9回、二盗を決める代走の植田(撮影・飯室逸平)

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 「阪神0−1巨人」(23日、甲子園球場)

 まだ終わっていない。そう鼓舞するように阪神・植田海内野手が足で執念を見せた。泥にまみれた伏兵が静まり返った聖地をいま一度、奮い立たせた。「得点が入らなければ関係ない」。自らの仕事は果たしたが、多くを語らない姿から敗戦の悔しさがにじみ出ていた。

 1点劣勢の九回2死。投手強襲安打で出塁した代打・糸原の代走で出番が回ってきた。あとアウト1つで敗戦が決まる重圧をものともせず、3球目にスタート。砂煙を豪快に立ち上げながら、タッチにかかった遊撃・門脇の股の間に右足を滑り込ませた。巨人サイドからリクエストが出されたが判定は変わらず。勇気ある二盗で一打同点の好機をつくり上げた。

 今季4盗塁目だが、植田の快足は誰もが認めるところ。当然、相手バッテリーは厳戒態勢を敷く。巨人の抑え・大勢は裏をかくかのように3球目まで一度もけん制せず、投球のクセのヒントを与えなかった。植田にとって大勢は塁上で“今季初対戦”。スタートを決断するための材料が少ない中で盗塁を成功させたことに“足職人”の高い技術が垣間見えた。

 「次の試合また頑張るという感じです」と背番号62。連覇の可能性を信じて、走り続ける。