M-1を騒がせたトム・ブラウンの「合体ネタ」 が驚きの展開で絵本になったワケ…みちお「まだロンハーのドッキリと疑っている」

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トム・ブラウンは、長髪がトレードマークの布川ひろき氏と、坊主×ペンギンニットがチャームポイントのみちお氏からなる、奇妙奇天烈な漫才コンビだ。

2018年のM-1グランプリ決勝で「合体」を繰り返す狂気とユーモアに溢れたネタを披露し、一躍有名に。さらに2023年の敗者復活戦の漫才は、YouTubeのM-1グランプリ公式アカウントの再生回数が、決勝出場者を超え堂々3位にランクインするなど、話題を呼んでいる。

そんなトム・ブラウンが、2024年8月28日より絵本『がったい!』を上梓する。2018年のM-1グランプリを騒がせたあの「合体ネタ」をもとにしているというが、果たしてどんな絵本になっているのだろう。トム・ブラウンの布川ひろき氏、みちお氏に話を聞いた。

みちお「いまだにロンハーのドッキリだと疑っている」

──絵本『がったい!』のご出版、おめでとうございます。絵本を刊行された経緯を教えてください。

布川:作者(こにし けい/たなか けんた/萬田 翠)から、僕らのネタを絵本にしたいと連絡があったのがはじまりです。『がったい!』のアイデアは、2018年のM-1グランプリ決勝で披露した「ナカジMAX」にあったもの。アニメ「サザエさん」に登場する中島くんをみちおが合体して、最強の中島くんをつくるネタです。

みちお:合体する中島くんのなかに、中島みゆきさんや木村拓哉さん、布袋寅泰さんが紛れこんじゃうっていうね。

布川:カオスなネタなので、そのネタを絵本にするなんて、これはもうドッキリ確定だなと(笑)。ただ出版社の方と会ったときに、編集者やスタッフの方の熱量が半端なかったので、これはマジなのかもと徐々に疑いがなくなっていきました。

みちお:僕はまだロンハー(テレビ朝日系「ロンドンハーツ」)のドッキリじゃないかと疑っています。なんなら2018年のM-1からずっと、ドッキリが続いているんじゃないかなって。

布川:いや、それは俺らが得しすぎでしょ! たしかに「ナカジMAX」の漫才がもとになった『がったい!』なんて絵本ができるとは、2018年のときは想像もできなかったけどね。

「ナカジMAX」誕生のきっかけ

──伝説のネタ「ナカジMAX」のネタが生まれた、きっかけを教えてください。

みちお:2018年のM-1に出る前に、大御所芸能人の方にボケを「わからない」と言われたことがあって。自分たちが面白い以前に、笑える土俵に上がれてないことがわかって、凹みました。そこで思いついたのが「◯◯を5人集めて、キング◯◯をつくる」というアイデアです。

意味はわからなくても、とにかくわかりやすい設定にしようと思いついたアイデアでしたが、「ハエ人間」がでてくるホラー映画『ザ・フライ』や、スライムが合体してキングスライムになる『ドラゴンクエスト』など、自分の好きな映画やゲームがヒントになりました。

布川「絵本のオチは新発見。漫才に取り入れるかも」

──「ナカジMAX」のアイデアがもとになった絵本『がったい!』。見どころを教えてください。

布川:絵本では、僕らが出てきて「パンを5つがったいさせて、最強のキングパンをつくる」というネタをはじめます。でもパンのなかに、チンパンジーが混ざっちゃって、できあがったのは「パンチンパンジー」。そこからキングパンをつくるために、みちおが暴走していくというお話です。

みちお:僕のお気に入りのシーンは、間違えてつくられた「パンチンパンジー」が、一枚一枚スライスされて、山に帰っていくところ。パンに足と手が生えて、ちょっとずつチンパンジーに戻っていくところがシュールで面白いんですよ。

布川:僕が勉強になったのは、最後の大オチ。漫才にすると「ダメー」とか「やったー」とか言いたくなるところを、あえて突っ込まずに余韻を残して終わっていて、新鮮でした。僕らの漫才に取り入れてもいいかもと思うくらい。僕自身の知育になりました。

みちおが絵本を読み聞かせした「意外」な相手

──絵本『がったい!』を出版するにあたり、身近な人の反応はいかがですか。

布川:5歳(2024年8月現在)の娘に読み聞かせしたら、笑ってはしゃいでいました。合体のアイデアが、子どもにも刺さることがわかって嬉しかったですね。あと『みどりのマキバオー』を描いた、漫画家のつの丸先生に見ていただいたら「あれ、めちゃくちゃいいぞ!」と、水道橋の居酒屋で大絶賛!ありがたい限りです。

みちお:僕は身近に子どもがいないので、一緒に住んでいる同い年のおじさんに読み聞かせをしました。「まず絵本ってこと自体がすごくいいね。でも読み聞かせは、もっとゆっくりやったほうがいいよ」と指導されて、ちょっと腹が立ちました(笑)。

──こちらからおふたりの読み聞かせ動画も見られるので、ぜひそちらもチェックしてほしいですね。最後に絵本『がったい!』を楽しみにしている人に、メッセージをお願いいたします。

みちお:僕は未来からきたので、未来のノーベル賞博士が、子どもの頃にこの『がったい!』読んでいたと知っています。なので、あなたも読みましょう。

布川:……質問の答えになってる?(笑)急に未来からきた設定だけど!

みちお:真面目な話をすると、漫才と違って絵があるから「合体ネタ」がより感覚に伝わると思います。読むと頭が柔らかくなって、柔軟な感性が磨かれるので、ぜひ読んでみてください。

布川:最後はそれっぽいこと言ってまとめてきた!

僕らのつくるものはすべて、何も考えないで見てほしいと思っています。頭を空っぽにして楽しめるのが、強みなので。絵本を読んだ人に「なんかわかんないけど、面白かったね!」と言ってもらえたら、最高に嬉しいです。

トム・ブラウン/布川ひろき(左)とみちお(右)からなる漫才コンビ。北海道出身。2018年M-1グランプリ決勝に出場し「合体ネタ」が話題に。テレビ出演だけでなく、2024年には東名阪+北海道・福岡での単独ライブツアー「たろう7」を成功させるなど、幅広く活動する。ケイダッシュステージ所属。

撮影/松井雄希(講談社写真映像部)