今年8月にネットコミュニティで話題になった写真。済州島の水族館の駐車場で撮影された。(出典:インターネットコミュニティ)

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「人の糞で他国を汚すのか」

【前後編の前編/後編を読む】大火災の遺族にありえないバッシング…韓国人の“中国嫌い”は危険水域に それでも依存し続けるジレンマが

 韓国も猛暑に見舞われた8月末、ネット上で1枚の写真が話題になった。手にティッシュを持ち、駐車場の木の横に立つ女性。その傍らでは、彼女の娘と見られるツインテールの女の子がしゃがんでいた――。

【写真】今年6月にも…男の子が大通りの真横で排泄している ほか

 撮影者が明かしたところによると、場所は済州島(チェジュド)の水族館の駐車場。女の子はここで“大”をしていたのだ。娘が用を済ますと、母はその上に適当にティッシュをかぶせ、悪びれもせず立ち去ったという。

今年8月にネットコミュニティで話題になった写真。済州島の水族館の駐車場で撮影された。(出典:インターネットコミュニティ)

 実はその2カ月前にも、済州道のある繁華街で、同じような写真が撮影されていた。人々が行き交う通りの真横の路上で、やはり男の子がしゃがんで“大”をしているものだ。その隣では、母親と思しき女性が立っている。この写真をネットに投稿した撮影者は、彼らが中国人観光客だったと明かした。「韓国人は子犬の糞もきれいに処理していくのに、中国人はなぜ人の糞で他国を汚すのか」とコメントしている。

 本記事ではモザイクで隠しているが、母親と思われる女性の表情にも非難が集まっていた。申し訳なさや慌てた様子もなく、あたかも「当たり前なこと」という空気が伝わってくるためだ。

トイレは近くにあるのに…… 

 多くの韓国人は、この写真にショックを受けている。いわずもがな、人目のある路上で“大”をするなど、常識的に考えられないからだ。

 済州島の水族館の一件も、中国人観光客によるものと推定されている。だが、こちらは周辺にトイレがないわけでもない。駐車場から少し歩けば館内に複数のトイレがある。済州の繁華街にしても、公衆トイレはもちろんあるし、コーヒーチェーン店などでは客以外にもトイレを開放している。少し我慢させれば、子供はトイレで用を足すことができる環境なのだ。

 この2つの写真をきっかけとして、韓国ではネットニュースやSNS上などで、“嫌中”の機運が高まった。

 もちろん、多くは「一部の行動から、中国人全体を評価するのはよくない。写真の人たちもなんらかの事情があったかもしれない」とは考えている。とはいえ、韓国人の感覚からすれば、写真の振る舞いは生理的に受け入れられないのも事実。中国人に対して否定的な感情を抱いてしまう。

中国に好感」はわずか10%

 8月中旬に興味深い統計が発表された。「北東アジア歴史財団」が、韓国の若年層が抱く国別の好感度を調べたデータである。7月22日から30日までの期間、全国の18〜39歳の男女1000人を対象に調査した。これによると、57.3%が「日本に好感を持てる」と答えた反面、「中国に好感を持てる」と答えたのは10.1%にすぎなかった。「中国を信頼できない理由」を尋ねた質問には「韓国の歴史と文化を歪曲しているため」が29.4%で最も高く、「中国国民自体を信頼できないため」が22.5%と続いた。

 過去の植民地支配と従軍慰安婦、徴用工問題などで、日本に反感を抱く韓国の中高年層は少なくない。一方、若年層はそうではないようだ。同時に彼らは、中国があまり好きではないらしい。先の好感に関する問いの回答をみると、“嫌い”と言ってもいいのかもしれない。

 その一因を新型コロナウイルスに求める意見がある。中国政府は現在も、自国から感染が広まったという説を公式に認めていない。それが、韓国の若者の間で否定的なイメージにつながっているというわけだ。その見立てに従うならば、今回の写真の反応も、中国人の「保健衛生」への不信感に根ざしているとも読める。いくら地理的に近い国とはいえ、幼い頃から西欧風の個人主義マインドで育てられ、かつ日本旅行にこぞって赴く韓国の若者は“中国的な感覚”とは相いれない。

 ネット上で見られる「中国人は羞恥心もないのか」「路上の“大”は国に帰ってからやれ」というコメントは、韓国の若者がこれまで抱いてきた中国人への反感が噴出した結果……なのかもしれない。

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【後編】では、6月に起きた工場火災でも見えた韓国の“嫌中”意識を紹介する。

ノ・ミンハ(現地ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部