プロモーションコードは、必要なビジネス慣行である一方で、D2Cブランドの利益にとって悩みの種であることが明らかになってきた。

多くのブランドは昔から、初めての顧客を呼び込むために特別なプロモーションコードを提供してきた。顧客が割引と引き換えにメールアドレスや電話番号を提供してくれれば、その顧客はブランドのマーケティングファネルの一部になると考えているためだ。

しかし現在は、多くのD2Cブランドがプロモーションコードを利用して、特定のマーケティングプログラムの効果を追跡している。たとえば、協業するインフルエンサーに対し、フォロワーが10%から20%の割引を受けられる専用のプロモーションコードを提供することがある。だが、新しいプロモーションコードはどれも、最終的にクーポン配布サイトのハニー(Honey)、リテールミーノット(Retail Me Not)、キャピタルワンショッピング(Capital One Shopping)などのプラグインを通じて漏えいし、ブランドが当初意図していたよりも多くの買い物客に使用されるというリスクをはらんでいる。ウェブをスキャンしてコードの漏えいを検出するソフトウェアプロバイダーがいくつか出現してはいるが、ブランド創業者は、プロモーションコードの漏えいを食い止めるうまい方法はまだないと述べている。つまり、インフレによって利益がすでに圧迫されているにもかかわらず、さらに別の追加コストにも対処しなければならないのだ。

入れ替えが難しいプロモーションコード



電子レンジ調理器具ブランドのエニーデイ(Anyday)の創業者であるステフ・チェン氏は、プロモーションコードの漏えいがあまりにも頻繁に発生しているため、この意図しない割引が注文から得られる利益を食ってしまっていると語った。「おそらく、会社の設立当初からあったことなのだろう。ただ、気づくのが遅かった」。この数カ月、問題は悪化する一方で、同社のマーケティング戦略に支障をきたしている。

チェン氏は、eコマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)のバックエンドを通じて使用できるコードの数を制限したとしても、プロモーションコードは依然としてハニーの拡張機能によって取得されてしまうと述べた。「定期的にチェックはしているが、どこから来ているかを正確に追跡することはできない」とチェン氏は述べた。

一般的に、あるコードを使った売上が突然急増したときは、そのコードがハニーなどのクーポンサイトで見つかる。「直感的に、この日の売上は多すぎると感じるときがある」とチェン氏は付け加えた。同氏は、今のところShopifyには漏えいしたコードがチェックアウト時に利用されるのを自動的にブロックする独自のソリューションがないという。

チェン氏は、プロモーションコードは特定のマーケティングチャネルの効果を追跡するもっとも便利な方法のひとつであるとも述べている。たとえば、オーディオ広告にはリスナーが簡単にクリックできるリンクを含めることができないため、ポッドキャスト広告にはプロモーションコードが有効だ。

同社は、場合によってはチェックアウト時に入力するクーポンの代わりに、自社ウェブサイトにリダイレクトする専用リンクを作成するという回避策をとっている。「漏えいを見つけても、簡単にコードを入れ替える方法はない。消費者にとってもアフィリエイトパートナーにとってもイライラするプロセスになる」とチェン氏は語った。たとえば、ポッドキャストのホストは、新しいコードを使って広告を再録音しなければならない。

しかし、これがいつでも解決策になるとは限らない。最近、エニーデイは家電メーカーのパナソニックと提携し、パナソニック製の新しい電子レンジの販売促進を目的とした限定プロモーションコードを作成したが、これが漏えいした。この電子レンジには、エニーデイのブックレットと特別な15%割引が付属している。「印刷されたコードなので、取り消しも変更もできない」。

チェン氏は、現時点ではベンダーにお金を払うのは、ほとんどがかなり高価であると指摘しつつ、意味がないと述べた。しかし、エニーデイがインフルエンサー、ポッドキャスト、ダイレクトメールにさらに投資して、リアルタイムで漏えいを捕捉できるようにするのであれば、検討の余地はあるとしている。「だが、漏えいからくる精神的苦痛と向き合うのはもうたくさんだ」。

Shopifyアップデートの影響



この問題を解決する手助けになると有望視されていたテック系スタートアップも壁に突き当たった。デニス・ヘグスタッド氏は2023年に、Shopify向けに構築した割引コードスキャンアプリのビジランス(Vigilance)をローンチした。しかし、ShopifyのアップデートによりShopifyのチェックアウトと互換性がなくなったため、昨年、ビジランスはシャットダウンされた。

