3000人以上を殺傷したヒズボラへの「ポケベル爆弾攻撃」がヤバすぎる!一斉に鳴り出し、5秒後に突然爆発...イスラエルが見せつけた「驚きの手口」

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ポケベル、トランシーバーの爆発

中東のレバノンで、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーらが所持していたポケベルやトランシーバーが次々と爆発し、周辺にいた人たちを含め多数の死傷者が出るという事件が起こった。

その後もイスラエルはヒズボラへの攻撃の手を緩めず、9月23日にはレバノン各地で1600カ所を標的にした大規模な空爆を実施し、9月27日にはヒズボラの本部の空爆も行った。

こうした事態を受けて、中東で全面戦争が起こるかもしれないとの懸念が広がっている。

しかし恐らくそういう事態に発展することはなく、イスラエルの一方的な勝利で終わると見るのが妥当だと私は考えている。

イスラエルが強気でヒズボラ攻勢を強めているのは、その自信がイスラエルにはあるからだ。

2回の爆発で37人の死者

ところで、ヒズボラが通信手段としてポケベルとかトランシーバーを使っていたと聞いて、随分とローテクなものを使っているんだなと、不思議に思った人もいるだろう。スマホを使った方がずっと便利じゃないかといえばそのとおりだが、スマホに頼るわけにはいかない事情がある。スマホだと電源をいれれば、位置を簡単に特定できてしまう上に、通信内容も傍受されやすいからだ。

こうしたことを避けるために、あえて一昔前のローテクなものを使うようにしたわけだ。

爆発の1回目は2024年9月17日で、ヒズボラのメンバーらが持っていたポケベルがメッセージを受信して一斉に鳴り出し、その5秒後に突然爆発した。5秒というのは、ポケベルが鳴って通信内容を確認しようとして顔に近づける時間を計算に入れ、「最大効果」を発揮するのがこのタイミングだと考えたからのようだ。

これにより、12人が死亡し約2700人が負傷したと報じられた。中には、鳴り出した卓上のポケベルを取って父親に渡そうとした9歳の女の子が爆発で死亡したケースもあったようだ。

爆発の2回目は翌9月18日で、今度は無線で会話ができるトランシーバーが爆発し、20人が死亡、約450人が負傷したと報じられた。

その後両爆発での死者は合わせて37人に達した模様だ。

イスラエルの様々な手口

ポケベルは台湾のメーカーのもの、トランシーバーは日本のメーカーのものだが、台湾のメーカーも日本のメーカーも爆発には無関係だと主張している。

流通段階のどこかでマルウェアと爆発物が仕掛けられ、マルウェアに信号が送られたと見られている。マルウェアだけでリチウムイオンバッテリーを暴走させたという説もある。

どちらにせよ、仕掛けを行ったのは、報道されているとおり、イスラエルであるのは間違いないだろう。

多数の通信機器を同時に爆破させるには、高度な技術力が必要だ。これを持っていて、現在ヒズボラ攻撃を行おうとするのはイスラエルしかない。

また過去にもイスラエルは敵対勢力に物品を送って、これによる殺害をたびたび実行してきたと見られている。

例えば、様々なテロ事件を引き起こした日本赤軍を暖かく迎えたことで知られるパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の指導者のワディ・ハダドは、イスラエル側が仕掛けた毒入り歯磨きを毎日使用する中で、体内に毒物がどんどん溜まっていき、それが原因で1978年に亡き者にされたと言われている。

普段使っている歯磨き粉の銘柄と見た目は全く同じ毒入り歯磨き粉を用意し、タイミングを見計らってすり替えたのではないかという。

またイスラエルの諜報機関のシン・ベト(イスラエル総保安庁)は、1996年に携帯電話を起爆させて、ハマスの幹部であるヤヒヤ・アヤシュを殺害している。アヤシュが携帯電話で通話中であることを確認して、そのタイミングで携帯電話を爆破した。

アヤシュはハマスの爆弾製造の専門家で、ハマスの行う自爆テロの手法を発展させた人物であり、イスラエルにとっては最大級の危険人物だった。

こうした過去の手口との類似から、今回についてもイスラエルが行った可能性は高いとされる。

そもそもイスラエルがやったことが当然疑われるこの攻撃について、イスラエルは否定も肯定もしない立場を貫いている。当然疑われるのに否定していない以上、イスラエルがやったとみなしてよいのではないか。

イラン、ヒズボラ、ハマスに報復は無理

さて、ヒズボラはイスラエルと敵対しているハマスを支援しており、今回のイスラエルによるガザ地区への攻撃に対して強く反発し、イスラエルにロケット攻撃をたびたび仕掛けてきていた。

