「Androidスマホを使う若者はいじめられる」“巷のウワサ”にITジャーナリストが「反論」する理由

写真拡大

「android恥ずかしい」「androidいじめられる」「androidをiphoneみたいにする」――若者に人気のSNSで「Android」と検索欄に打ち込むと出てくる不穏なワードの数々。本当にAndroidスマホを使うといじめられるのか? 若者たちはAndroidスマホにどんなイメージを抱いているのか? ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子氏が解説する。

【写真ページ】「Androidスマホは“若者に不人気”」とわかる衝撃画像


写真はイメージ ©getty

◆◆◆

 10〜20代の若者から強い支持を集めるTikTokで「Android」で検索すると、驚きの検索候補が現れる。

「android恥ずかしい」「androidいじめられる」「androidをiphoneみたいにする」

 一方で「iPhone」と検索したときにはこのような候補は現れない。「iphone16」「iphone裏ワザ」「iphoneケース」など、当たり障りのないものばかりが並ぶ。

 火のないところに煙は立たないではないが、こうした検索結果が表示されるのは、実際にそれを検索する若者、悩む若者がいるからに違いない。若者にとって、Androidを持つことは本当に恥ずべきことなのか。iPhoneじゃなければ、いじめられるのか。

保護者の懐を直撃する「iPhoneねだり」

 今、子どもにiPhoneをねだられて頭を抱える保護者は多い。

「あんな高いものを本当に買う必要があるのか。私はAndroidなのに…」と、ある50代女性は眉をひそめる。一方で、別の50代男性は娘から「友達の誰と誰がiPhoneを使っている」と熱心にプレゼンされた。それを聞いて彼は「娘が仲間内で浮くと嫌だ」と感じ、iPhoneを購入してあげたという。

 知ってのとおり、iPhoneAndroidスマホよりも高額だ。最新機種であれば、20万円近く。とてもではないが、子どもに気軽に買える値段ではなくなっている。しかしその一方で、多くの子どもがiPhoneへのこだわりを見せ、保護者の懐を直撃する事態となっている。

 筆者は毎年、講師を務める大学の受講生に対して、「使用しているスマホのOS」についてのアンケートを取っている。年によってばらつきがあるが、1〜2年生を中心とした200〜300名程度の大学生の男女を対象としたものだ。その結果が、これである。

Androidの利用者はなんと…

 2024年はiPhoneユーザーが93.4%に対し、Androidは6.3%。2023年はiPhoneが92%に対し、Androidは7.4%。2022年はiPhoneが94.2%に対し、Androidは5.3%だった。Androidユーザーの若者は毎年5%強程度。9割の大学生がiPhoneを利用している。

 なお、投資銀行のパイパー・サンドラー調査によると、米国でも10代のiPhone所有者は87%と高割合。さらに88%が「次の携帯電話はiPhoneにする」と回答している。若者がiPhoneを支持するのは、世界的な現象なのだ。

なぜiPhoneは若者に支持されるのか?

 正直、iPhoneAndroidスマートフォンの性能差はそこまでない。むしろ性能に対して、iPhoneのほうが割高な傾向にある。それでも人気なのは、その圧倒的なブランド力にあるだろう。

 iPhoneは若者の間では、オシャレでスマート、使いやすいといったイメージを持たれている。さらに高性能が売りのカメラは、SNSで映え写真を撮りたい若者たちにとっては評価が高い。

 ある学生からは、「カメラが圧倒的にいいから盛れる。だから友達と撮影するときは、いつも最新機種を持っている子に任せている」と聞いた。

 また、別の学生からは「カワイイケースはiPhoneにしかない。だから絶対にiPhone」と言われたこともある。Androidを搭載している端末は多数あるが、iPhoneを搭載している端末は限られている。ユーザー数の多さも相まってか、ケースの種類もAndroidに比べてiPhoneのほうが多種多様だ。

Androidでいじめられることはないのだが…

 では、本当にiPhoneでなければいじめられるのか? これは中学生の間で巻き起こる「スマホを持たないといじめられる」「LINEを使わないといじめられる」といった話に似ている。確かにその世代で、スマホを持たない、LINEを使わないのは少数派だ。しかし、実際それが原因でいじめにまで発展したという話は聞かない。

 大学生たちに質問しても、「(Androidスマホについては)よく知らないけど、別にいいと思う」「持っている子もいるし、ねえ」と、特に気にしていない様子だった。

 ただし、Androidならではの不都合もある。たとえば、iPhoneのデータ転送機能「エアドロップ」は、学生の間で広く浸透している。通信費をかけずに、高解像度の写真やデータを送受信できるところが支持を集めているようだ。

 みんなで写真やデータを共有するときに、Androidユーザーの若者が肩身の狭い思いをするのは事実だ。それはAndroidでも同じような機能があるにもかかわらず、だ。

 人気のアプリなどもiOS版しか出ていないと、一緒に楽しくすることもできず、話の輪にも入りづらい。「iPhoneなら古い型落ちの端末でもいい」という意見が出るのもこのためだ。

 中にはiPhoneの型落ちにも手が出ず、Androidを使い続ける学生もいる。そんな若者たちのためか、Androidに「iOS16ランチャー」というアプリがあることをご存知だろうか。これはAndroidを見た目だけでも、iOS16のようにするというものだ。冒頭で紹介した、TikTokの検索候補の「androidをiphoneみたいにする」もこのアプリを指している。このアプリをインストールすれば、Androidのホーム画面がiPhoneそっくりの見た目になる。

 いつの時代も若者にとって、所属するコミュニティで浮くこと、居場所がなくなることは怖いこと。だから、みんなと同じiPhone、流行のSNSを使い、周囲に溶け込むことに励んでいる。今のところAndroidだからといって、いじめられることはない。しかし、みんなと違うことをして浮くことを恐れ、若者たちは今日もiPhoneを求めるのだ。

(高橋 暁子)