ビジランスがローンチされた直後の2023年2月、Shopifyはcheckout.liquidテーマファイルを廃止すると発表した。その結果としてのアップデートにより、ビジランスのようにShopify Plus(ショッピファイプラス)アプリを通じてチェックアウトをカスタマイズすることはできなくなり、そのため「Shopifyのチェックアウトでクーポン挿入の特定やブロックをすることができなくなった」とヘグスタッド氏は述べた。

同氏は、Shopifyも社内で解決策を見つけられないのだから、それよりも小さなブランドがいまだにコードの漏えいに苦しんでいるのは驚くべきことではないと述べた。Shopifyの新しいサンドボックス的なポリシーがチェックアウトの安全性を高めることを意図しているのはわかるが、「プラットフォームが許可しないから助けてあげられないといわなければならないのは残念だ」。Shopifyを利用しているブランドにとって現時点での最善の解決策は、バックエンドでプロモーションコードを削除することだ。しかしそれは、コードを保持して意図した顧客ベースのみが使用できるようにするのではなく、コードがまったく機能しなくなることを意味する。

プロモーションコードのウェブを駆除できるプラットフォームは、ほかにいくつかある。主なもののひとつがクリーンアイオー(Clean.io)で、同社のクリーンカート(CleanCART)スイートは、ハニーやキャピタルワンショッピングなどの拡張機能がチェックアウトページにクーポンを自動的に適用することを防ぐのに役立つ。現在、販売者はeコマースプラットフォームのShopifyとビッグコマース(BigCommerce)にクリーンカートをインストールできる。

漏えいはなぜ問題か



チェン氏は、売上が増加することは良いことだと認識されているが、漏えいを許せばいくつかの影響が出ると述べている。チェン氏によると、顧客が10%の割引を得るために、エニーデイのEメールニュースレターにサインアップするのではなく漏えいしたコードを使ってチェックアウトした場合、必ずしもEメールを受け取ってくれるとは限らない。「漏えいしたコードからのコンバージョンは、当社のEメール登録からのコンバージョンよりも、長期的には価値がずっと低くなる」と同氏は語った。

「割引を紹介してもらうために、パートナーやインフルエンサーにもお金を払っている」とチェン氏はいう。「つまり、利益はダブルパンチを受けている」。

別の形でプロモーションコード漏えいの影響を受けているブランドもある。アロマキャンドルブランドのピーエフキャンドル(P.F. Candle Co.)はアフィリエイトプログラムに一意のリンクを使用しており、はじめて買い物をする顧客は割引を受けるために直接クリックする必要がある。しかし、このリンクがクーポンサイトに漏えいすると、アフィリエイトパートナーが手数料を受け取れなくなる可能性がある。

しかし、創業者のクリステン・パンフリー氏は、同社ではハニーと直接提携し、ウェブ拡張機能を通じて得られる売上ごとにハニーに手数料を支払うことで、問題を回避していると述べた。「これで、割引コードを少しは制御できるようになる」。ハニーの拡張機能から多くの新規顧客が訪れるのを見て、同社は、少なくともこれらのコンバージョンをより適切に追跡できるようにハニーと直接協力することに決めたという。つまり、ハニーはある種のアフィリエイトパートナーとなった。

漏えいが生じた場合、ハニーにはブランドの担当者がいるため、漏えいしたコードをより迅速に削除できる。「しかし、リテールミーノットに載せられたら、削除するのは大変だ」とパンフリー氏は語った。ピーエフキャンドルはリテールミーノットと直接提携していないからだ。

パンフリー氏は、それでもほかのクーポンサイトと比べて、ピーエフキャンドルのサイトで割引コードが使用されることが徐々に増加していると述べた。今年、同社の年間売上高に対してプロモーションコードやそのほかのプロモーション割引が使用された割合は、2023年と比べて22%増加した。これには新規顧客が得られるすべての割引も含まれているが、パンフリー氏はこう述べている。「この伸びを見ると、消費者が割引コードを探し求めていることがわかる」。

パンフリー氏は、ほとんどの場合これらのコードの引き換えは、ビジネスコストの一部と見なしていると述べている。「恐れているのは、コードの乱用だ」と同氏はいう。

チェン氏は、プロモーションコードの漏えいは、いつでも継続的なセールをしていることを顧客が期待しているという現在進行中の問題の一部だと述べた。エニーデイは利益率を改善するために、このパターンから脱却しようとしている。「特にあらゆるマージンポイントが損益にとって重要になっている今、大打撃を受けている」と同氏は語った。

[原文:DTC Briefing: How promo code leaks are impacting profit margins]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Ivy Liu