とんかつ激戦区・表参道の新星など、注目の14店〈大木淳夫の9月の新店アドレス〉

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グルメ本編集長として数々の名店を訪れる大木淳夫さん。毎月たくさんの飲食店がオープンする中で、大木さんが「これは!」と思った新店をずらりと紹介します。


教えてくれた人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。「東京最高のレストラン2024」が発売中。

東京初進出の進化系そばと最新調理器具を活用したラーメン

京都のおしゃれ立ち食いそばが東京初進出

9月6日、渋谷にオープンした立ち食いそば「SUBA VS」は、京都で2021年にオープンし進化系そばとして大人気となった「すば」の東京初進出店です。コンクリート打ちっぱなしで、直方体の箱形テーブルが2つ。本店と同じデザイナーの手による内装は一見の価値ありです。

そして2階にはこちらも人気の「ウィルトス」によるワインショップとバーを併設しています。常時48種類以上がラインアップされるワインディスペンサーは550円均一(量はボトルの値段によって25ml、40ml、50ml)。こちらを買って1階でそばと楽しむこともできます。

有名な「酢橘無花果」をいただきましたが、うまみ、酸味、甘みのバランスが気持ちよく、堪能しました。他にも東京限定の「とり天 毛沢東スパイス」や「バラ海苔花巻 生わさび」「島根県産宍道湖しじみと青マンダリンオイル」など、オーダーしたくなるそばが並ぶので、たっぷり悩んでください。

「酢橘無花果」 撮影:大木淳夫

<店舗情報>
◆SUBA VS
住所 : 東京都渋谷区渋谷1-15-8 宮益ONビル 1F
TEL : 不明の為情報お待ちしております

調理器の進化で、新たな味に出会う

同じく渋谷で8月19日にオープンしたラーメン店「サーモンnoodle3.0 DFJ 渋⾕LAB店」は、フレンチラーメンを展開する縁petit(株)が、(株)ドクターフライジャパンと提携して運営しています。ドクターフライ社の「Dr.Fry 2s」という特殊な分子調理器を使って、フレンチ出身のシェフがサーモンのうまみを余すところなく引き出して一杯にする、という試み。

サーモンの骨や皮、内臓まで調理したというスープは口に含んだ瞬間に特有の旨味を確かに感じ、さらに同じDr.Fry 2sを活用したフリットやチャーシューも入り、飽きさせない構成に。調理器具の進化はとどまるところを知りませんね。

「フレンチサーモン」  出典:デイルス・マイビスさん

<店舗情報>
◆サーモンnoodle3.0 DFJ
住所 : 東京都渋谷区渋谷2-15-1 渋谷クロスタワー 1F
TEL : 不明の為情報お待ちしております

和の鉄人監修のとんかつは表参道で、鎌倉ではあのグレリパがフリーフローで

とんかつ激戦区に新星

9月6日、外苑前にオープンした「とんかつ じゅんちゃん」は、“和のアイアンシェフ”である「くろぎ」黒木純さんが監修しています。「THE AOYAMA GRAND HOTEL」4階の和食店「SHIKAKU」を、ランチタイムだけとんかつ店に。「まい泉」「七井戸」「とんかつ ここまでやるか。」「tonkatsu.jp」など、新旧の人気店が並ぶ激戦区に大物が参入です。

2,700円の「ロース御膳」は、群馬県産の坂東もち豚を2度揚げ。塩はもちろんですが、敢えて薄めにした大根おろし入りのウスターソースにたっぷりつけて食べると素晴らしく合います。おかわり自由のご飯は、粒が大きい岐阜の「龍の瞳」。大葉の入ったキャベツ、とんかつのソースとしても使える黄身入りのサラサラカレーの小鉢、先付で供される出汁巻たまごなど、さすがの充実ぶりでした。予約もできるので、ちょっぴり贅沢したい時にもいいでしょう。

