久保建英の開幕戦に現地紙は高評価 変革期のチームにあって攻撃の旗手として期待
8月18日、レアレ・アリーナ。2024―25シーズンのラ・リーガ開幕戦で、久保建英を擁するレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は本拠地にラージョ・バジェカーノを迎えている。
結果から言えば、1−2と黒星だった。「ボールを握って優位に戦う」のがチームスタイルだが、ろくにボールをつなげず、苦戦を強いられた。
「自分たちのサッカーができなかった」
イマノル・アルグアシル監督の言葉は何よりも雄弁だ。ラ・レアルは、ちぐはぐさが目立った。
昨シーズンまでタフな守備を見せていたユーロ2024優勝組のDFロビン・ル・ノルマンが、アトレティコ・マドリードに移籍。MFミケル・メリーノも移籍交渉中で、戦列に加わっていない。また、ディフェンスリーダーのイゴール・スベルディアはケガで出遅れ、攻撃的MFアルセン・ザハリャンもケガによる離脱が長引いていた。
ユーロ2024優勝組のMFマルティン・スビメンディは残留を決意も、「コンディションが間に合わず」(アルグアシル監督)、先発を外れた。ミケル・オヤルサバル、アレックス・レミーロは先発したが、スイッチはオフのままだった。パリ五輪優勝メンバーのベニャト・トゥリエンテス、ジョン・パチェーコは、その勢いを駆って前半こそ悪くなかったが、後半はトーンダウンした。
そもそもラ・レアルの選手はこの夏、ユーロや五輪での活動が長く、プレシーズンで揃って活動していない。動きの熟成や意識の徹底ができているはずもなかった。
では、右サイドのアタッカーとして先発した久保のプレー評価はどうだったのか?
ラ・リーガ開幕戦、ラージョ・バジェカーノ戦に先発、68分までプレーした久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
久保は無得点のまま、68分にベンチに下がっている。尻上がりに調子を上げたが、勝利に結びつくプレーはできなかった。
しかし、どのメディアも決して否定的ではない。
「対峙したマーカー、(アルフォンソ・)エスピーノを"急発進"で大いに悩ませた」
スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、簡潔な表現で久保のプレーに高評価を与えていた。
チーム全体でパスが回らず、意図が合わないところが目立つなか、久保も前半20分まではほとんどボールに触る機会がなかった。しかし、技術の違いにより元ウルグアイ代表エスピーノとの1対1で優位に立つと、躍動を始める。24分には自陣からカウンターを発動させ、スピードでエスピーノを上回って中に斬り込んだ(結局、ボールは流れたが、味方がシュートに持ち込んでいる)。
【「削られまくり」に同情も】スペイン大手スポーツ紙『アス』も、攻撃の旗手になっていた久保に好意的な評価だった。
「タケ(久保)は試合に入るのには苦労した。しかしいったんフィットすると、右サイドで多くのチャンスを作り出している。相手はファウルでしか対抗できなかった。交代はシンプルに消耗が理由だろう。あとは、そのいいプレーをどこまで決定的なものにできるか、だが......」
前半終了間際、FWシェラルド・ベッカーのやや雑なサイドチェンジも、久保は右サイドで残す。これをDFアマリ・トラオレが受け、ゴールに迫った。チームの動きを好転させていた。
ボールを受けた時の"支配感"は、やはり傑出していた。ダビド・シルバのような理解者がいたら、どんなプレーを生み出していたか。キープし、時間を作っても、チームメイトが反応しきれていないのが現状なのだ。
「めっちゃ削られる」
スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』はそんな見出しで、久保に同情的だった。
「削られまくった混乱から抜け出した時、味方に好影響を与え出している。そのスピードとテクニックで敵の守備を崩し、脅威になっていた。後半立ち上がり、ベッカーへのパスは決定的な形で、1−0になってもおかしくなかったが、ゴールはならなかった」
53分、久保は最大の決定機を演出している。ラージョのCKのこぼれ球に反応し、相手ボールを自陣で奪い返すと、そこからカウンターに切り替え。ベッカーに完璧なラストパスを送ったが、ベッカーはこれを決められなかった。
その3分後にも、久保はしつこくまとわりつくエスピーノを急角度のフェイントで抜き去っている。さらにスライディングタックルで飛び込んできたアドリ・エムバルバのファウルを受け、イエローカードを誘発。エムバルバは判定に怒って、久保の胸を小突いてきたが、自身の計算よりも久保の動きが早かったのだろう。その苛つきに力の差を感じさせた。
67分、ラ・レアルはオヤルサバルの久保へのパスをカットされ、そのカウンターを決められてしまう。この失点が重くのしかかった。失点直後、久保はお役御免となる。
終盤、ラ・レアルはたくさんのカードを切ったが、スローインのボールを奪われて追加点を喫するなど、プレーは悪化した。ふたりの注目の新加入レフティー、ルカ・スシッチとセルヒオ・ゴメスは評価を下すほどのプレーはなかった。交代出場したスビメンディが数本のパスで違いを見せ、わずかに試合を活性化させつつ、終了間際には意地の1点を叩き込んだが......。
一昨シーズン、昨シーズンと比べると、ラ・レアルは変革期にある。完成度は低く、懸案だったストライカーも確保できていない。9月の代表戦明けまでは不安定な状況か。
しかし、久保自身の状態は悪くない。調整が遅れているチームでも、存在感は光った。セルヒオ・ゴメスやスシッチというレフティーとの相性は悪いはずはなく、新たに作り出されるコンビネーションに期待がかかる。