久保建英はレアル・ソシエダ残留で「退団は絶対にない」とスペイン人記者「攻撃にスパイスを加える」
久保建英は今夏、リバプール移籍の噂がありながらも、レアル・ソシエダを離れることなく、今季の公式戦初戦に出場した。今回はスペイン紙「アス」、およびラジオ局「カデナ・セル」でレアル・ソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ氏に、久保の移籍報道やラ・リーガ開幕戦となったラージョ・バジェカーノ戦でのパフォーマンスおよび今季のチーム状態を分析してもらった。
【ラ・レアル退団は絶対に起こらない】久保建英はレアル・ソシエダに残留する。昨季後半戦の不調を挽回し、アジアカップに参加する前まで見せていたような、決定的な役割を果たせる選手に戻るという個人的な挑戦を抱えながら、チュリウルディン(レアル・ソシエダの愛称)での3年目のシーズンに臨む。
ラ・リーガ開幕戦でプレーした久保建英 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
夏の移籍市場が閉まるまではまだ日があるため、いろいろなことが起こり得るのは事実だが、久保のラ・レアル退団は絶対に起こらないことのひとつなので安心してほしい。いくら日本のメディアで憂慮すべきニュース(※リバプール移籍間近という報道)が掲載され、警鐘が鳴らされたとしても、だ。
その情報がどこから来たのか、どのような意図で掲載されたのかはわからないが、報じられた内容は何ひとつ事実に近いものではなかった。というのも久保はこの夏、一度もラ・レアルを去ろうなどと考えていなかったからだ。今はその時期ではないと思っており、ほんの数カ月前に契約更新したばかりのクラブに対して、提供できるものがまだあると感じている。
これは、久保にオファーや問い合わせがなかったことを意味するものではない。もちろん、ラ・レアルや彼の代理人に連絡してきたクラブはあった。しかし、ラ・レアル首脳陣に交渉の意思はまったくなく、久保自身も移籍するつもりなどなかった。
リバプールからの興味は以前から存在していたし、今も続いている。しかしこの夏、設定されている契約解除金6000万ユーロ(約96億円)を支払い、獲得するという可能性は存在していない。リバプールは久保を気に入っているが、日本で報じられたような、契約するための一歩を踏み出すことはなかった。
ここスペインでも日本でのニュースに対し反響はあったが、私たちは警戒する必要がないとすぐにわかった。それはクラブの人々が常々、とても落ち着いている様子を見せていたからだ。ラ・レアルも冷静であることを示すために素早く反応し、自分たちのプランを継続した。ニュースを否定するかのように、プレシーズンの大阪遠征時、招集メンバー発表やSNSなど、ことあるごとに久保の写真を掲載し、残留をアピールしていた。
クラブは久保が去るとも、リバプールが獲得に来るとも思っていなかった。この夏、ユーロ2024を制したスペイン代表のミケル・メリーノ(※アーセナル移籍が濃厚)やマルティン・スビメンディに対して行なったような、説得をする必要がなかったのだ。
【開幕戦はベストではないが他の選手より優れていた】ラ・レアルが今季も多くの公式戦を戦うなか、久保はラ・リーガ開幕のラージョ・バジェカーノ戦で公式戦をスタートした。私たちはこの試合で、久保がイマノル・アルグアシル監督指揮下のチームにおいて、議論の余地のない存在であり続けていることを目の当たりにした。
この日本人ウインガーは、1対1の局面で突破力とイマジネーションを備えた唯一の選手だった。シェラルド・ベッカーが左サイドで制御できない純粋なパワーを発揮したのに対し、久保は右サイドで再び魔法をかけた。
まだベストの状態にほど遠いのは事実だったが、それでも他のチームメイトよりワンランク上のパフォーマンスを披露した。開幕戦のラ・レアルのレベルはかなり凡庸だったが、久保は攻撃にスパイスを加え、他の選手よりも優れていた。
プレーに関与するのに苦労していたが、参加した時は攻撃の重責を担い、チーム最高のチャンスは彼が右サイドからドリブルを仕掛けることで生まれていた。ラージョの選手たちはファウルでしか止めることができず、なかにはアドリ・エンバルバが後半に犯したような非常に激しく危険なものもあった。
しかし、久保はこの日は決定的な役割を果たせず、チームが勝ち点を獲得するのに十分な活躍は見せられなかった。電光掲示板に0−1と表示されたところでイマノルに交代を命じられた事実は、フィジカル的にまだベストコンディションではないことを示している。しかし、シーズン初戦であると考えれば、それはごく普通のことである。
【いつもどおりなら今季もレギュラー】さまざまな要素を踏まえると、久保が今季もスタメンに名を連ねるのは間違いない。ケガすることなく、いつもどおりのパフォーマンスを発揮できるのであれば、レギュラーの座を確固たるものにできる。
ほかにスタメン入りが確実なのは、GKアレックス・レミロ、センターバック(CB)のイゴール・スベルディアとジョン・パチェコ、左サイドバック(SB)のハビ・ロペス、MFのマルティン・スビメンディとブライス・メンデス、FWのミケル・オヤルサバルの7人。このなかでオヤルサバルは新たなFWを獲得するまで、センターフォワードで起用されることになる。
ロビン・ル・ノルマンがアトレティコ・マドリードに移籍したCBに関して、イマノルが現在、その穴を埋めるために尽力しているが簡単にはいかないだろう。パチェコが代役を務めるのが自然の流れであるが、クラブは経験豊富なCB獲得の可能性を否定していない。
右SBはアマリ・トラオレとアルバロ・オドリオソラが交互に起用されるべきであり、ホン・アランブルは準備を整えてチャンスが与えられるのを待たなければならない。
ミケル・メリーノのアーセナル移籍はラ・レアルサポーター全員にとって悲しいことだが、遅かれ早かれ決定するだろう。ベニャト・トゥリエンテスが新加入のルカ・スチッチやセルヒオ・ゴメスとそのポジションを争う。
一方、プレミアリーグの脅威に晒されたスビメンディは残留になった。過度な心配をしていなかった久保のケースとは異なり、リバプールが契約解除金を支払うことをほぼ決定していたため、クラブ首脳陣は震えあがっていた。
左ウイングはすでに開幕戦で示したように、ベッカーがレギュラーを務められるため、アンデル・バレネチェアは試合に出るために万全な状態を維持しておかなければならない。
ベッカーはパワー、スピード、相手DFの裏に抜け出す能力など、他の選手とは異なる特徴を備え、イマノルにとって面白い存在だ。さらに右でも左でもプレーできるので、バレネチェアだけでなく、久保にとってもライバルとなる。久保自身のさらなる成長を促し、スタメンの座を維持するための原動力となってくれるはずだ。
(郄橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)