどうかを確認します。痛みが軽減されれば、後頭神経痛の可能性が高まるでしょう。この方法は、診断と同時に治療効果も得られるため、有用な手段です。

これらの症状がみられた場合、脳神経外科、脳神経内科を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

後頭神経痛の治療

後頭神経痛の治療は、痛みの軽減と原因の除去を目指して行われます。

薬物療法

鎮痛薬や消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、痛みと炎症を抑えるために使用されます。よく使用されるのは、アセトアミノフェンやイブプロフェンです。痛みが強い場合や慢性的な場合には、抗てんかん薬や抗うつ薬など、神経の痛みを軽減する作用のある薬を使用することもあります。

物理療法

物理療法も有効な治療法の一つです。理学療法士による指導のもと、首や肩の筋肉をほぐすストレッチやマッサージが行われます。これにより、筋肉の緊張を和らげ、神経への圧迫を軽減できます。また、温熱療法や冷却療法、電気刺激療法なども痛みの緩和に役立ちます。

神経ブロック注射

神経ブロック注射も、後頭神経痛の治療として有効です。局所麻酔薬やステロイド薬を後頭神経に注射し、痛みを緩和します。痛みが長期間続く場合や、他の治療法が効果を示さない場合には、外科的手術が検討されることもあります。

後頭神経痛になりやすい人・予防方法

後頭神経痛になりやすい人には、いくつかの共通点があります。長時間の不良姿勢やデスクワークが多い人、首や肩の筋肉が緊張しやすい人はリスクが高くなります。特に、スマートフォンやパソコンを長時間使用する人は注意が必要です。また、首の外傷や過度のストレス、疲労が蓄積している人も後頭神経痛を発症しやすい傾向があります。

後頭神経痛の予防(運動)

適度な運動を取り入れることも後頭神経痛の予防に役立ちます。ウォーキングや水泳、ヨガなどの全身運動は、筋力の強化や柔軟性の向上に効果的です。これにより、筋肉の緊張を緩和し、神経の圧迫を防ぐことができます。

後頭神経痛の予防(認知行動療法)

認知行動療法とは、患者さんの行動や感情に影響を及ぼしている偏った認識(認知の歪み)を解きほぐしていく慢性疼痛の治療に効果的な手法です。認知行動療法単独での治療でも一定の効果が期待できますが、他の治療(コーピングテクニックや認知疼痛コントロール、運動など)と組み合わせることでより高い効果が期待できます。

後頭神経痛の予防(体重管理)

過体重や肥満は、首や肩に負担をかけ、神経の圧迫を引き起こす可能性があります。バランスの取れた食事と定期的な運動を心がけ、健康的な体重を維持することが推奨されます。

後頭神経痛の予防(健康診断)

定期的に健康診断を受けることも予防の一環として重要です。特に、既往歴や家族歴に神経疾患がある場合は、早期に異常を発見することが推奨されます。初期症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてください。


関連する病気

脳腫瘍くも膜下出血帯状疱疹

単純ヘルペス

関節リウマチ

変形性頚椎症

参考文献

福岡大学医学部脳神経外科

慢性疼痛治療ガイドライン