三笘薫、マンU戦で今季初アシストも懸念浮上 昨季よりプレー機会が少ないのはなぜか
開幕戦でエバートンに勝利したブライトンが、開幕戦でフラムに勝利したマンチェスター・ユナイテッドをホームに迎えたこの試合。昨季の成績に照らせば11位対8位の対戦になる。両者とも今季はもう少し上を狙えるのではないかと好意的に見たくなる、レベルの高い一戦だった。
前半はプレッシング合戦。古い言い方をすれば、守備が攻撃を上回る内容だった。どこにも綻びが生まれない拮抗した試合。通常なら、つまらない試合である。しかし、時間はアッという間に経過した。その守備は前向きで、常に緊迫感に溢れているので、守り合いなのに面白いからだ。一瞬たりとも目が離せない好試合。プレッシングがここまで進化するとは、発案者のアリゴ・サッキも想像していなかったのではないか。今日のプレミアのレベルの高さを証明する試合と言ってもよかった。
それも手伝ってか、三笘薫の足もとにボールはなかなか収まらなかった。俊敏かつ勤勉な動きで、相手ボールを追いかけることに終始。相手ボール時には活躍していたが、マイボール時は絡むことさえできなかった。試合序盤は競り合いで4度ほどボールに触れているが、能動的なプレーはなし。初めて満足にボールを操作し、ドリブルの態勢に入ろうとしたのは前半30分になってからという遅さだった。
だが、マンチェスター・ユナイテッドの右ウイング、アマド・ディアロ(コートジボワール代表)に、三笘はあっさりボールを奪われてしまう。試合にうまく入れていないようだと心配させられた。その2分後、ブライトンに先制点をもたらすプレーに直接関与するとは、思いもよらなかった。
マンチェスター・ユナイテッド戦で先制ゴールをアシストした三笘薫 photo by Reuters/AFLO
右サイドから蹴ったジョアン・ペドロ(ブラジル代表)のクロスボールが、ゴール前を通過し、逆サイドで構える三笘のところに流れてきた。それをすかさず折り返すと、次の瞬間、ダニー・ウェルベック(元イングランド代表)がスライディングでゴールを決めていた。
初めて満足にボールを操作したと思ったら、それがアシストにつながった。ボールがこなくても集中力を切らさなかった証拠である。さすが三笘と言いたい気持ちにもなるが、前半のその後のプレーを見ると、そうポジティブに捉えられなくなった。
【貢献度は高く結果も残しているが...】接触プレー以外で満足にボールを扱ったシーンはわずか1度に終わった。ライン際で左SBジャック・ヒンシェルウッド(元U−19イングランド代表)のパスを受け、ドリブルを開始。対峙する相手の右SBヌサイル・マズラウィ(モロッコ代表)に深々とした切り返しを敢行したものの、決定的なボールを送り込めなかった――という38分のプレーである。
三笘はこの日も開幕戦同様、後半44分までプレーした。最後まで集中力を切らさず、ミスも一切なかった。だが、見せ場はわずかだった。アシストシーンと38分のプレーに限られた。後半8分のシーンでは左でボールを受けても、縦を狙う素振りを見せず、ヒンシェルウッドとのパス交換で終わらせている。にもかかわらず、ほぼフル出場した。
これをどう見るか。開幕戦のエバートン戦の原稿でも触れたことだが、気になるのはプレー機会の少なさだ。この日のウイングで言えば、マンチェスター・ユナイテッドで先発したふたり=ディアロ(右)、マーカス・ラッシュフォード(左・イングランド代表)、ラッシュフォードと交代で入ったアレハンドロ・ガルナチョ(アルゼンチン代表)、さらにはブライトンの右ウイングで先発したヤンクバ・ミンテ(ガンビア代表)と比較しても、プレー機会で大きく劣った。プレミアを代表する左ウイングには見えなかった。
三笘は、ボールが回ってこないとイライラし、持ち場を離れてチームのバランスを乱すタイプの選手ではまったくない。ポジションをカバーする概念に富んだ、クレバーな今日的選手だ。"俺が、俺が"と我を張ることもない。自己顕示欲はかなり低めである。極めて淡々と冷静にプレーする。
プレー機会が少なくても、貢献度は高い。玄人受けする選手であり、監督受けもいいはずだ。結果も残している。開幕戦では得点を決め、この2戦目ではアシストを決めた。「見出し」を見る限り、活躍しているように見える。
だが、昨季までの三笘に比べると、やはり落ちるのだ。プレー機会の少なさに加え、肝心のプレーに躍動感がない。仕掛けていく前向きさがない。コンディションが原因なのか。徐々に解消されていく問題なのか。胸板が厚くなったかに見える体型と何らかの関係があるのか。
三笘にはこれまで、ライバルらしいライバルがいなかった。今季も開幕戦、2戦目ともに後半44分までプレーしている。だが、三笘と交代でピッチに入ったシモン・アディングラ(コートジボワール代表)は、1−1で迎えた後半50分、ジョアン・ペドロの決勝ヘッドを見事なクロスボールでアシストし、格上相手に貴重な勝利をもたらしている。
昨季、三笘が左でプレーするときは右でプレーしたアディングラだが、本職は左だ。ミンテが加わった今季は、これまで2試合、ベンチスタートに追いやられている。次戦あたり、先発してもいい頃である。だとすればそれは右なのか、左なのか。控えに回るとすればミンテか三笘か。三笘に活気が戻ることを期待しながら、次戦のアーセナル戦に目を凝らしたい。