「ロース御膳」 写真:お店から

<店舗情報>
◆とんかつ じゅんちゃん
住所 : 東京都港区北青山2-14-4 THE AOYAMA GRAND HOTEL 4F
TEL : 050-5594-3206

小旅行を兼ねて味わいに行きたい料理とワイン

8月8日、鎌倉にイタリアン「GRAPEREPUBLICINC. VINERIA SALONE(グレープリパブリック ヴィネリア サローネ)」がオープンしました。グレープリパブリックは2018年に初リリースをするや、大人気を博した山形県のナチュラルワイン。海外での人気も高く、日本で5番目の輸出量を誇ります。

こちらはそのワインの魅力を存分に楽しめるイタリアンで、運営は同系列のサローネグループ。個性的な店舗を展開するイタリア料理界の一大勢力です。料理はグループ6店舗のシェフが考案した、グレープリパブリックに合う魅力的なメニューが並びます。なんといってもおすすめは4,950円のフリーフローでしょう。都心から1時間ほどの鎌倉で、小旅行気分を味わいながら気兼ねなく人気ワインが飲めるのは最高の気分です。

「なかやま牧場高原黒牛ランプのローストとズッキーニのとろとろ焼き」 撮影:松園多聞

<店舗情報>
◆GRAPEREPUBLICINC. VINERIA SALONE
住所 : 神奈川県鎌倉市小町2-6-28
TEL : 050-5594-2569

富ヶ谷と幡ヶ谷には心も安らぐビストロがオープン

早くも富ヶ谷の街になじむ新店

8月27日、 富ヶ谷にオープンしたビストロ「料理店 吉田」は、もともと入谷にあったお店が、再開発のためこちらに移転してきました。まるで違うエリアへの引っ越しにもかかわらず、私が訪れた日は入谷時代の常連さんが多数。それだけ愛される理由は、なにより店主ご夫妻のお人柄でしょう。シェフもソムリエの奥様も丁寧で誠実そのもの。赤いギンガムチェックのクロスがかかるテーブル、木目基調の店内という、古き良きビストロの雰囲気とも相まって、素晴らしい居心地です。

ビストロ料理中心ですが、どれも味のポイントがぶれていません。特に「牛舌の煮込みと季節野菜」は名物と謳うだけあって、野菜も多彩で充実の一皿。こちらでも新たな常連をつかめそうです。

「牛舌の煮込みと季節野菜」  写真:お店から

<店舗情報>
◆料理店 吉田
住所 : 東京都渋谷区富ヶ谷1-14-12 YTビル代々木公園 1F
TEL : 050-5594-2622

「イートリップ」のシェフが作った新たな場

7月17日、幡ヶ谷には「ripen(ライペン)」がオープンしました。店主は、抜群のセンスで有名な原宿「イートリップ」、代々木上原「入(イリ)」でシェフだった白石貴之さん。こちらの店内はカウンター8席ながら、後ろのスペースまでゆったりと広く、全体のトーンは落ち着いていて、心が休まります。

おすすめは5,500円5品のコースをオーダーして、足りなければアラカルトから選ぶという流れ。最近日本料理界などで注目を集めるスタイルですが、フレンチでも広がりそうです。穏やかなシェフと野菜中心の体に優しい料理。となると、何故か安心してワインが進んでしまうから不思議です。

「渋谷・チーズスタンドで作られたモッツァレラチーズと生ハム」 撮影:大木淳夫

<店舗情報>
◆ripen
住所 : 東京都渋谷区西原2-32-11 Park Sakura House 1F
TEL : 03-4500-0350

生き残りをかけた焼肉の味付け合戦

味付けは塩オンリー

8月26日、五反田にオープンした「塩焼肉あぐら」は店名通り、味付けは塩一択という潔いお店です。もちろん飽きないように、部位ごとにニンニクやソースなどをブレンドしてアクセントをつけています。付け合わせでガリが出てくるのですが、この相性も抜群。そして基本のコンセプトが“ビールとご飯に合う焼肉”なので、濃いめの味付けになっています。カウンターのみなので、ひとり焼肉もいいかもしれません。