ハマスとヒズボラの背後にはイランが控えていて、イランからの様々な援助を受けて、ハマスとヒズボラは活動を続けてきた。

イスラエルはイランが賓客として招いたハマス最高幹部のイスマイル・ハニヤ政治局長を、イラン滞在中に亡き者にし、イランのメンツを丸つぶれにした。これにより、イランの現体制に不満を持ち、イスラエルに協力する国内勢力がイラン国内にいることが露呈した。イランはまた、イスラエルの高度な技術力・諜報力に驚愕したのも間違いない。口先ではイスラエルへの報復を誓いながらも、イランはその後イスラエルに対して何もできない状態が続いてきた。

この状況に安心したイスラエルは、ヒズボラを徹底的に叩く動きに出たと見ればいい。いくらヒズボラを叩いても、イランが出てくる心配は事実上ないだろう。

ヒズボラの最高指導者のナスララ師は、「敵は超えてはならない一線をすべて超えた」として、イスラエルに対する報復を宣言したが、私はイラン同様に、大したことは何もできないのではないかと見ている。

ヒズボラ内部で幹部への不信高まる

そもそもヒズボラは、今回のイスラエルのものと見られる通信機器への攻撃で、多くの幹部級の戦闘員が亡くなったり怪我を負ったりしている状態だ。ヒズボラの戦闘力は大きく低下したはずだ。

また、通信機器を使うことへの恐怖心をヒズボラのメンバーに与え、戦闘員同士の通信に大きな支障が出たのも間違いない。仮に今後新たにポケベルが支給されようとしても、戦闘員たちは素直に受け取れないだろう。今度はマルウェアが仕込まれていないという絶対的な保証などないからだ。通信手段が確保できなければ、ヒズボラからイスラエルへの本格的な報復は事実上できなくなったと見ればいいだろう。

さらに、イスラエルが仕込みをやった通信機器を、それとは知らず戦闘員たちに配布していたヒズボラの幹部たちへの不信感も、当然大きく高まっているはずだ。

そもそも、ポケベルやトランシーバーに爆発物を仕掛けることができたのは、こうしたものをヒズボラが戦闘員に配布することを、イスラエルが事前に掴んでいたことを示している。

ひょっとしたら、イスラエルの工作員が「スマホでは位置もバレるし、盗聴のおそれも高いから、ローテクのポケベルやトランシーバーにした方がいいんじゃないですか」なんて進言して、ナスララ師らヒズボラの幹部たちがこれをいい提案だと承認したことすら考えられる。実際にどうだったのかはわからないが、いずれにせよ、ヒズボラの情報がイスラエル側にダダ漏れ状態で漏れているのは間違いない。

実際、これらの爆発事件が起こった後の9月20日に、イスラエルはレバノンの首都・ベイルートを空爆してヒズボラ幹部の殺害に成功している。殺された中には、ヒズボラの精鋭部隊「ラドワン部隊」のアキル司令官を含む、複数のヒズボラの幹部たちが含まれていると報じられた。

レバノン保健省によると、死者は少なくとも31人に上るとのことだ。このうちの何人がヒズボラの幹部なのかはわからないが、かなり多いと見られている。ポケベルを使っての通信ができないために、ヒズボラの幹部たちはわざわざ集まってミーティングせざるをえなくなった。このタイミングを狙った攻撃であるのは間違いない。これは、ヒズボラの内部情報がイスラエル側に漏れまくりであることを示している。

但し、この時にヒズボラの幹部たちが集まっていたのは、民間の集合住宅の地下なので、民間人の死傷者もかなり出ているのも間違いない。

見せつけた力の差、ナスララ師をついに排除

イスラエル軍はその後ヒズボラへの空爆をエスカレートさせ、23日にはレバノン各地で1600カ所を標的にした大規模な空爆を実施した。これにより、ヒズボラが所有するロケット弾数千発が破壊されたと、イスラエルは発表している。レバノン政府は、犠牲者は子ども50人を含む550人以上に達したとして、イスラエルを強く非難した。

9月27日には、イスラエルはレバノン南部にあるヒズボラのロケット弾の発射台や武器庫などに加え、さらにヒズボラ本部までをも空爆した。これにより、ヒズボラ最高指導者のナスララ師排除に成功した。イスラエルは2006年のレバノン侵攻の際に、ヒズボラの兵力を温存した決着を求められたことが、その後のイスラエルの安全保障に重大な脅威をもたらしたと認識しており、今回は世界が何を言おうが、ヒズボラの完全解体を目指すのであろう。

イスラエル側による容赦ないヒズボラへの攻撃により、中東がいっきに不安定化することへの懸念が、マスメディアでは報じられているが、それはありえないと見ていいと思う。

すでに見たように、ヒズボラの幹部クラスの多くが一気に死傷した。有効な通信手段が失われた。イスラエルとヒズボラの圧倒的な技術力の差、諜報力の差がここまで明らかになった。ヒズボラ内部で幹部への不信感が否応なく高まってもいる。この中でヒズボラの側にイスラエルに対する効果的な対抗手段が取れる余地はないと見るべきだ。

イランが大人しくなったように、ヒズボラも大人しくならざるをえないのではないか。

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