メジャーリーグのほとんどの球場でペンシルベニア州西部の土が使われている理由は?
野球場のグラウンドに使用される土や砂は「どの産地のものを使う」と決まっているわけではないのですが、メジャーリーグでは、本拠地となっている30球場のうち26球場で、同じペンシルベニア州西部の土が使用されています。その要因は、「グラウンドの革命」にあるそうです。
Why Western Pennsylvania dirt is used in the infields of most MLB stadiums | Pittsburgh Post-Gazette
メジャーリーグの26球場で使われている土は「DuraEdge」という企業が手がけています。
DuraEdge Engineered Infield Mixes, Clays, & Conditioners For Ballfields
https://duraedge.com/
DuraEdgeのグラント・マクナイト社長は大学卒業後、父親が経営する建設資材会社に就職しました。会社では、ゴルフ場の芝の管理なども行っていました。
地元・ペンシルベニア州スリッパリーロックの大学のグラウンド新調プロジェクトに携わることになったマクナイト氏は、まったく新たなグラウンドにする計画を立てました。前例のないグラウンドにすることに大学の運動部長はためらいがあったそうですが、マクナイト氏は実施を押し切りました。
しかし、芝についてはゴルフ場事業で実績も資料もあったものの、野球やソフトボールのグラウンドについてはまったく資料がなかったことから、マクナイト氏は1からすべて調べることになったそうです。
マクナイト氏は、沈泥と土の比率を細かく測定し、さまざまな砂を混ぜて独自のミックス土を作り上げていきました。その中でも鍵となるのが、DuraEdgeの工場の近くでしか採れないという赤土で、マクナイト氏は「ペンシルバニア州西部の赤土は特別」と説明しています。
DuraEdgeがどのように赤土からグラウンド用の土を作っているのかは以下の動画で触れられています。
The DuraEdge Story | From Mine to Ballfield | DuraEdge Products - YouTube
DuraEdgeの「土」は、スリッパリーロック大学のグラウンドで試合をした高校や大学を通じて話題が広まり、2002年に独立リーグのワシントン・ワイルドシングスが導入。その数年後にはメジャーリーグのフィラデルフィア・フィリーズも使うようになりました。
実際にDuraEdgeの土を導入したピッツバーグ・パイレーツのマット・ブラウン氏は、2017年の地元紙の取材に対して「DuraEdgeはグラウンドに革命を起こし、延期や遅延になりそうな試合を救いました」と言及しています。
ブラウン氏によれば、DuraEdgeの土はメンテナンスしやすく、スライディングなどのあとでも塊になりにくいので、イレギュラーバウンドも起きにくいそうです。また、吸水性が高いので多少の雨天でも問題なく試合ができることで、試合の延期によるコストの削減も実現しているとのこと。パイレーツの場合、2008年秋にDuraEdgeを導入するまで、年平均5.6試合が延期になっていましたが、導入後は年平均2.5試合に減少したそうです。
DuraEdgeの土を導入しているのは全米で1200カ所から1500カ所の球場で、パイレーツは傘下のマイナーリーグの球場にも導入を行っています。費用は1万5000ドル(約238万円)から5万ドル(約792万円)ほどだそうです。