ビールはぜひサッポロの瓶を。凍るギリギリ、−5℃で冷やしているので最初の一口は目の覚めるような冷たさ。そこから徐々に落ち着いてきて、温度変化でビールのうまさを実感できます。

「塩タン」  出典:五反田タロウさん

<店舗情報>
◆塩焼肉あぐら
住所 : 東京都品川区西五反田1-27-7 VORT五反田 1F
TEL : 050-5594-3128

あふれるオリジナリティで早くも人気店に

渋谷には7月10日、「京焼肉 京之介」がオープンしました。おすすめの「出汁ロース」は、表裏5秒ずつ焼いたロースに温めた出汁をかけて食べるというもの。他にもとろろ入りの出汁にからめて食べる「京之介焼き」や「上ミノアヒージョ」など、工夫を凝らしたメニューが並びます。席は全て個室、もしくは半個室。

渋谷はカジュアルな焼肉の激戦区でもあるので、ニーズを満足させつつ、オリジナリティを突き詰めなくてはならないので大変です。こちらはそのポイントを押さえているからか、女性を中心に賑わっていました。

「京之介焼き」  写真:お店から

<店舗情報>
◆京焼肉 京之介
住所 : 東京都渋谷区道玄坂2-25-10 ベニー清建ビル 2F
TEL : 050-5594-2387

気軽にお酒と楽しめる本格スペイン料理&中華

さながらサンセバスチャンのバルのよう

7月25日、恵比寿のビール坂にオープンしたのはスペイン料理店「LA BRETXA(ラブレチャ)」です。美食の街として有名なスペイン・サンセバスチャンをイメージしていて、まさに雰囲気はスペインのバル。

オーナーがスペイン・パエリア協会公認の「パエリア師」で、中目黒「スペイン料理Pablo」などを経営する由利拓也さんだけに、パエリアは必食でしょう。「窯で軽く炙った赤海老のパエリア」をいただきましたが、レア気味の海老とのコントラストが絶妙で納得のおいしさ。個人的にはフライドポテトと生ハム、目玉焼きをガシッと絡めて食べる「エストレジャードス」がたまりませんでした。

「窯で軽く炙った赤海老のパエリア」  出典:おさけとぐるめさん

<店舗情報>
◆LA BRETXA
住所 : 東京都渋谷区恵比寿4-10-8 エビスビル 1F
TEL : 03-5422-7406

麻婆好きは注目!

8月28日、 明大前にオープンした中華「麻婆STAND明大前」は、高井戸の人気店「高井戸麻婆Table」の姉妹店です。線路沿いの人通りの少なそうな小道にあり、手作り感満載の店内は簡素。一瞬心配になりますが、スタンドと名乗るだけあって、テイクアウトは単品からお弁当まで充実。ランチで訪れて汁なしの麻婆麺をいただきましたが、追い飯も付いてきて大満足でした。

そして恐らくこちら、夜も楽しいのではと。お酒のメニューがたっぷりあり、メンマ辣油、水餃子、麻辣フライドポテトなどおつまみもおいしそう。最近いい店が増えてきた明大前ですが、新たな注目店が加わりました。

「麻婆麺」と追い飯 撮影:大木淳夫

<店舗情報>
◆麻婆STAND 明大前
住所 : 東京都世田谷区松原1-41-6 アベリア明大前 1F
TEL : 03-6379-2199

渋谷には今月も注目のビストロとバルがオープン

使い勝手の良いビストロがまた一つ渋谷に

9月1日 、渋谷・百軒店商店街の奥にはビストロ「道玄坂 バンバン」がオープンしました。人気の「かしわビストロバンバン」「リゾットカレースタンダード」の姉妹店だけに、魅力的な店造りはお手のもの。場所からして隠れ家っぽいのですが、今までの店より少しターゲットの年齢層を上げて、照明を抑えた店内は落ち着いた雰囲気が漂います。

