ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、7月10日の放送に経済評論家の加谷珪一が登場。三菱UFJ銀行の行員が疑いをもたれた、株式公開買い付け(TOB)の情報漏洩について解説した。

鈴木敏夫(文化放送解説委員)「三菱UFJ銀行の男性行員が、取引先の株式公開買い付けに関する情報を、公表する前に親族に漏らした、などとして証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反の疑いで銀行の本社や、関係先を強制調査したと。なお親族は伝達された情報に基づいて株の取り引きを行って、なんと数百万円の利益を得たとみられています」

長野智子「加谷さんはこのニュースを聞いて最初にどう思いましたか?」

加谷珪一「こういう言い方はあまりよろしくないんですけど『またやっちゃったのか』という印象です。犯罪ですから絶対にしてはいけないんですけど、昔から一部の悪徳な社員っていて。こういう重要情報を利用して個人的な儲けをする、という。企業側もそういうことが起きないよう内部管理体制をしっかりする、ということはしているんですがどうしても0にできない」

長野「何をやったのか、ということですけど、改めて解説いただけますか?」

加谷「株式の公開買い付け、これをTOBと呼ぶんです。たとえば、ある会社の株式をまるごと市場で、いつまでにいくらで買い取ります、と、ある企業が宣言する。その条件がよければ一気に株を買い集めて、自社のグループに入れてしまう、という手続きをするのが公開買い付けなんですね」

長野「はい」

加谷「最近の例でいうと、コンビニのローソンという会社を、KDDIという携帯電話の会社が公開買い付けをして自社のグループに取り組む、ということをした。TOBというのは、企業を、あるグループがまるごと吸収するとか、ドラスティックな再編をするときによく使われる手段なんです。これ自体は使いようによっては非常にいいツールなんですが、いい条件を提示しないと株主さんは応じてくれないわけです。簡単にいうといま1000円ぐらいで取引されている株の会社があるとして、TOBをしたい会社はたとえば『1500円で買い取りますよ』という条件を出さないと既存の株主さんは応じてくれない」

長野「はい」

加谷「ですのでけっこういい条件が提示されるわけです。その話を事前に知っていれば、情報が行きわたらないうちにその会社の株を買い取っておいて、TOBが公表されると1000円だったものが1500円で買ってもらえるという話だから、確実に儲かる、となる。この内部情報を知っていると、かなりの確率で自分が儲けることができると」

長野「取引先の内部情報というのはどれぐらいの人数の行員が知っているんですか?」

加谷「金融機関は会社の中でもきっちりと情報管理をしないといけない、というルールがあって。原則として担当する部署以外の人は知らないという状態でなければいけないんですね。部署が大きい場合になると、担当課というものをそれぞれの課長さんクラスが管理している。隣の課がどんなことをしているかはわからないぐらいの情報管理、というのが当然視されています。ある会社のTOBが行われる、という情報を他の担当の方が知る、というのは本来、あってはならない」

長野「うん……」

加谷「ただしその部署にいる担当者の方に悪意があった場合、人間ですから漏らそうと思えばできてしまう。こういうことをどうやって防ぐか、というのが最大の課題、となると思います」