自民党総裁が誰になるかで相場が左右される(石破茂元幹事長と小泉進次郎元環境相=右)/(C)日刊ゲンダイ

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 誰になるかで相場が左右される──兜町は2つの選挙に夢中だ。自民党の総裁選と米国の大統領選。どちらも現時点での勝者は見えづらく、市場関係者は「ああでもない、こうでもない」と好き勝手に予想する。今年から新NISAをスタートさせた投資家にとっては他人事ではない。これから始めようと思っている人はスタート時期を探るのに役立つ。さてこの先、株価はどう動くか。

日経平均が今年3番目の下げ幅…9.4株価暴落は「石破茂NO」のメッセージか?

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■マーケット目線

 兜町の本音はどんな感じか?

「あくまでマーケット目線では高市早苗経済安保相です。株高をもたらしたアベノミクスの継承者という印象が強い。アベノミクス再来で株価は爆上げ。そんな期待感が高まります」(市場関係者)

 報道各社の世論調査によると、高市氏は石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相に次ぐ3番手あたり。とはいえ、両者との支持率はかなり差がある。

 経済評論家の杉村富生氏はこう言う。

「高市氏は無理筋でしょう。投資家の期待がいくら高くても、期待で動いては痛い目に遭う。冷静な判断が必要です」

 石破氏だったらどうか。

「反アベノミクスで知られるだけに、市場はノーを突きつけるかもしれません。石破氏だと、当選直後は場合によって大きく下げる危険性があります」(杉村富生氏)

 小泉氏への期待は? 株式評論家の倉多慎之助氏はこう見る。

「ちょっと頼りない気がします。経済は得意でないようだし、市場に不安が漂います。環境大臣のときには環境問題に絡んだセクシー発言などに批判が起きたし、失言をしかねない。それが市場に悪影響を与える可能性があります」

 現状では、どちらが新総裁に選ばれても“明るい株式市場”は見通せない。

■「もしハリ銘柄」が上昇中

 低迷相場はしばらく継続しそうだが、だからといってジッとしていることはない。来たるべき上げ相場に向け、しっかり準備をしておくべきだ。

 日経平均はこのところ3万7000円から3万9000円あたりをウロウロしている。そこから抜け出す材料が総裁選だ。

「国内のイベントが株価に影響を与えるのは珍しい。ここ数年は米国の動向ばかりを気にしていましたからね。ただ、日経平均が上へ向かうか、下降するかは微妙です。総裁選に加え、米大統領選が絡むからです。トランプ氏かハリス氏か。どちらが株式市場にプラスか。こちらも重要」(前出の市場関係者)

「もしトラ」から「ほぼトラ」「確トラ」の流れがあり、バイデン氏撤退後は「もしハリ」。予断を許さない戦いが展開されているが、株式市場では「もしハリ」の動きが出てきた。

 ハリス氏の経済政策のひとつに「住宅促進策」がある。初めて住宅を購入する人に2万5000ドル(約365万円)を支給するなどの支援策だ。これに市場は反応した。米国の建設大手ばかりか、日本市場の住友林業や積水ハウス、大和ハウス工業など米国でもビジネス展開する住宅関連が株高傾向となっている。

■ハリス勝利→自民下野→株暴落

「ハリス氏が勝つという流れができているのかもしれません。ただ、それはそれで不気味な……」(証券アナリスト)

 どういうことか。気になるジンクスを指摘するのは前出の杉村富生氏だ。

「1992年の大統領選で勝ったクリントン氏は、セオドア・ルーズベルト、ジョン・F・ケネディに次ぐ若さの46歳でした。翌年の93年に日本の自民党は下野。2008年はオバマ氏が勝ち、黒人初の大統領となりました。翌09年、自民党はやはり下野しています。どちらも株式市場はバブル崩壊やリーマン・ショックの影響で暴落に見舞われました。ハリス氏が勝ったら女性初の米大統領が誕生します。珍しい米大統領が誕生すると自民党は下野、そしてマーケットは混乱する。不気味さを拭いきれません」

日米とも波乱含みだけに…

 日米関係も考慮しなければならない。

「もしトランプ大統領となれば、渡り合えるのは誰か。そんな視点が必要です。43歳の進次郎氏で大丈夫なのか。まるで大人と子供。そうなると、石破氏や河野太郎デジタル相のほうがまだマシかもしれません」(倉多慎之助氏)

■年内に日経平均4万円を奪回?