メニューは「名物」と書かれた「北海道産炙りホタテとたっぷりいくらの海の幸リゾット」やアンチョビトマトソースを敷いて、チーズをたっぷりすりかけた手羽先餃子など、なじみの料理にひと工夫を加えたものが多く、締めにはおなじみ「リゾットカレー」も。ニーズが高そうです。

「北海道産炙りホタテとたっぷりいくらの海の幸リゾット」  写真:お店から

<店舗情報>
◆道玄坂 バンバン
住所 : 東京都渋谷区道玄坂2-20-9 リアライズ道玄坂ビル 2F
TEL : 050-5593-6587

気の利いた料理を、カジュアルなワインとともに

8月17日、渋谷のさらに奥、駅としては神泉の方が近い路地には、イタリアンワインバル「ANDs.」がオープンしました。カウンター10席と4人掛けテーブルが2卓。入口付近では立ち飲みもできます。こちらはメンバーが面白い。税理士のオーナー、シェフ、モデルとしても活躍するサービスの3人は、かつて原宿にあった有名店で共に働いた仲。8年の時を経て再び集結しました。いい話です。

黒板のおすすめ料理は魅力的で、山のようにシラスがかかったペペロンチーノや、なかやま牛のグラタンバーグ、鹿肉と猪のソーセージなどお酒を呼ぶメニューが並びます。あえてナチュラルにはこだわらず、カジュアルな値段を心がけたワインが揃っているので、安心してがぶ飲みしてください。

「しらすと香味野菜のペペロンチーノ」 撮影:大木淳夫

<店舗情報>
◆ANDs.
住所 : 東京都渋谷区円山町15-6
TEL : 050-5594-2582

相変わらず元気なおにぎりと韓国料理

あの「峠の釜めし」がおにぎりに!?

8月8日、笹塚駅直結の「京王クラウン街笹塚」にオープンした「おこめ茶屋 米米(めめ)」は、駅弁「峠の釜めし」で有名な「荻野屋」の新業態のおにぎり屋さんです。特徴はなんといっても、あの茶めしをおにぎりにしていること。これでおいしくないわけがありません。

“駅弁おむすび”の「めめセット」は茶めしと信州味噌のおにぎりに唐揚げ、たくあん、卵焼き、杏がついて食べ応え十分。「秘伝だしの昆布」「炙り鮭」なども具がたっぷりで、激戦のおにぎりジャンルを勝ち抜けそうな味でした。早くも人気で18時ごろには売り切れてしまうようです。イートインでは「峠の釜皿定食」という、これまたそそられるメニューが用意されています。

「めめセット」「秘伝だしの昆布」「炙り鮭」 撮影:大木淳夫

<店舗情報>
◆おこめ茶屋 米米
住所 : 東京都渋谷区笹塚1-56-18 京王クラウン街笹塚
TEL : 03-6300-5073

韓国の人気食ブランドは、家の食卓も豊かに

9月3日、新橋に韓国料理「bibigo Market(ビビゴ マーケット)」がオープンしました。韓国の人気食ブランドbibigoのお店ということでうかがったのですが、残念ながらランチとディナーの間のカフェタイムでフードはオーダーできず。とはいえ店内にはテイクアウトできる商品が大量に並んでいて、思わず買い込んでしまいました。

各種マンドゥ、キムチ、韓国海苔、冷麺、ユッケジャンといった定番から、人気のハットク、ヤンニョムチキン、さらに調味料のダシダまで多彩で、眺めているだけでも楽しくなります。イートインの席はWi-Fiとコンセント完備。覚えておくといいお店でしょう。

店内には冷凍、冷蔵食品からレトルト、調味料まで数十種が並ぶ 撮影:大木淳夫

<店舗情報>
◆bibigo Market
住所 : 東京都港区西新橋2-7-4 CJビル 1F
TEL : 03-6205-4555

文:大木淳夫

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