人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている55歳のRitaさんは、日本とスペインの違いについて発信していることで人気です。Ritaさん自身が感じた、スペイン人がいつも明るくいられる習慣について、気がついたことを紹介してくれました。

スペインでよく見られる日本とは違う光景

異国で生活をすると各国独自の環境や文化に触れる一方で、日本ではごく当たり前に思っていたことを見かけなかったり、全く正反対なことが繰り広げられて、驚くことがあります。

【写真】ボイスメッセージのやり取り

スペインでも地域や伝統により数えきれないほどのスペインらしさがありますが、今回は日常生活でよく見られるスペイン人の習慣について紹介します。

お店に入ってもフランクな挨拶からスタート

日本ではあるお店に入ったとき、店員さんから「いらっしゃいませ」と言われてもお客さんから挨拶をすることは少ないかもしれません。スペインではどのような店舗でも一歩入った瞬間に店員と客が必ず「Hola! (こんにちは)」と挨拶しているのを見かけます。

この声かけに私も最初はどんな返事をしたらいいのか戸惑い、モジモジしてしまいましたが、同じようにHolaのみで十分でした。「なにか手伝うことある?」「いえいえ、見ているだけなので大丈夫よ」というフランクなやり取りもよくあります。

店員も客も対等で、お店のなかであっても普通に挨拶をして話しかけるのがスペインならでは。たとえばスーパーのレジに並び、順番が来るとレジ係の人から挨拶されるし、カフェのカウンターでも注文を取るまえにひとりひとりと必ず挨拶が交わされるほどです。

文章を送るよりもボイスメッセージが主流

スペインの人たちとの連絡は「WhatsApp」(LINEと同様にメッセージや電話ができるアプリ)を利用している人が多く、ボイスメッセージを録音して相手に送信する方法が基本です。留守番電話のように要件が声で残るのですが、スペイン語をまだ完璧に聞き取れない私は毎回苦戦します…。

文章ならコピーペーストして翻訳アプリで日本語に変換できますが、聞くことしかできない状況はとても不安です。まるでリスニングのテストのように何度も聞き返し、メモを取り、知らない単語を調べ…それでも分からないときは返信時に「言いたことはこれ?」と聞いたり「文章で書いて!」と改めてお願いすることもあります。

スペインの人たちは皆とにかくボイスメッセージ好き。電車でも街でも友達に吹き込んでいる姿をよく見かけます。「どうしてメッセージを書かないの?」と聞いてみたところ、「文字を打つのが面倒だから」とひと言。記録や見返しなどとくに必要とせず、とにかくラクな方法で、相手にメッセージを伝えています。

誕生日会を自分で開き、まわりにふるまう

日本では誕生日を迎えると、家族や友達がお祝いしてくれることが多いと思いますが、スペインは誕生日を迎える本人が誕生会を開催したり、ご馳走するのが主流です。実際に誕生日が近い友達から「来週私の誕生日だからあなたにご馳走したい! あのレストランへ行こうよ!」と誘われたり、「今日は私の誕生日だから、これをみんなで分けて!」と友人たちで集まった場所にお菓子を持ってきてくれることもありました。

主役なのにまわりにご馳走? プレゼント? と不思議に思えますが、「いつも仲よくしてくれてありがとう。元気に誕生日が迎えられたよ」と伝える意味合いのようで…たしかにそんな感謝の気持ちを表す日があるのもいい習慣に思いますよね。

時々日本のようにお友達の誕生日を祝っているグループを見かけることもありますが、まだまだごくわずかなようです。

レジャーや流行りの店も年齢関係なく楽しむ

公園、遊園地、映画館、デパート、深夜のレストランやカフェでも、家族連れから年配の方々まで、異なる世代が同じ場所を楽しむ姿を見かけます。「あそこは若い人たちが多いから私たちは入りにくい」と思う場所は不思議なくらいにひとつもありません。

夏場の海水浴場でもシニア層がとても多く、もちろんみんなが水着姿、アイスクリーム店にもおばあちゃんがお友達と並び、深夜のレストランでも子ども連れの家族を見かけます。だれもが同じように楽しみ、弾む心を隠さず、世代に関係なく隣同士に存在するのがスペインの自然な環境です。

以前スペイン人へ街角インタビューをしている放送を見たことがありますが、どのような質問にもじつに前向きな気持ちで答えている姿に驚きました。「今日はなにをしたの?」という質問に、10代の学生は「今日も気持ちよく目覚めたよ。いつものようにね!」と目覚めたことを楽しそうに語り、70代と思われる男性は「おいしいハムをたくさん食べたよ。この体型を守らなくちゃいけないからね!」とちょっと食べすぎたこともユーモアたっぷりに話していました。

日差しに、広い土地に、豊富なグルメが揃う国。スペインの人たちは恵まれた環境に加えて、生まれつき“幸せになるための発想”が得意なのかもしれません。