 さまざまな思惑が入り交じる株式市場。投資家は翻弄されるばかりだが、そんな混乱相場を賢く乗り切る知恵は?

「株式市場は政治の混乱を嫌います。正直にいえば、先の見えない選挙が2つもあるし、手を出さないのが賢明といえます。ただ、少し長い目で見ると日経平均は上昇していくと思っていい。いまは次なる投資機会をじっくり待つ時期でしょう」(倉多慎之助氏)

 大手証券会社も株価上昇を見据えている。

 大和証券の日経平均見通しは、24年7〜9月は3万8000円ながら、10〜12月は4万円、25年1〜3月は4万1000円、4〜6月は4万2000円。順調に株価はアップしていきそうだ。

■10月相場は暴落を覚悟

 ただし、一本調子の上昇とはいきそうにない。

 自民党総裁選は今月27日(金)の午後1時に投票が始まる。決選投票になれば東京証券取引所の取引が終わる午後3時を回る可能性は高い。株式市場が次に開くのは週明け30日(月)だ。

「歓迎相場になるか、不満タラタラの暴落になるかは分かりません。ただ、誰が選ばれるにせよ、イベント通過で数日後に市場は落ち着くでしょう。注意しなくてはならないのは落ち着いた後です。11月の米大統領選に向け、株価の混乱は必至です」(前出の証券アナリスト)

 兜町に流れる有力な見方は「株価下落」だ。ただでさえ、10月は「魔の月」と呼ばれ暴落がついて回る。世界恐慌の発端となった1929年暗黒の木曜日、1987年のブラックマンデー、2008年リーマン・ショック後に付けた日経平均の最安値(6994円90銭)。すべて10月だ。

「日経平均は3万6000円、3万5000円ぐらいまで下落する恐れがあります。為替次第ですが、3万円の攻防もあり得るでしょう」(倉多慎之助氏)

 大手証券の10〜12月の下値メドは3万3000円。下振れしたら、この水準を覚悟したほうがよさそうだ。

■「解散・総選挙」で株高は鉄板

 そのままズルズル下がるのか。

「米大統領選までは不安定な相場が続くでしょう。その後は、どちらが勝っても数日は落ち着かないでしょうが、すぐに相場は活気づいてきます。NYダウはいまも最高値の水準にあるし、4年に1度の大統領選という一大イベント通過で投資家心理は安定します」(倉多慎之助氏)

 日本株も2大選挙が終了し、市場は安堵。4万円奪回に向け動き出す。ただ、日経平均が約4400円も下落した8月5日大暴落の後遺症から簡単には抜け出せない。

「あの大暴落から約65%戻しています。でも、ここからは時間がかかるかもしれません。4万円ですか? そうですねえ、早ければ年内でしょうが、年明けに持ち越す確率は高いと思っています。そうはいっても、8月の大暴落で金融システムが揺らいだわけではありません。企業業績も好調です。財務省が公表した4〜6月の法人企業統計によると、日本企業は過去最大の35兆円を稼ぎました。1年間では100兆円を超える規模。株価が上昇する要因のひとつです」(杉村富生氏)

 自民党の新総裁への支持率が高まり、解散・総選挙に突入というシナリオも市場は歓迎する。

 何しろ、過去の解散・総選挙は例外なしの「株高」だからだ。

 株価の流れは総裁選後に「株安」。10月は低迷し、11月米大統領選後に反発。年明けの日経平均は4万円奪回が有力だ。10月に仕込んで年明けにいったん利益確定する。これが賢い投資術?