5月22日、映画やドラマ、バラエティ番組などで幅広く活躍した俳優の中尾彬(あきら)さんが、16日に心不全のため亡くなっていたことがわかった。81歳だった。所属事務所「古舘プロジェクト」によると、葬儀告別式は近親者のみでおこなったという。

 悪役を多く演じ、強面のイメージの一方で、妻で俳優の池波志乃とは、おしどり夫婦として知られていた。喪主を務めた池波は、《今年に入って足腰が悪く体力も落ちて、医師の訪問を受けながら、本人の意思により、自宅でゆっくり休んでおりました。時には取材や、足腰をかばっての仕事もやらせていただき、本人は元気で12月の旅行に向けて、頑張ってリハビリをしていたくらいでしたが、15日に容態が急変し、16日の夜中に自宅で私と二人の時に、とても穏やかに本当に眠るように息を引き取りました》とコメントを発表した。

 中尾さんといえば、ネジネジと巻いたストールがトレードマークだった。2018年には夫婦での著書『終活夫婦』(講談社)を発売。

《「終活」というぐらいで終わりの活動をしているわけだから。やっぱり活動なんだよ。活動っていうのは生きていくためにやることであって、死に支度ではない。だったらどれだけ楽しくやれるか、だ》

 とつづっていたが、同書の出版記念イベントでは、夫婦二人三脚での“積極的終活”のなかで「(妻に)ねじねじを200本も捨てられちゃったんだよ」と告白。400本以上を数えたという、ストールの半分を大量処分したと、茶目っ気たっぷりに嘆いてみせた。

 中尾さんの生前、テレビやラジオの出演としては最後となったのが、2024年1月3日に放送されたラジオ番組『小松左京クロニクル 「日本沈没」を探す旅 特別編 初語り』(文化放送)だ。同番組のプロデューサーを務めた、文化放送の鈴木敏夫氏が語る。

「青天のへきれきというか、あまりに急なことで驚いています。番組の収録は2023年12月におこなわれたのですが、とてもお元気でした。トレードマークの“ネジネジ”マフラー姿でいらっしゃって、終始ニコニコとお話しされていました。

 50年前のラジオドラマ『ここを過ぎて悲しみの都へ-日本沈没より-』に中尾さんが主演されていて、そのときの思い出を案内役の伊東四朗さんと対談する、という内容だったのですが、声にも張りがあって。『いまもう1回、この声出せって言われたら出せますよ』とおっしゃっていたのが印象的でした。語られる内容も、話のツボを押さえたおもしろい話ばかりで、正直、レギュラー番組をお願いしたいなと思ったほどです。とても残念です」

 天国でも、“ネジネジ”スタイルを楽しんでほしい。合掌。