ハイブランド品の購入目当ての人も多い(写真・時事通信)

 中国人のAさんは、ホクホク顔でこう明かす。

「昨日、ヴィトンのリュックを2個も買えました。さっそく買取屋に持ち込んだら、1個あたりの利益が4万円ずつで、合わせて8万円の利益。サービスでもらった試供品のコロンもメルカリで転売しますよ」

 限定品の発売日に、店舗前で早朝から大行列を作り、暴力事件などのトラブルも絶えない「転売ヤー」。「本来買ってほしい人に届かない」という理由から、多くの企業が対策を進めるが、急激な円安下で再び活況を呈しているという。

 中国人事情に詳しいコンサルタントが、こう解説する。

「『転売ヤー』のなかでも、とくに中国人が増えているんですよ。中国にある販売業者が、現地で “買い子” を募集し、日本に買い付け旅行に行ってもらうんです。

 渡航費を含めても利益が出る理由は、円安消費税還付ですね。急激な円安の影響で、ブランド側の国内価格の調整が追いついておらず、日本は世界一、ハイブランドが安い国になっています。

 また、日本の消費税は即時免税制度なので、購入時に消費税分が差し引かれます。つまり、そもそも価格が安いうえに、消費税分の10%が割引になっている。これを中国で売れば簡単に利益がでますよ。

 しかも、中国で主流となっているAlipayといったQRコード決済では、多くのポイント還元があるので、さらに割引になります。“買い子” は、販売業者から預かった資金をQRコード決済用の口座に入金し、日本に来て商品を購入します。『買い子』は買い付け金額の2%程度の日当と、ポイント還元分が収入になるようです」

 もともと中国には「代購」という、輸入品の販売業者が存在していた。しかし、日本をはじめ多くの外国企業が直接中国市場に参入したことで、「代購」業者がハイブランドの輸入販売会社に変貌したという。

 財務省と国税庁の報道資料によれば、2022年から2023年に訪日し、1億円以上の免税品を購入したのは374人。これにより、1704億円分の消費税が還付されている。

 もちろんすべてが「転売ヤー」とは言い切れないが、2022年には7人で77億円分もの免税品を購入した例もあったという。

 冒頭のAさんが、こう語る。

「じつは、ハイブランドの店舗では、 “買い子” 対策として、居住許可のない外国人(中国人)には販売個数を1個に制限しているんです。

 でも、僕は中国系企業の日本法人に勤務しているため、在留許可がありますからね。こうした規制をくぐり抜けるため、僕のような在日中国人に『転売ヤー』の副業が回ってくるようになったんです。

 日本在住なら渡航費もかからないし、商品の予約もできるので、手数料は “買い子” の数倍です。

 募集は毎日あるので、その気になれば、退社後に店舗に寄るだけで給料の2倍程度は稼げます。勤めている会社も副業を認めているので、今年から古物商の認可を取って個人事業主として申告もしています。人生が一変しましたよ」

 買い叩かれる日本、というわけだ。