里崎智也が「ダルビッシュや岩隈より天才」と絶賛した「意外なピッチャー」の実名
千葉ロッテで15年にわたって活躍し、球界を代表する捕手として知られる里崎智也氏（48歳）。そんな里崎氏に「天才」と思うピッチャーを聞いたところ、意外な名前が挙がった。
さとざき・ともや／1976年、徳島県生まれ。千葉ロッテから2位指名され1999年にプロ入り。2014年に現役引退し、現在は野球解説者として自身のYouTubeチャンネル「Satozaki Channel」を中心に活躍中
ダルビッシュや松坂より怖かった
「これまで対戦した中で、里崎さんが一番の天才だと思うピッチャーは誰ですか？」――そう尋ねられると、質問した人からの「期待」を感じてしまいます。「きっとダルビッシュや松坂、岩隈とか、誰もが知っている有名な選手の名前を出すんだろうな……」って。
でも私が一番の天才だと思うのは、自分が最も苦手だったピッチャー。元楽天・日ハムのライアン・グリン選手が断トツでした。
おそらく一般的な評価で言えば、先ほど名前を挙げた3人のほうがグリンよりも上でしょう。しかし彼らにはとくに苦手意識はないし、ホームランを打ったこともある。私にとって「天才」と同時に「天敵」だったのはグリンだけです。
グリンとの通算の対戦成績は38打数3安打。彼がパ・リーグにいたのは2006〜2008年なので、平均すると年に1回しかヒットを打てなかった計算です。あとの打席はすべて凡退でした。
バッティングは99％がタイミングだと思います。振るタイミングさえ合わせられれば、少なくともバットには当てられるし、ファールで粘ってフォアボールに持ち込める可能性もあるわけです。
ところがグリンが相手だと、なぜかタイミングがまったく合わない。対策をしたくてもどうすればタイミングが合うのか見えないので、やりようがないんですよ。どれだけ対戦してもまったくタイミングがつかめなかったピッチャーは、後にも先にも彼だけでした。
打てた3回も「まぐれ当たり」でしょう。振ったらたまたまタイミングが当たって、ヒットになっただけ。グリンが登板するとわかった試合は、どこか諦めた気分で出場していましたね。出てもまず打てないだろうし、打率だって下がっていくばかりですから。
当時のボビー・バレンタイン監督は一つのポジションに複数の選手を当てていたので、試合に出ずに休める日もあった。グリンが出てくる日に休みが当たらないか、いつも心の中でこっそり願っていました（笑）。
だから2009年にグリンが横浜に移籍してパ・リーグからいなくなると発表されたときは、「もう対戦しなくていいんだ……」と思って心の底から嬉しかったなぁ。ただその年の交流戦で当たったときは、やっぱり打てませんでしたけど。
もし今、対戦したら……
僕らが現役だったころは、変化球の曲がり具合に球のスピード感、そしてタイミングなどすべて、試合でバッターボックスに立ったときしか学べませんでした。でもいまの選手たちは、高性能なピッチングマシーンを使って相手ピッチャーの投球を再現することで、本番に近い球で練習できるわけです。僕らのころとは練習環境がまったく違うと思います。
もし僕がいま現役だったら、かつて手も足も出なかったグリンの球も克服できているかもしれません。そもそも年に15打席くらいしか対戦する機会がないことも、タイミングをつかめなかった理由の一つだったわけで、場数さえ増やせれば、彼を攻略するコツも見えてくるのではないかと思うんです。
もし現在の環境で練習を積み、ZOZOマリンスタジアムのバッターボックスに立ってグリンと再び対峙したら、いったいどちらが勝つのか―もはや実現することはないと理解しながらも、ついつい想像してしまいますね。
