水天宮前駅周辺も中古マンションの狙い目エリアと言えそうだ(画像:ponoponosan / PIXTA)

不動産経済研究所によると、2023年度の首都圏(1都3県)の新築マンション1戸当たりの平均価格は、7566万円(前年度比9.5%上昇)と、3年連続で最高値を更新。しかも、東京23区では年度として初めて新築マンションの平均価格が1億円を超えた。

これだけ高いと「もう一生、都内にマンションは買えないんじゃないか」「東京23区にこだわらなくても……」「無理にいま買わなくても……」という声も聞こえてくる。とはいえ通勤、通学、学区、実家との距離など、さまざまな理由で、23区内にマンションを買いたい人も多いだろう。

ではどうすればよいのか。

価格高騰が止まらない今日、マイホームを実現するためには、“エリア外し”や中古マンションを選ぶのが現実的だ。

そこで本記事では、一般的な年収層でも買える中古マンションの「狙い目エリア」を紹介する。物件は、ファミリーで住める60平米以上、5000万円台までを目安に厳選した。

また「職住接近」かつ「半投半住」(将来的には売却して住み替える”半分投資、半分居住”の意味)も視野に入れている。住まい選びの参考にしていただきたい。

アクセスのよいエリアにも"穴場"

(1)水天宮前・浜町エリア(中央区)

銀座や日本橋、八重洲などの繁華街・商業地、オフィス街を擁し、千代田区や港区とともに東京の「都心3区」といわれる中央区。

そんな中央区で穴場なのが、水天宮前・浜町エリアだ。電車のアクセスは、水天宮前駅から大手町まで4分、浜町駅から新宿までは乗り換えなしの17分。

徒歩圏内の人形町駅を使えば銀座まで10分、六本木までも20分。東銀座や新橋にも出やすい。

スーパーやドラッグストア、百均の店舗があり、生活利便性も高い。また人形町には、下町の風情があふれる人形町商店街や甘酒横丁があり、観光スポットになっているほか、ファストフードなど日常使いできるチェーン店も豊富だ。さらに東京23区の中でも、犯罪件数が少ない治安がいいエリアでもある。

狙い目は築古物件にはなるが、4000万〜5000万円台で60平米を超えるリノベーション済み物件などが定期的に出てくる。特に交通利便性を重視したい人におすすめしたい。

(2)大森・大森海岸エリア(品川区・大田区)

JR大森駅には駅ビルのほか、周辺にスーパーマーケットや約100店舗も加盟する商店街があり、とにかく日用品の買い物には困らない住みやすいエリアだ。またJRで品川まで6分、乗り換えなしで東京駅まで20分とアクセスもとてもよい。

大森駅の特徴は、山側と呼ばれる「山王」エリアと、海側と呼ばれる「大森海岸」エリアに分かれること。

山王エリアは高台にあり、災害に強いと政界・文化人も住む高級住宅地。低層階の建物が多く落ち着いた雰囲気があるが、近年では百貨店跡地に「MEGAドン・キホーテ」ができるなど庶民的な印象も受ける。このドン・キホーテは、野菜の詰め放題でも有名だ。

また大森駅から海側エリアにある京急「大森海岸」駅までは、徒歩で約10分。この大森海岸駅付近、特に幹線道路沿い(国道15号)に、住みやすい間取りのリノベーション済み物件が手の届きやすい3000万円台後半から常時出ている。


大森ふるさとの浜辺公園(写真:Tony / PIXTA)

さらに「しながわ水族館」や少し足を延ばせば「大森ふるさとの浜辺公園」もあり、子育て環境も良好だ。

ただし、幹線道路沿いにある物件は車の騒音があるので、二重窓などの防音対策がされているか必ずご確認いただきたい。

再開発で人気が高まるケースも

(3)金町(葛飾区)

金町というと下町のイメージを持つ人も多いかもしれない。だが2009年に竣工された41階建て「ヴィナシス金町タワーレジデンス」を皮切りに、タワマンが次々と建設されている。

このうち駅から徒歩12分の37階建て「シティタワー金町」は2016年竣工。まだ築浅でありながら、3LDK・60〜70平米前後で5000万円台後半から売りに出されている。都内で広さのあるタワマンに住める希少物件とも言えるだろう。

また隣接エリアには区立公園として区内最大の広さ(面積約7.1万平方メートル)を有する「葛飾にいじゅくみらい公園」があり、開放感もある。


葛飾にいじゅくみらい公園(写真:イデア/PIXTA)

さらに朗報なのが、金町駅北口から徒歩5分に位置する「元イトーヨーカドー」と「金町自動車教習所」の跡地を中心に、約3ヘクタールの大規模再開発が進行中であること。

三菱地所レジデンス、三井不動産レジデンシャル等による地上40階建て、高さ150メートルの超高層マンションのほか、三菱地所が大型モール建設も計画している。

一般的に再開発が決まると、その街の地価は上昇していく。すでに下町の親しみやすさと再開発のよさが融合された住みやすい街であるが、この再開発が完成するころには、金町のイメージはより大きく変わるだろう。

駅からやや遠くてもよければ、2000万円台からファミリーで住める広さのリノベーション済み物件を狙うことができる。

注目が高まり人気が出ているエリアは?

