トランプ氏の“狙い”とは

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 9月15日にトランプ氏が再び暗殺されかけるなど、異例の展開続きの米大統領選。5日前の10日(日本時間11日)に行われたテレビ討論会は、ハリス副大統領が勝ったとする視聴者が63%、トランプ前大統領が37%という結果だった(CNN調査)。だが、90分間のディベートは脱線ばかり。

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一大争点は“猫と犬”

 例えばトランプ氏は移民に対して厳しい姿勢で知られており、国境に壁を張り巡らせよと主張している。一方、バイデン政権はどちらかといえば寛容で、大統領就任から、700万人近い不法移民が米国に流入したといわれる。今大統領選でも大きな争点となっているが、司会者から見解を問われたトランプ氏は、

〈(オハイオ州の)スプリングフィールドです。犬を食べていますよ、彼ら(不法移民)は。猫だって食べている。ペットを食べているんです。これがわれわれの国で起こっていることなんです。恥ですよ!〉

トランプ氏の“狙い”とは

 ちなみにスプリングフィールドには1万5000人のハイチ移民が住んでいる。

 この発言を司会者が訂正するも、トランプ氏は負けていない。

〈でも、テレビで言っていましたよ。“ウチの犬が盗られた”とね〉

 さらにトランプ氏は後に開かれた集会でも、〈移民たちが町のガチョウを連れて立ち去っている〉と発言。地元紙「スプリングフィールド・ニュース・サン」は、公園に〈ガチョウを食べないで〉という掲示許可を得ていない看板があること、別の街で、猫を食べたとして米国人女性が逮捕されたことを詳報したが、同紙のジェシカ・オロスコ記者によると、

「警察や郡・市の職員はハイチ移民ペットを盗んで食べている証拠はないと言っています。公園からアヒルやガチョウが盗まれたという話も調査したところ、根拠のないものでした」

 古くはケネディとニクソンが熱い政策論争を交わしたテレビ討論会だが、60年以上を経て、一大争点となっているのが猫と犬だとは――。

 国際ジャーナリストの春名幹男氏が言うのだ。

「米大統領選は“ラストベルト”と呼ばれる地域の3州、そして“サンベルト”と呼ばれる地域の4州を、どちらの候補が取るかで決まるといわれる。トランプ氏の今回の発言はその重要なラストベルトに住む白人の中産階級を意識したものでしょう。彼らの多くは自分の仕事を移民に奪われたと考えていますから」

「週刊新潮」2024年9月26日号 掲載