(4)西大島・大島エリア(江東区)

東京メトロ有楽町線「豊洲〜住吉」の延伸計画により、付近の都営新宿線「西大島」駅や東京メトロ東西線「東陽町」駅近くのマンションも注目を集めている。

特に西大島駅は新宿まで乗り換えなしの24分。徒歩圏内にある住吉駅や亀戸駅も使えるので、アクセスには困らない。「アリオ北砂」や「KAMEIDO CLOCK(カメイドクロック)」といった商業施設があるので、買い物にも便利だ。

このエリアではリノベーション済み物件が3000万円台前半から常時出ている。自転車の盗難被害が多発しているなど、やや懸念点はあるが、新宿方面へのアクセスが多い人にはおすすめエリアとなっている。

(5)北千住・千住大橋(足立区)

治安が悪いと言われることもあった足立区だが、ここにきて大注目されている。理由としては治安が改善傾向にあること、都心へのアクセスのよさにもかかわらず、いまだ地価が23区内でも低い水準にあり、“値頃感”が残っているからだ。

実際、不動産の業界関係者らも、足立区はまだまだ伸びしろがあると注目している。

そんな足立区の厳選エリアとして、まずは北千住を取り上げたい。

穴場の街ランキング1位、東京メトロ日比谷線沿いで住みやすい街ランキング1位など、近年大注目されるエリアだ。


交通の利便性が高く、駅前の商業施設でにぎわう北千住駅(写真:イデア / PIXTA)

東京メトロやJR、東武線、つくばエクスプレスの6路線が乗り入れ交通利便性がとてもよいほか、駅前の商業施設や活気あふれる商店街が魅力的だ。

しかし、これら交通利便性、買い物のしやすさを兼ね備えた結果、足立区のなかでも北千住だけは公示価格が1平方メートルあたり110万1090円と、足立区の平均43万8863円の2倍以上にもなる別格の立ち位置となってしまった。

なかには30階建て「千住ザ・タワー」が足立区初の"億ション"と話題になったのを覚えている方もいるのではないだろうか。

残念ながら、もう北千住は穴場の街や狙い目エリアとは言えなくなってしまった。それでも魅力的な街であることには変わりない。

北千住でマンションを探したいという人は、徒歩10分前後、築25年以上のリノベーション済み物件が狙い目だ。築浅がよければ「千住大橋」駅の周辺で探すことをおすすめしたい。

23区内でも探せば狙い目物件はある

(6)綾瀬(足立区・葛飾区)

いま足立区の本命は綾瀬エリア。

綾瀬駅は足立区と南側の一部は葛飾区小菅4丁目に位置する。東京メトロ千代田線の始発駅で、大手町まで乗り換えなしの20分。JRも乗り入れており、隣駅の北千住で乗り換えれば、都心の主要拠点へ快適にアクセスできる。

駅周辺には複数のスーパーマーケットのほか、ドラッグストアやファミレスも複数あり、生活利便性が高い。

さらに東口を降りてすぐの駅前に、“足立区最高層タワマン”といわれる住友不動産の「シティタワー綾瀬」が2025年11月完成予定。高さ約110メートル、地上32階、総戸数422戸で、低層階には地域のにぎわいを創出する施設や店舗などが配置される見込みだという。

この新築タワマンの現在の売り出し価格は、2LDK・58.93平米で7800万円〜3LDK・74.18平米1億3500万円。よく業界では「すみふをベンチマークしろ!」とも言われる。

要は住友不動産の再開発による高価格設定によって、徐々に街全体も価格上昇していく、ということだ。そう考えると綾瀬はこのタワマンを軸に将来性が期待できるだろう。

一方、いま綾瀬駅で物件を探すなら、築20年超のリノベーション済み物件が狙い目だ。徒歩10分前後に60平米や70平米台で3000万円台、4000万円台の物件がたくさんある。なかには2000万円台後半の物件も見つけることができた。


本記事で紹介している6区における中古マンションの値下がり状況(出典:マンションリサーチのプレスリリースをもとに東洋経済作成)

このように23区内でも、探せばまだまだ手が届きやすい「狙い目エリア」はある。

理想どおりの完璧な住まいはない。価格高騰が止まらない今日、マイホームを実現するためには、エリア外しや中古マンションを選ぶのが現実的だ。賢くマイホームを購入するための参考にしていただきたい。

(日下部 理絵 : 住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家)